
日本は太平洋と日本海の間の海面から浮かび上がる列島で構成され、南北に細長く延びています。南米大陸の南西部を国土とするチリも日本と同じように南北に細長い国土となっています。ところが太平洋の海岸から東に広がる陸地はすぐにアンデスの高嶺に行く手を阻まれてしまいます。チリは南北には約4300キロにわたって繋がるのですが、東西には平均で約175キロの幅しかないのです。南緯20度から60度の緯度の違いは、気候や産業に大きな影響を与えています。

海の男であれば延々と続く海岸線に大きな魅力を感じるに違いありません。海水の温度が変われば生息する魚介類も違います。南米大陸の西岸を北上する寒流のフンボルト海流は、エルニーニョ現象などの異常気象を引き起こすこともありますが、太平洋を豊かな漁場としています。

チリでは魚食より肉食の方が好まれているため漁業の歴史は長くはないのですが、サケはノルウェーと肩を並べ世界有数の輸出国となっています。日本のスーパーでもチリから輸入されたサケが毎日のように店頭に並べられています。サケの他にもウニやアワビなどでもチリ産が増えていますが、まだまだ種類は限られるようです。首都サンティアゴの中央市場メルカド・セントラルに行けば、延々と続く海岸線で水揚げされた魚介類が勢揃いします。

メルカド・セントラルは、市の中心アルマス広場から徒歩約5分のところに1872年にオープンしました。ルネサンスと新古典の様式を融合しユニークなデザインに設計されています。豊かな装飾が施された柱、梁 、アーチはイギリスで製造されサンティアゴに運ばれたものです。数多くの人々が集まる市場は厳重に警備されており、入口付近では馬に跨った警官の姿を見かけることがあります。


広々とした市場の敷地内で最も大きな売場面積をもっているのが水産物のコーナーです。お馴染みの魚介類に混じって、日本では見たことのない姿も見かけます。南極にも近い漁場で獲られ氷漬けで運ばれてきたコングリオ、スケトウダラのような形をしたメルルーサ、淡白な白身の魚レイネタなどと初対面を果たす人も多いことでしょう。また、生きた魚が泳ぐ水槽を見ていると水族館の中の熱帯魚コーナーにいるように錯覚してしまいます。


魚介類売場だけを見続けても飽きることはありませんが、やはり肉類はチリの人々にとって欠かせない食材です。肉売場では、分厚い牛、豚の肉や丸ごとの鶏が豪快に並んでいます。買物客をかき分けるようにして大きな肉の塊が担ぎ込まれてきます。他にも野菜、果物の売場もあり、市場の中で台所に必要な全ての食材が揃います。アクセサリーなどの土産物コーナーも充実しているので、ばらまき土産を容易く見つけることができそうです。




メルカド・セントラルはサンティアゴ市民が食材を買いそろえる市場ですが、中央に広いレストランコーナーが設けられていることも大きな特徴です。メニューの中心は新鮮で豊富な食材を活かした海鮮料理です。手ごろな価格で太平洋の海の幸を思う存分味わうことができるばかりでなく、フォルクローレの弾きがたりを聞くこともできます。


【データ】
施設名:中央市場 Mercado Central
住所:San Pablo 967,Santiago
URL:http://www.mercadocentral.cl
開館時間:月〜木曜日8:00〜16:00,金曜日9:00〜18:00,土曜日7:00〜18:00,日曜日7:00〜17:00