地球の表面は変化に富んでいます。見渡す限りの大平原、大砂漠もありますが、熱帯のジャングルに突然、巨大な岩山が現れると誰もが驚いてしまうものでしょう。スリランカ中部のシーギリヤでは、緑の樹海に赤褐色の巨岩が超自然的な景観を作り上げています。
地面から垂直に切り立つ岩は神々しさを漂わせています。近寄ることすら畏れ多く感じられます。直立する岩肌に足をかけて登ることなど思いもよらぬことです。ところが、この岩の頂上に宮殿が建設されたことがあるのです。
紀元前4世紀から11世紀までアヌラーダプラに都を置いて、スリランカを統治したシンハラ王朝に5世紀に王権争いが起こりました。477年、カーシャパが父のダートゥセーナ王から強引に王位を奪ったのです。父親を殺害した後も弟のモッガラーナの反乱を恐れ、アヌラーダプラを離れシーギリヤに移りました。
複雑な市街地と防衛機能を備えたシーギリヤに首都が建設されました。王宮の建設用地として選ばれたのがシーギリヤ・ロックなのです。484年には地上約195メートルの巨大な岩の頂上に宮殿が完成しました。外敵を寄せつけることのない岩は鉄壁の城ですが、日常生活には謎めいたものが感じられます。難攻不落の城も495年にモッガラーナの襲撃を受け、自害に追いこまれたカーシャパの天空の城での生活は11年間だったのです。
頂上の宮殿は跡形も残っていませんが、岩肌や周囲に数々の遺構が残されています。平野部に築かれた城壁に沿って掘られたハスの水路には、今でも豊かな水を湛えています。入口からハスの水路を超え、敷地内に入ると左右にはプールが整然を並んでいます。王や臣下たちが身を清めたり汗を流したりしたことでしょう。
水の広場の中央から岩に向かって約600メートルのメインロードがまっすぐに延びます。岩場に入れば階段や坂道をひたすら登ることになります。時折現れる平坦部には数々の石窟寺院、礼拝堂、会議堂などが残されています。
岩の中腹部には岩肌に沿って傾斜のない通路が横断しています。岩の側面を真横に見ながら歩いた先には螺旋階段が設けられ、垂直方向に進路を変えます。ステップを数回転して螺旋階段を登りきると、細い通路に繋がり光沢を帯びた壁ミラーウォールが作られています。煉瓦を芯にして漆喰が施した表面に卵の白身と蜂蜜と石灰を混ぜ合わせたものが塗られているのです。
ミラーウォールからなだらかな坂道を登ると広場のような空間に出ます。硬い岩盤には巨大な2本のライオンの爪先が刻まれています。頂上に王宮があった頃には頭部や足も彫られ、ライオンが大きく口を開け座った形をしていたようです。ライオンの爪先に挟まれたところから頂上に向かう最後の階段が設けられています。頂上からはシーギリヤのジャングルが360度のパノラマで広がります。
シーギリヤ・ロックの最上部まで登りつめるには相当の体力と時間が必要となります。体力に自信のある人が急いで歩いても1時間半前後は必要となるでしょう。1982年にユネスコの世界遺産に登録されたシーギリヤは、時間に余裕をもって訪れたいスポットです。
【シーギリヤ・ロックへのアクセス】
キャンディから1日1本直行バスが運行。所要時間2時間30分〜3時間