オレゴンで、なぜシェークスピア? 我が家の夫の実家がカリフォルニアなので、年に数回ドライブして里帰りをします。フリーウエイの5号線で南下、ワシントン州からオレゴン州に入り、カリフォルニアとの州境まであと少しという位置に、今回ご紹介するレストランがある「アシュランド」という町があります。南オレゴン大学のメインキャンパスがあり、人口2万人ちょっとの小さな町でもどことなく小綺麗で活気があって...という感じの典型的な学生街の雰囲気ですが、80年以上も続くシェークスピア・フェスティバルの中心地として劇の上演シーズンである毎年2月から10月までの9ヶ月間に約10万人の観光客が訪れる、シェークスピア愛好家にとって全米はもちろん、世界的にも有名な町です。でも、どうしてオレゴンでシェークスピア? 1850年代に近くで金脈が発見されたことから発展したアシュランドは、ゴールドラッシュが終わると林業及び製材業や農業にシフトし、また鉱水脈が発見されたことからスパ・リゾートへの転換も期待されたものの、当時の輸送手段だった鉄道が州境にある急斜面のカスケード山脈越えから路線変更をしたのが主な原因で、1920年代半ば頃からだんだんと活気が失われていきました。その後、南オレゴン大学に赴任した若い英語教師アンガス・ボウマー氏が自治体を説得し、劇場をテコ入れして1935年7月の独立記念日のイベントとして2日にシェークスピアの「十二夜」、3日に「ヴェニスの商人」、独立記念日である4日には「十二夜」を再演しました。自治体では格調高いシェークスピアの上演で収益が上がるとは思っておらず、低予算で抑えさせた上、客引きのために同劇場内で昼間にボクシング・マッチを開催したほどでしたが、実際は演劇の方がボクシングにかかったコストまでカバーするほどの入りを見せたのだそうです。 その後は反響が反響を呼び、夏だけのイベントだったのが拡張され、今や全米で最も長い歴史のある、かつ最大規模のプロの非営利団体事業として有名になりました。そのレベルは非常に高く、本国イギリスから毎年アシュランド詣でに来る人もいるのだとか。でももともとが小さな町ですし、観光客もシェークスピアの世界にひたりに来るのですから、大きなメジャーなホテル泊よりも雰囲気のあるベッド&ブレックファストや可愛らしい貸しコテージなどに泊まるのが人気なのだそうです。 醸造所のレストラン さて前置きが長くなりましたが、実は今回、春休みの里帰りの折に通りすがりに立ち寄った「カルデラ」というレストランが醸造所とダウンタウンの2店舗あり、ダウンタウン店の方がその「シェークスピア・フェスティバル」のメインの劇場のすぐそばの有名店だそうで、とてもいい店だったのでご紹介させていただこうと思った次第です。うちが入ったのは高速からの行き方が簡単な、醸造所のレストランの方ですが...スマホのマップアプリを頼りに進んでいくと、私有地進入禁止みたいな感じの小径にどんどん入って行くので、とても引き返したいと思った時によく見たら、目の前に会った工場の一角がその「カルデラ」レストランでした。よく考えたらビール工場ですから、飾り気も何もなくて当たり前なんですね。 圧巻のインテリア 店内に入って目を引くのは、全面吹き抜けの上の方にズラリと並べられたビール瓶です。ホームページで見る限り考え得る限りのフレーバーのビールを制作しているようでしたので、きっと全部が自社製品なのだろうと察しはつきましたが、何しろ上の方で遠すぎて確認はできませんでした。ただ、ビール瓶もこれだけ並ぶとちゃんと主張して、素敵なインテリアだと思えてくるのは面白いと思いました。 並んでいるのはもちろん1面だけではなく、空いた壁全てに棚を吊って並べてある雰囲気。テレビは、こういうバーやタバーン系の店ではスポーツ番組が流れるのが一般的なところ、ここではビールの製造工程がずっと紹介されていました。 本格的なメニューの数々 早めのランチ時に入ったので大きな窓からの自然光も明るく、まだそれほど混んでもいないし、カジュアルで気楽な感じの店内でしたが、メニューは本格的でした。早起きして朝あまり食べず空腹だった夫が頼んだNYスタイルのステーキ、貝割れ菜で隠れていますがブルーチーズとトリュフ入りバターがとろけていて、ユーコン・ゴールドのマッシュドポテトに乗って現れました。黄色いユーコン・ゴールドはマッシュするとねっとりして最高と言われています。お皿の上はちょっと不鮮明ですが、赤パプリカのピュレでお店の名前がパイピングされていました。 私は、あればつい頼んでしまうBLT(ベーコン、レタス、トマト)サンドイッチにレモン・シーザーサラダ添え。ビネガーの代わりにレモンジュースを使ったドレッシングだそうで、とても爽やか。サンドイッチのベーコンはバーボンで風味をつけてあるそうで深みのある味、たっぷり挟んだグアカモレ(アボカドのディップ)のねっとり感とトマトの酸味がよくマッチしていました。 子供が頼んだハウスピザ。モッツァレラ、リコッタ、パルメザン、プロボローネの4種類のチーズで焼き上げてあります。ピザはバー・メニューなので、種類によってよくあうイチオシのビールも併記してあり、こちらに合うのは「アシュランド・アンバー」というシンプルでキレのいいビールだそうです。でも子供ですから、ここの自家製のルートビアで頂きました。 ペット連れにも優しい店 広い店内に加えて外には大きなピクニックテーブルをいくつも置いたウッドデッキがあり、お天気のいい日は気持ちよさそうです。アメリカ人は車での長旅にペットを同伴することが多く、日向で飲食しながらくつろいでいた人達はみんな犬連れのお客様でした。また、後でグルメの人達に聞きましたら、ダウンタウンの店もとてもいい雰囲気でくつろげる店である事、ここで作られている「トーステッド・ココナツ・チョコレート・ポーター」という濃い色のビールはマストアイテムだという事でした。10時間以上かかる長旅の合間に大急ぎで通り過ぎるばかりでしたし、シェークスピアにも縁がないからと思い込んでいましたが、他にもミュージカルや様々な演目もかかるようですし、いつか近いうちにちゃんとアシュランドへ、足を運びたいものだと思いました。 【データ】店名:カルデラ・ブルーワリー&レストラン住所:590 Clover Ln, Ashland, OR 97520TEL:(541) 482-4677URL:https://www.calderabrewing.com/営業時間:毎日 11:00 - 22:00名称:カルデラ・タップハウス住所:31 Water St #2, Ashland, OR 97520TEL:(541) 482-7468営業時間: 月〜木曜 14:00 - 22:00 金〜日曜 11:30 - 22:00 名称:オレゴン・シェークスピア・フェスティバル住所:15 S Pioneer St, Ashland, OR 97520TEL:(541) 482-2111URL:https://www.osfashland.org期間:毎年2月〜10月2017シーズン:https://www.osfashland.org/experience-osf/current-season/all-events.aspx Eko夫の転職に伴い渡米、シアトルに住み着いて、気が付けば20年になりました。仕事、子育て、学業と突っ走って来ましたが、2011年3月の震災をきっかけに、微力ながら復興のお手伝いをさせて頂いています。長年住んでいるからこそ知っている昔話など交えつつ、大人の、または家族で、そして子供向けと、シアトルの色々な楽しみ方をお届けします!