シチリアワインの特徴 紀元前8世紀にこの島に来たギリシャ人に始まり、カルタゴ、ローマ、ゲルマン、ビザンチン、イスラム、ノルマン、スペインと、地中海の十字路と呼ばれ、様々な人種が様々な文化を残したシチリア。典型的な地中海性気候で、夏はサハラ砂漠からの熱風により気温が高くなることもありますが、エトナ火山を筆頭に島一帯の標高は高く100m以下の土地は全体の20%以下で、意外と冷涼な畑が多く、多様に富んだ気候に恵まれ、古くからブドウ栽培が行われていました。イタリアはその変化に富んだ地形や多様な土壌、温暖な気候からあらゆる地域でワインを生産し、土着のブドウ品種の豊富さから、さまざまなワインが生産されており、ブドウ栽培面積は約68万ヘクタール、ワイン生産量は約4,950万hℓとフランスと競っていますが、その中でもシチリアはイタリアの州別のワイン生産量でも上位を誇っています。今回はシチリアワインについてご紹介したいと思います。 シチリアワインの起源 世界のワイン造りの起源は、コーカサス地方といわれており、ジョージア、アルメニア、トルコなどで紀元前6000年前頃に始まったとされています。イタリア半島のワイン用ブドウ栽培はギリシャから伝わり、エトルリア人が北部で広め、紀元前1300−1000年にワイン造りが始まったとみられ、シチリアでは紀元前7世紀の絵画や文献にもワイン造りが記されており、イタリアでも古いワイン産地と言われてきましたが、今年シチリア島西部のアグリジェント近郊で、シャッカ(Sciacca)から7kmほどのクロニオ山(Monte Cronio)の洞窟で発見された素焼きのテラコッタの壺に、6000年前にさかのぼる、紀元前4000年の発酵ぶどうや、ワイン作りの過程で生じる酒石酸や塩化ナトリウムの残留物の痕跡が確認されました。調査した米サウスフロリダ大学(University of South Florida)の考古学者、ダビデ・タナシ(David Tanasi)氏が率いる国際研究チームは、世界最古のワインはイタリア産だった可能性があるとし、研究に参加したイタリアのカターニア大学(University of Catania)の化学者、エンリコ・グレコ(Enrico Greco)氏は、取材に、この洞窟は「おそらく神々への供え物がされた神聖な場所だったのだろう」との見方を示し「洞窟の中で発見されたため、埋もれず、中身も、長年の間に凝固してはいたものの保存されていた」と説明しました。これにより、これまでイタリア最古とされてきたブドウ栽培の痕跡から、さらに約3000年さかのぼる重要な発見となったとのこと。ますますシチリアワインについての興味が湧いてくるニュースでした。 シチリアワインのブドウの種類 シチリアには土着品種が多く、下記のような多くのブドウの品種があります。赤ネーロ ダヴォラ、フラッパート、ネレッロマスカレーセ、メルロット、ネレッロカプッチョ、ペッリコーネ、カラブレーゼ等白グリッロ、カタラット、インツォリア、ダマキーロ、グレカニコ、カッリカンテ、ジビッボ、モスカート・ビアンコ、シャルドネ等 がよく知られています。 ワインの種類 シチリアの食文化をご紹介した記事に農産物や食料品の原産地名称保護制度 D.O.CやI.G.Tについてお話ししましたが、ワインもこのような原産地保護制度保証があります。DOCGCerasuolo di Vittoria(チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリア)島の南東ヴィットーリア周辺で生育。ブドウはネーロ・ターヴォラ種(60%以上)とフラッパート種(40%以上)で造られる赤。ネーロ・ダーヴォラ種の比率の高いものは長持ち。 シチリア初のDOCGで、2005年に指定された。「チェラスオーロ」はアブルッツォ地方ではロゼを意味するが、シチリアでは赤を意味する。 DOCAlcamo(アルカモ)島の北西部端の丘陵地帯で造られる辛口の白。カタッラット種60%以上。Contea di Sclafani bianco(コンテア・ディ・スクラファーニ)中部シチリア丘陵地帯スクラファーニ・バーニョを中心とする広大な地域で赤・ロゼ・白の多様なワインを造る。1996年からDOC。Contessa Entellina(コンテッサ・エンテッリーナ)パレルモ南ベリーチェ渓谷の町コンテッサ・エンテッリーナ周辺で造られる赤・ロゼ・白。 白 アンソニカ種50%以上の辛口。赤 ネーロ・ターヴォラ種、シラー種50%以上、濃密な香り。ロゼ 赤と同一品種で造られる。Delia Nivolelli(デリア・ニヴオレッリ)マルサーラ南トラパニ県で造られる。1998年からDOC。ELORO (エローロ)シチリア東南部のブレンド・ワインを造る地帯の中の小さな地域で造られる赤とロゼ。ネーロ・ダヴォラ、フラッパート、ピニャテッロ種主体。 Etna(エトナ) 古代ギリシャの植民地だったシチリア東部、エトナ山麓のミネラルが豊富な火山岩の土壌では、古代からワイン造りが行なわれてきました。1900年代後半あたりから、エトナのぶどうを使ったワインの品質向上に力が入れられ、海外でも高い評価を受けるトップクラスのワインが生まれています。土壌は石灰質と凝灰岩からなり、四方を海に囲まれた島らしく、魚介料理に合わせた白ワインの生産が6割を占めますが、現在は、エトナ山東側の火山灰地帯で赤・ロゼ・白が造られ、赤はネレッロ・マスカレーゼ種60%以上。ロゼは赤と同一品種で造る繊細な香りの辛口。白はカッリカンテ種60%以上の調和のとれた辛口。Faro(ファーロ)メッシーナ県ファーロ種とガンツィツリ種で造られる辛口の赤。アメリカヘも輸出されている。Malvasia delle Lipari(マルヴァジア・デッレ・リパリ)ギリシャ人によってもたらされたマルヴァジア・デッレ・リパリ種95%以上。半甘口から甘口の白。産地は島の北東のリパリ島を中心とするエオリエ諸島。Mamertinoメッシーナ県で造られる。赤白。 Marsala(マルサーラ) シチリアの西部で造られる世界的に有名な酒精強化ワイン「マルサーラ」。酒精強化ワインとは、ワインにアルコール(酒精)を加えてアルコール度数を高めたワインで、気温が高く、温度管理が難しい地域で腐らないようにするために工夫され、船便による長期の輸送のために考えられました。1773年にジョーン・ウッドハウスによって英国市場のために開発されたもので、当時はイタリアよりもイギリスで大変人気になり、ポート、シェリー、マディラと並んで高く評価されました。 MOSCATO DI SIRACUSA(モスカート・デイ・シラクーサ)シラクーサ県シラクーサで造られるコクのある甘口白ワイン。モスカートビアンコ種を100%使用して造られる黄金色で芳香のある滑らかな甘口ワイン。 Pantelleriaパンテッレリア島は、シチリア島の南西の端のトラパニから南に110km、アフリカに近い。 強い風が吹き、溶岩でできた岩肌むき出しの島である。島の名前はギリシャ語とアラブ語で風を意味し、強風は、時には50℃を越える熱風になるため、ブドウの苗は低く植えられ、畑は石垣で囲まれている。ブドウの収穫も8月から始まる。ヘクタール当たりの収量も少ない。地元でズィビッボと呼ばれるモスカート・ビアンコ種から甘口白が造られる。以下の2つがDOC。Moscato di Pantelleria (モスカート・ディ・パンテッレリア)Passito di Pantelleria (パッシート・ディ・パンテッレリア)パッシートとは「干した」と言う意味で、強い太陽に当て乾燥させたブドウを使って造る甘口で、アルコール度は14%以上、熟成1年以上。使っているブドウの種類はズィビッボZibibboというアフリカに近いパンテレッリア島で造られる。 マルサーラは、ブドウの品種や育てた場所、作り方に至るまで伝統の方法で行うことが決められています。ワインは、主にシチリア西部のトラパニ県で生育するカタッラット、インツォリア、グリッロ種。色によって、黄金色オーロ(oro)、琥珀色アンブラ(anlbra)、ルビー色はルビーノ(rubino)の3種に分類され、甘さによって、セッコ辛口(secco)、セミ・セッコ中辛口(semi secco)、ドルチェ甘口(dolce)の3種に分類されています。Menfi(メンフイ)アグリジェント県メンフイを中心に造られる。白はインツォリア、グレカニコ種が主で赤はネーロ・ダヴォラ種が主。Monreale(モンレアーレ)バレルモ至近のモンレアーレの丘陵地帯で造られる。2000年からDOC。 MOSCATO DI NOTO (モスカート・デイ・ノート)シラクーサ県ノート中心に造られる甘口ワイン。モスカートビアンコ(モスカテッロ)種を使用。 Riesi(リエージ)島の中央、カルタニセッタ県で造られる。白はアンソニカ、シャルドネ種が主。赤はカラフレーゼ(ネーロ・ダヴォラ)、カベルネ・ソーヴィニヨン種が主。ロゼもあり。2001年からDOC。Salaparuta(サラパルータ)トラパニ県サラバルータを中心に造られる白と赤。白はカタッラット種が主、赤はネーロ・ダヴォラ種が主。2006年からDOC。Santa Margherita di Belice(サンタ・マルゲリータ・ディ・べリチェ)アグリジェント県サンタ・マルゲリータ・デイ・べリチェ中心に造られる赤と白。1996年からDOC。Sciacca(シャッカ)アグリジェント県シャッカを中心に造られる赤、白、ロゼ。1998年からDOC。Vittoriaラグーサ、カルタニセッタ、カターニア県で造られる。2005年からDOC。 エトナワイン列車 50万年以上続く火山活動によって得られた肥沃な大地がもたらす農作物の美味の宝庫エトナ。特にワインは、とりわけ注目を集めています。エトナ山のワインは、古代ギリシャ時代から伝統的なワイン産地でしたが、斜面を利用した段々畑での栽培の困難さのため、大量生産の時代には世界の表舞台から姿を消していました。しかし、1900年代後半から、ミネラル豊富な火山性土壌、昼夜の寒暖差がある冷涼な高地、外界との接触が少ない環境のため害虫に木々が浸されない、などの条件に可能性を見出した醸造家たちによって復活し、次々とワインが生み出され、エトナ周遊鉄道、エトナワイン街道協会、ワイナリー各社の共同の新企画で、エトナワイン列車ツアーが生まれました。ワイナリー巡りに興味のある方におすすめです。 ワイナリー巡りコース コース1.ランダッツォ(Randazzo) 2. コントラーダ フェウド(Contrada Feudo)3. ヴェルツェッラ(Verzella) 4. ピエトラマリーナ(Pietramarina)5. グルネ デッラルカンタラ(Gurne dell'Alcantara) 6. カスティリオーネ ディ シチリア(Castiglione di Sicilia) 7.リングアグロッサ (Linguaglossa8. ロヴィッテッロ(Rovittello)9. ソリッキアータ(Solicchiata)10. パッソピシャーロ(Passopisciaro)11. モンテラグアルディア(Montelaguardia)エトナ山ワイン列車 ガイド付き、ワイナリー見学2か所、2回のテイスティング付き52ユーロ (チケットはサイトから購入できます。) バビロニアイタリア語センターの食とワイン講座 以前の記事にもご紹介しましたがシチリア、タオルミーナのバビロニアイタリア語文化センターでは、イタリア語レッスンに加え、様々な文化講座があり、イタリアの食とワイン講座もあり、シチリアの恵まれた食材、新鮮なワイン、オイル、チーズなどについての知識を学び、シチリアワインのワイナリー見学やテイスティングを経験でき、イタリア、シチリアの食文化が好きな方におすすめの講座です。 そして授業がお休みの毎週土曜日、希望者が参加できるエクスカーションもあり、エトナ山のワイナリーなどを回るコースもあります。イタリア語とともにイタリア文化に興味のある方にお勧めです。今回はシチリアワインについてご紹介いたしました。皆さん是非シチリアワインをお試しください。タオルミーナで世界遺産を堪能したいと思った方はバビロニアイタリア語センターの情報をご覧ください。地球の歩き方「成功する留学」babiloniaの学校情報はこちら babilonia のHPはこちらです Babilonia三角映子(みすみ えいこ)1993年に初めてイタリア留学し、その後2004年よりイタリア在住。声楽家、日本語教師として、そして通訳、翻訳を通して、日本文化をイタリアに、イタリア文化を日本に紹介している。シチリア タオルミーナのバビロニアイタリア語文化センターの日本語翻訳、通訳などに嘱託として携わっている。