ここは、メリーランド州ハワード郡のエリコット・シティ(Ellicott City)。ワシントンDCのユニオン・ステーションから約61km(38マイル)北東に位置する都市です。私がこの日訪れたのは、厳密に言うとエリコット・シティの中の「オールド・エリコット・シティ(Old Ellicott City)」と呼ばれる界隈で、「ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道(Baltimore and Ohio Railroad)」が通っていた当時、1830年にエリコット・シティ駅が建設された頃から大変栄えていた場所です。18世紀後半から19世紀初頭にかけての古き佳きアメリカの面影を残す古い街並みが美しいダウンタウンには、ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道博物館の小さな分館や、消防署博物館、ハワード郡ポリス博物館のほか、多くのアンティーク・ストア、雑貨屋、ワインストア、モダンなブティックやカフェなどが建っています。 「オールド・エリコット・シティ」の入り口の看板のある交差点を左折すると、看板のすぐそばに、小さな一軒のログ・キャビンが建っているのが見えました。このキャビンが建てられたのは、エリコット・シティが「エリコット・ミルズ(Ellicott Mills)」と呼ばれていた当時(約1780年ごろ)と推定され、この家を所有していた19世紀の家主トーマス・アイザック(Thomas Isaac)にちなんで「トーマス・アイザック・ログ・キャビン(Thomas Issac Log Cabin)」と呼ばれるようになったのだそうです。 訪ねたのがメモリアル・デーの週末だったせいか、小雨模様だったのにも拘わらず、ダウンタウンのメインストリートには星条旗が翻り、通りは旅行者であふれていました。18世紀当時の建物が街のあちこちに点在する故、街そのものもビンテージ感にあふれているのですが、私が特に心惹かれたのは、メインストリートのアンティーク・ストアの窓辺の装飾でした。 アメリカのカントリーサイドのお店では、アンティーク・ストアとは名ばかりのインチキな匂いのするガラクタを骨董と偽って売られているかと思えば、正真正銘の古伊万里が破格の値段で売られているのを見つけたり、日本の3分の1程度かな、と思えるようなボーン・チャイナのティーセットなどの掘り出し物に偶然出くわすことがあるのですが、比較的アップスケールな雰囲気のお店が多い中、ここでも街角の一軒の骨董屋で、オーセンティックなコレクタブルの商品にびっくりするような赤札がついて並んでいるのを見かけました。私が二軒先のお店のオーナーだったらすぐに買い取って自分の店へ持ち帰り、磨きなおして3倍の値札を付けて陳列棚に並べるかもしれない、という思いが一瞬脳裏を過り思わず苦笑してしまいました。 世界中の様々なアンティークの家具、ヴィンテージのランプ、洋食器や宝石類等を眺めながら時代を遡り不思議な感覚に浸りながらウィンドウ・ショッピングを愉しんだ後カフェを探していると、メイン・ストリートから、ちょっと外れた水路沿いの木立の陰に、黒いガーデン用テーブルと椅子が置いてあるのが見えました。てくてく歩いて行ってみると、そこは、「リバーハウス・ピザ(River House Pizza Co.)」というピザ屋さんのテラスでした。 ピザ屋の外の巨大なピザ窯では特製ピザが次々と焼かれています。あっという間に窯焼きのピザが出てくるので、時間が短すぎるのではないかと気になって訊いてみると、「薄いクラストの場合だったら4分ほど窯の中で焼いて、20分程度窯の外で冷ましておくと美味しいピザが出来上がるんだよ。」ということです。自宅のキッチンでパン・ピザなどの分厚い生地を使って30分もかけて焼いていたことを後悔するような「目からうろこ」の一言です。 ピザ屋のお兄さんが手際よくピザを焼いている姿を見ていると、数年前まで我が家の裏手に住んでいた友人サンドラから、265℃(500℉)のオーブンでほんの15分程度焼いてあとは余熱で温めるだけでジューシーなローストビーフを料理する方法を教わった時のことを思い出しました。 サンドラは私の父と同年代なのですが、彼女も18世紀に建てられたログキャビンと石造りの家でアンティークの品々に囲まれて暮らしていて、会う度にアメリカの歴史やアメリカ文化について質問攻めにする私に、彼女のライフスタイルや幼少のころからの体験談を語ってくれたものでした。このオールド・エリコット・シティは、アメリカを熟知しているサンドラのようなアメリカ生まれの友人と、ぜひまた訪ねてみたいと思わせるような魅力あふれる街だったのです。 【データ】オールド・エリコット・シティ(Old Ellicott City)URL:http://visitellicottcity.com/「オールド・エリコット・シティ」6月のイベントカレンダーURL:http://visitellicottcity.com/events/ファーマーズ・マーケット(Farmers Market)6月3日 9:00~13:00The Wine Bin, 8390 Main St Ellicott City, MD 2104URL:http://visitellicottcity.com/events/farmers-market-39/ バックヤード・ブランチ(Back Yard Brunch - The Rock Shop)6月11日 11:00~14:00 Little Market Cafe, 3731 Hamilton St Ellicott City, MD 21043URL:http://visitellicottcity.com/events/back-yard-brunch-the-rock-shop/ヒストリック・エリコット・シティ(Historic Ellicott City, Inc. (HEC))住所:8334 Main St, Ellicott City, MD 21043TEL:410-461-6908URL:http://www.historicec.com/トーマス・アイザック・ログ・キャビン(Thomas Isaac Log Cabin)URL:http://www.ellicottcity.net/tourism/attractions/thomas_isaac/ ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道博物館(The Baltimore & Ohio Railroad Museum)住所:2711 Maryland Avenue, Ellicott City, MD 21043TEL:410-461-1945URL:http://www.borail.org/Ellicott-City-Station.aspx アティック・アンティーク・N・シングス(Attic Antiques N Things)住所:8241 Main St, Ellicott City, MD 21043TEL:410-465-5255営業時間:月~金曜日 11:00~19:00 土曜日9:00~19:00 日曜日 12:00~17:00URL:http://atticantiquesnthings.com/store/index.php コテージ・アンティークス(Cottage Antiques) 住所:8181 Main St #1, Ellicott City, MD 21043TEL:410-465-1412 マキシーンズ・アンティークス/コレクタブルズ(Maxines Antiques/Collectibles)住所:8116 Main St, Ellicott City, MD 21043TEL:410-461-5910 アンティーク・デポト(Antique Depot)住所:3720 Maryland Ave, Ellicott City, MD 21043TEL: 410-750-2674URL:http://antique-depot-ec.com/ リバーハウス・ピザ(River House Pizza Co.) 住所:3744 Old Columbia Pike, Ellicott City, MD 21043TEL:410-206-3658 舞林鳥 恵80年代後半から日米間を往復する暮らしを始め、現在DCから小一時間の田舎町で夫とのふたり暮らしを満喫しています。カントリーライフの醍醐味をHappyNest in Americaにて配信中。ワシントンDC周辺の観光名所や魅力的な穴場スポットの情報をお届けします。