先日ご紹介した、毎月シンガポールにミシュランの星付きシェフがやってくるイベント、$100Gourmet。
今月はなんと、去年惜しまれつつ閉店した、ミシュラン三ツ星、かつフランスの定評あるグルメ格付け「ゴーミョ」で満点と言う、驚くべき点数を打ち出したオランダのレストラン、オウド・スライス(Oud Sluis)の元ヘッドシェフ、ニック・ブリル(Nick Bril)シェフが来星。
まずはOud Sluis の閉店の理由についてNick シェフにお聞きすると、やはり、緻密に味を構築して行くタイプのレストランならではの、ハードワークが原因とか。
そして、閉店から数ヶ月でベルギーにオープンしたThe Janeは、わずか半年でミシュラン一ツ星を獲得しています。もともと、The Janeをオープンすることが決まっていて、NickシェフがOud Sluisを去ると、三ツ星のクオリティーを保つことが出来ない、という判断がこの閉店の裏側にはあったとか。
三ツ星のOud Sluis に対して、現在一ツ星のThe Jane。コンセプトの違いをお聞きすると、「わかってるよ、星2つ分の違いだよね」と茶目っ気たっぷりに笑うNickシェフ。
「確かに、Oud Sluisとは違う。でも...急に全然違う方向に舵を切ることは出来なかった。Oud Sluisよりも、少しシンプルになっているかもしれないけれど、方向性は同じ。あえて言うなら、料理自体がもっとモダンになって、料理だけに集中するというより、アートや音楽、デザインなどのジャンルのコラボレーションなど、雰囲気全体を味わってもらうようになったことかな」とのこと。また、席数も70席から200席あまりと、かなり増えたにもかかわらず、3ヶ月毎の予約開始と同時に、わずか15分ほどですべての予約が売り切れてしまうほどの人気ぶり。三ツ星獲得のニュースが飛び込んでくる日も、そう遠くはないかも知れません。
そんなNickシェフの料理が楽しめる貴重な機会。
インタビューが終わり、キッチンに入ると、カメラのシャッターを切るのが難しいほど、めまぐるしく動き、スタッフに指示を出すNickシェフ。
どんなものが出てくるのか、ワクワクしながら待っていると、Nickシェフによるアミューズが登場。
一つ目のアミューズは、北海道産のホタテとビートルートのシャーベット、生のビートルート、ビートルートシロップを合わせた一皿。甘酸っぱい味わいで、食欲が進みます。2年前に日本を2週間訪れ、東京と京都で料理を学んだと言うNickシェフ。The Janeでも、日本の食材をよく使っているとか。
アミューズのもう一皿は、リースリングワインに漬け込んだフォワグラに、日本の梅酒のグラニテを合わせたもの。トリュフの香りが漂うチェリーコンポートが甘いソースのような役割を果たしています。梅酒の甘い香りと、リースリングの花の香りがフォワグラにマッチして、個人的に気に入りました。
前菜のOyster and Seabassは、どこか日本の酢の物を思わせます。胡麻が香るひじきなどの海藻、醤油味のワカメのチップス、きゅうり。ミョウガの代わりに添えられたトーチジンジャーの花が、ミョウガよりも強い花の香りを添えています。そして更に、下には鰹節とシソで締めたスズキと牡蛎。仕上げにテーブルで、ポン酢をかけてサービスされます。食べている間に下の魚介類がマリネされるタイミングを考えてのこの演出だとか。
ひとつひとつに細かく手が加えられていて、驚くべき手数の多さ。ゆっくりと噛み締めていきたい味です。
続いては、インドネシアにインスピレーションを得たと言う、カニをつかった一皿、Crab Salad。スリランカ産のマッドクラブに、カニの殻で取ったソース、キャビアが添えられています。揚げた海老煎餅は、イカスミ入りで、キャビアとのハーモニーが抜群。レモングラスやカフィライム等、南国らしいスパイスが生きた一皿。まさに、お皿の上で世界旅行が楽しめるようなラインナップです。
ここまでが、Nickシェフによるお皿。そして、ここからは「どちらかと言えばクラッシックな」ジェレミー・ギロン(Jeremy Gillon)シェフの手による二皿。とはいえ、出て来た一皿目から、ノックアウトされてしまうようなひねりのきいた一皿。「灰」をテーマに、木の灰を使った様々な料理が登場します。生の鯵と、スモークした鯵、そして木の灰を使ったピュレとメレンゲ。シャロットのピュレや生のネギ等がアクセントとして添えられ、ヒソップの清涼感のある香りのシロップが散らされています。スモークのワイルドな香りと、ネギの香ばしさが、うまく合わさっています。
その次は、トラウト(マス)。驚くべきことに、パフ状になった蕎麦の実が、まるでスパイスのような役割を果たしています。甘い香りに、知らなかった蕎麦のポテンシャルを感じます。更にロースト香を引き立てるコーヒー豆がのっていて、仕上げにフレッシュな歯応えを与えるシュレッドしたリンゴが載せられています。
実は、Jeremyシェフは、シンガポールのME@OUEでエグゼクティブシェフを務めるだけでなく、フランスの自身のレストラン、Les Restaurant du Montanaがミシュラン一ツ星を獲得している実力派、伝統的なフレンチだけでなく、ひねりの利いた、驚きに満ちた料理を繰り出してくるのはさすが。
そして、ここからがコラボレーションした2皿。Pork Belly BBQ Grillledは、無濾過の日本酒に漬け込んで、タラゴン、タイム、ローズマリー、カルダモンなどと合わせて14時間真空調理をした後、焼き上げたというもの。甘いセヴェンスオニオンの酢漬けがアクセント、シーアスパラガスがフレッシュな緑の香りを与えています。
シンガポールでよく食べられているほど甘くなく、その分の甘みを、グリーンピースと、そのピュレが補い、豚のヘビーさを、緑の味わいでうまくバランスをとっている印象です。
もう一つのコラボレーション、締めのデザートは、Dark Chocolate,Passion fruit&Yoghurt。 チョコレートとパッションフルーツとヨーグルトの酸味を重ねるだけでなく、オリーブの実の植物性の香りを合わせるのが、とっても新しい感じがします。また、オリーブの塩気も全体をよく引き締めています。
デザートを含め、このコースに合わせた、6杯のワインペアリングが70シンガポールドルからあり、料理との相性を考え抜かれたグラスが登場するのも嬉しい所。
今回のME@OUEとのコラボレーションは7月25日まで、もう一つの開催地、IKYUでのコラボレーションは7月27日〜30日まで。
この限定のコラボレートメニューはチケット制。
チケットは以下のサイトからご購入いただけます。
https://100gourmet.hungrygowhere.com/index.html#/journey
ディナーはほぼ完売ですが、ランチタイムはまだ空席がある日もあるそうですよ!お見逃しなく!
【データ】
イベント名:$100 Gourmet(ワンハンドレッドグルメ)
公式ウェブサイト:https://100gourmet.hungrygowhere.com/index.html#/
■ME@OUE(7月23日〜25日)
住所:The Rooftop Level, 50 Collyer Quay, OUE Bayfront, Singapore 049321
Tel:+65 6634 4555
URL:https://www.therooftopguide.com/rooftop-bars-in-singapore/me-at-oue.html
■IKYU(7月27日〜30日)
住所:5 yong siak street, singapore 168643
Tel:+65 6223 9003
URL:http://www.ikyu.com.sg/
仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイド。ブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。