世界遺産 残り4つをご紹介いたします 前回の記事で、2017年現在、シチリア州内にある世界遺産の7件(16都市、そのうち自然遺産2)のうち、下記のアグリジェント、ピアッツァアルメリーナ、エオリエ諸島の3件をご紹介しました。今回は残り4件をご紹介したいと思います。改めてシチリア州の世界遺産7か所はこちらです。1.アグリジェントの遺跡地域 1997年2.ピアッツァ アルメリーナのヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ 1997年 3.エオリエ諸島 2002年 (自然遺産)4.ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々 2002年(カルタジローネ、ミリテッロ イン ヴァル ディ カターニア、カターニア、モディカ、ノート、パラッツォ―ロ アクレイデ、ラグーザ、シクリの各都市)5.シラクーサとパンタリカの断崖の墳墓群 2005年6.エトナ山 2013年 (自然遺産)7.パレルモのアラブ ノルマン様式建築物 チェファル大聖堂とモンレアーレ大聖堂 2015年 シチリアにある世界遺産は、下記の通りです。 ●4.ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々 (2002年登録)●まず1693年にエトナ山周辺地域のシチリア南東ヴァル・ディ・ノート(Val di Noto)を襲った大地震による街の全壊から、都市計画によって驚異的再建が実現し、見事な後期バロック様式の建築・芸術を街として発展した、8つの街をご紹介します。 4-1.カルタジローネ(Caltagirone) 古代より続いていた陶器文化に、イスラム時代に伝わった配色が加わった印象的な陶器で有名。街の至る所に陶器デコレーションが施されています。また、街の中心にある142段の階段には全て異なる陶器装飾が施されており、色鮮やかで壮観です。 4-2.カターニア(Catania) パレルモに次ぐシチリア第2の都市。17世紀後半のエトナ山噴火と地震後、市街は建築家バッカリーニによるバロック様式の建築が建てられました。建築には噴火で流れ出た溶岩を使用したため、街はオセロのような白黒のコントラストが印象的。見どころは、大聖堂(ドゥオーモ 写真)、その前に建てられた象の噴水、市庁舎、カターニア出身のオペラ作曲家の名を冠したベッリーニ劇場、ウルシノ城などがあります。 ●4-3.ミリテッロ イン ヴァル ディ カターニア●カターニアの南西50キロの観光地化されていない田舎町。サンタントニオ・ディ・パドヴァ教会を中心に広がる街は、ヴァル(谷)という名前通り、山間に位置し、世界遺産に登録されている建築物は計11。 4-4.モディカ(Modica) ラグーサから14キロほどに位置し、町の中心に2つの川が流れ南イタリアのヴェネツィアと言われ、川の急流に削り取られた2つの渓谷をはさんで町がつくられたモディカ。バロック建築と、スペイン支配時代に伝わった南米アステカ製法で今も作られているチョコの街としても知られ、街には17軒のチョコ専門店があります。 4-5.ノート(Noto) ノートの中心は、1693年の地震以降に建てられたモンテヴェルジネ聖堂、サン・ドメニコ聖堂など後期バロック様式の建築が残り街中の住宅のバルコニーには空想の動物や女性像などの彫刻が施されています。街をつくる石材は地元のものが使用され、時間が経つごとに変化する明るい黄金色の色彩で、その街並の美しさから、ノートは「石の庭園」といわれています。ニコラ―チ通りは年に一度行われる5月の花祭り(インフィオラータ)の舞台にもなることで知られています。ゆったりとした街歩きを楽しむことができます。 4-6. パラッツォーロ アクレイデ シラク―サ県にあり、シラク―サから40キロ、標高670mの山の上の街。紀元前8世紀後半にシラク―サがギリシャ人によって築かれ、その植民都市として、内陸部を支配下に収める目的で、高台で海からの侵入者も一望できる、このアクレイデの街を建設しました。1693年の大地震後、18〜19世紀にバロック様式で街が再建され、ファサードに螺旋の円柱装飾をもつアンヌンツィアータ教会、美しい曲線美を持つアッスンタ教会、門番のような獅子の彫刻があるサン・セバスティアーノ教会(写真)など合計11の建築物が世界遺産に登録されており、街の広い地区に点在します。 4-7.ラグーサ(Ragusa) シラクーサから西へ58km。険しいイブレイ山地の渓谷の間に高低差のある2つの新市街とイブラ(Ibra)とよばれる旧市街からなり、新市街は高台に豪壮なバロック建築が並び、旧市街は迷宮に入り込んだような中世の街並みを残しています。新市街からイブラへ向かう道の途中に広がる景色や、街の夜景は素晴らしく、また豊富な美食の街としても知られます。大聖堂、サンジョルジョ教会、など9つの主な教会と7つの主な貴族邸宅を含む18件の世界遺産に指定されたバロック建築物があります。 ●4-8. シクリ(Scicli)●こじんまりとした小さな街で、世界遺産でありながら観光客があまり訪れることのない、ゆっくりとした休暇を過ごすに最適。淡い色の石材で作られたバロック建築の中で美味しいグルメで癒されます。現地のイタリア人も訪れる隠れ家的なスポット。 ●5.シラク―サとパンタリカ岸壁墳墓群 (2005年登録)●次に2005年に登録された古代地中海文明の一時期に関する重要な例証として世界遺産に登録された、シラクサの古代ギリシャ都市遺跡とパンタリカの墓地遺跡、岸壁墳墓群をご紹介します。 シラクサ(Siracusa) 紀元前8世紀にギリシャ人植民地が建設されギリシャ時代にアテネと同じぐらい栄えたシラクサは、当時キケロが「最も偉大で美しいギリシャ都市」と賞賛し繁栄をみせました。かの天才数学者アルキメデスを生んだ町で、太宰治の小説「走るメロス」の舞台となった町でもあります。今もこの街には古代ギリシャ劇場、古代ローマ劇場など当時の考古学遺跡や、5世紀に教会に改修されたアテネ神殿跡がみられる大聖堂、その後次々とシチリア島を支配した文明と歴史の跡が数多く残っています。その他見どころは、州立考古学博物館ディオニシオスの耳、など。 パンタリカの岸壁墳墓群 シラクーサから西に50km、紀元前13〜7世紀の5000個以上の墳墓が断崖絶壁に残るシチリアの秘境パンタリカ。原始時代のシチリアの重要地のひとつで、周辺一帯の地域の中心として栄えました。巨大なネクロポリスとよばれる古墳には、岩肌に洞窟のように掘られた5000以上の墓があり、そのほとんどは紀元前13〜7世紀のもの。 6.エトナ山 (2013年登録) エトナ山はシチリア東海岸部に位置するアイコン的存在で、ヨーロッパ最大の活火山で標高は富士山より少し低く、約3325mあります。富士山と同時に2013年に自然遺産として世界遺産登録。海底火山として約60万年前から現在まで、たえず噴火活動を続けています。火山とその斜面は1987年からエトナ公園(Parco dell'Etna)となっており、溶岩の荒野など険しい表情をみせていますが、カターニアやタオルミーナなどからでている、各旅行会社のエトナツアーや、バス、ロープウェーを乗り継いで、立ち入りが許可されている標高2920mの噴火口区域まで行くことができます。その先は地元ガイド同行のみ。私鉄チルクメトネア鉄道(Ferrovia Circumetnea/FCE)は、エトナ山麓114kmを一周する路線で、山の眺めを楽しむことができます。アルカリ玄武岩質の火山灰土は、ミネラルをたくさん含んでおり、農作物の肥料になるため、肥沃なエトナ山麓では、ワイン用のぶどう、ピスタチオ、オリーブ、桃、梨、林檎、イチゴ等、様々な農作物の栽培に適していて、火山が自然の恵みをもたらしています。 ●7.パレルモのアラブノルマン様式建築物 チェファルとモンレアーレ(2015年登録)●シチリアにおいて、ノルマン王国のシチリア統治時代(1130年〜1194年)に西洋とイスラム・ビザンチン文化圏の異なる社会・文化要素が重なり合い見事に融合し、異なる宗教をもつ異民族(イスラム、ビザンチン、ラテン、ユダヤ、ロンゴバルド、フランス)が共存を果たし繁栄したことをも証明する、パレルモ、チェファル、モンレアーレのアラブノルマン様式の9つの建造物が2015年に世界遺産として登録されました。 パレルモ(Palermo) アラブ・ノルマン時代の栄華の跡が今も残るパレルモは、シチリア北部に位置し、パレルモ市内ではノルマン王宮とパラティーナ礼拝堂、パレルモ大聖堂、サン・ジョヴァンニ・デリ・エレミティ教会、サンタ・マリア・デッランミラリオ教会、サン・カタルド教会、ジーザ宮殿、アンミラリオ橋が登録されました。ノルマン王宮とパラティーナ礼拝堂歴史的芸術的にパレルモで最も重要なモニュメント。古代ローマの城塞の跡地に9世紀パレルモを支配していたアラブ人太守の元で建設した城を、12世紀にルッジェーロ2世とその後継者のノルマン王達がアラブの城塞を拡張し、豪華な宮殿に造り替え、国政の統治の拠点、ヨーロッパ文明の中心となりました。アラブ・ビザンチン風の幾何学模様のモザイク装飾の床、鍾乳石模様の木製天井の装飾は、ノルマン時代にもシチリアで活発に働いていたイスラム文化の職人の手によるもので、各文明が融合した、大変興味深い場所です。 パレルモ大聖堂7世紀の教会が、アラブ支配時代にモスクに改装、その後ノルマン王により再びキリスト教の教会に作り替えられ、現存の建物は12世紀グリエルモ2世の時代に創建されたもの。14〜16世紀にかけて手が加えられましたが、大聖堂は創建当初からずっとパレルモとシチリアの歴史の舞台となっていました。内部には各時代の皇帝や王の霊廟もあります。 サンカタルド教会 12世紀後半ノルマン王グリエルモ1世時代に建設され、19世末に大幅に修復されましたが、上部には赤い半球のクーポラや、窓付きのはめ込みアーチのある側面の壁など、ノルマン風の特徴がみられる教会として簡素な形態ながら重要な建築。 チェファルー大聖堂 Duomo di Cefalu チェファルはパレルモの東68キロに位置し、海に面した大きな岩山の麓に広がる町で、岩山の麓にあるのがチェファルのドゥオーモ。ルッジェーロ2世が嵐の海で助かった事を聖母に感謝して、1131年に着工し、数百年に渡って中断や改築を繰り返し建設は長期にわたりました。この建物はノルマン時代の優れた建築物の一つで、内部は16世紀に改装されましたが、創建当初に造られたビザンチン様式の荘厳なモザイクが残っています。チェファルは映画「ニューシネマパラダイス」の夏の海辺のシーンのロケ地としても知られています。夏はバカンス客でにぎわいます。 モンレアーレ大聖堂 Duomo di Monreale モンレアーレはパレルモ郊外、南西8キロに位置します。ノルマンの統治時代の12世紀後半ノルマン王達の狩猟の地でしたが、ノルマン王グリエルモ2世が、ドォーモと修道院を築いてから、町が修道院を中心に形成され、モンレアーレの町の名前は、Monte(山) + Reale(王の) = Monreale(王の山)に由来しています。モンレアーレ大聖堂の保存状態が良く、この種の建造物としては規模の上でも重要な現存例となっている回廊や、総面積6,500m²にも及ぶ大規模なモザイクで有名です。大理石板の台胴を除き、アーチの下端と脇柱を含めたすべての面が金地に鮮やかな色のモザイク絵で精密に彩られています。絵は聖書を題材にしており、人物を描いたモザイクはギリシャ人、幾何学装飾のモザイクや床面のモザイクはイスラム教徒たち(偶像崇拝が禁止されているため)の手によるものと言われています。2回にわたってご紹介したシチリアの7つ(17都市)の世界遺産、如何でしたでしょうか。歴史と文化芸術、そして海と山の自然に恵まれたシチリアに、みなさん是非ご旅行ください。 タオルミーナで世界遺産を堪能したいと思った方はバビロニアイタリア語センターの情報をご覧ください。地球の歩き方「成功する留学」babiloniaの学校情報はこちら babilonia のHPはこちらです Babilonia三角映子(みすみ えいこ)1993年に初めてイタリア留学し、その後2004年よりイタリア在住。声楽家、日本語教師として、そして通訳、翻訳を通して、日本文化をイタリアに、イタリア文化を日本に紹介している。シチリア タオルミーナのバビロニアイタリア語文化センターの日本語翻訳、通訳などに嘱託として携わっている。