
最近、道や公園で音楽をかけながらダンスをしている人をよく見かけるようになりました。人目を気にすることなく、激しく体を動かしています。日本の伝統的な踊りは和服を着た状態で体を動かすため、身のこなしには大きな制限がありました。現在のストリートダンスは欧米の影響を受けたものでしょう。普段の生活でも体を動かしやすい衣装を身に着けていた諸外国では、様々な躍動的なダンスが発達しました。
スペイン南西部では、古くからイベリア半島で移住を繰り返したヒターノと北アフリカから移り住んだイスラム教徒のムーア人によって、独特の文化が産み出されました。グラナダにはキリスト教徒によるレコンキスタが完了する1492年まで、イスラム教国家のナスル朝が栄えました。市街地を見下ろす南東の丘の上には、壮麗なアルハンブラ宮殿が建造されました。イスラムの様式によって建てられた宮殿は、カトリック教徒によって改築された形で残されています。


グラナダの中心街はアルハンブラ宮殿の西部に広がりますが、その北側に迷路のように張り巡らされた石畳の道に沿って白壁の家が密集する街並があります。13世紀にキリスト教徒によってバエサを追われたムーア人が城砦都市を築いたために、アルバイシンと呼ばれるようになりました。このエリアは、アルハンブラ宮殿などとともに世界遺産に登録されています。


アルバイシンからチャビス坂を超えた東部には、小高いサクロモンテの丘がせり上がります。古くからこの丘陵地を居住地としたのはヒターノでした。丘の傾斜面に穴を穿ち洞窟住居のクエバを次々に建てたのです。硬い地盤を利用した住居は頑丈で、外敵の侵入を阻んだのです。窓を設けることはできなくても、石灰が塗られた内装の壁は白く暗さを感じることはありません。

グラナダをはじめムーア人とヒターノが隣接するエリアでは、互いの文化が影響を与えるようになりました。生活様式が変化する中、体の動きで感情を表現するフラメンコが産まれたのです。当初はプライベートな空間で楽器は用いず、手拍子や掛け声に合わせて踊られていました。19世紀前半にカフェ・カンタンテと呼ばれる飲食店で、フラメンコが上演されるようになると、表現スタイルに磨きがかけられました。カスタネット、ギターが頻繁に使われるようになったのです。20世紀後半には観光客用に、フラメンコと飲食が楽しめるタブラオが各地に登場しました。

ロス・タラントスはサクロモンテの洞窟住居を改装し、1792年にオープンしたタブラオです。演技が始まると円天井の細長い空間は熱気と気迫で包まれます。手を伸ばせば体を触れてしまいそうな位置で踊られるため迫力満点です。ダンサーの息遣いまで聞こえてくるようです。人生の喜び、楽しみ、哀しみ、憤りが情熱的に全身で表現され、1時間前後のパーフォーマンスは、飽きることなくアッという間に終わります。


ロス・タラントスではホテルからの送迎サービスを行っている他に、周辺の観光ツアーの企画も準備されています。
【データ】
施設名:ロス・タラントス Los Tarantos
住所:Camino de Sacromonte 9, 18010 Granada
Tel:958-224525
URL:http://www.cuevaslostarantos.com/index.php
開館時間:ショーは21:30〜、23:00〜(4〜10月は22:30〜、23:30〜)の2回
休み:毎週月曜日