新しいものが次々に産み出されと人々の生活は豊かになります。科学的な発明は物理的な、アートなどの創作などでは精神的な豊かさを感じさせてくれるものです。世界各国で進行される各種の宗教観から様々な創造神話が語られます。インドで広く信仰されているヒンドゥー教では、三大神のシヴァ神は創造の神であると同時に破壊の神とされています。創造と破壊は相反する行為ですが、破壊することが新たな創造を産み出すという世界観をヒンドゥー教はもっているのです。
インド各地には夥しい数のシヴァ神を祀る寺院が建立されています。インド最大の経済都市ムンバイの市内にも多くの寺院が建造されていますが、アラビア海に浮かぶガーラープリー島は全域がエレファンタ石窟寺院となっています。16世紀にポルトガル人が上陸した際に巨大な石彫のゾウが発見されたため、エレファンタ島と呼ばれるようになりました。
島に向かう船の桟橋は、ムンバイ南部のチャトラパティ・シヴァージー・マーグの南端に黄色い玄武岩で築かれたインド門の真下に設けられています。1948年のインド独立の際には最後のイギリス軍がこの門を潜って船に乗りこみ本土に帰還しました。港の西には世界各国からの要人を迎えるタージ・マハル・ホテルが、西洋の新古典主義とインドの伝統の様式を融合した格調高い姿を見せています。
エレファンタ島はムンバイから東に約10キロです。島に降り立つ波頭は石窟寺院の参道のようです。海を背にして1000段の長い階段状の道を上がると石窟寺院の第1窟です。岩山を削った空間は、ひんやりとして涼しく熱帯の暑さを忘れさせてくれます。
第 1窟の主堂は一辺約 28メートルの正方形の列柱ホールです。6世紀から8世紀にかけて造営されたと推定されています。北側に正面入口の横には、舞踊の神でもあるシヴァ神がナタラージャのポーズをとっています。主堂には 30本を超える列柱が整然と並びます。各柱は溝つきのクッションを柱頭に抱き、柱身は上部が円形、下部は四角形です。
正面入口から太陽の光が遮られる空間を貫く中心軸を南に進みます。主堂の中央部では東西の開口から光が差し込んできます。東西にも中庭に面して入口が設けられているのです。中庭に面する祠堂は各々、東院、西院と呼ばれています。
北と東西の三方からの光が交わる中心地には祠堂が設けられています。分厚い壁の外では仁王像のような彫像が不審者の侵入に目を光らせているようです。聖域の中央には円筒形の石像が鎮座しています。これはシヴァ神の象徴とされる男根のリンガです。ヒンドゥー教徒が篤く信仰するシヴァ神が、様々に姿を変えて祀られているのです。
16世紀にはポルトガル人がここで銃の練習を行ったことによって破壊された部分もありますが、エレファンタ石窟寺院は1987年、ユネスコの世界遺産に登録され大切に保存されています。
【データ】
施設名:エレファンタ石窟群 Elephanta Caves
アクセス:ムンバイ・インド門下の港から船で約1時間
開館時間:9:00〜17:00
休み:毎週月曜日