ロンドン北東部ウォルサムストウには、以前ご紹介した「ウィリアム・モリス・ギャラリー」の他にももう一つ、とても個性的なアート・ギャラリーがあります。
その名も「ゴッズ・オウン・ジャンクヤード」。神様のゴミ置き場・・・なんて、聞いただけでワクワクしちゃうでしょう?
遠目に見たら、小ぶりの倉庫か作業場みたいに地味〜な外観。でも一歩その中に足を踏み入れると、
そこは、目くるめくネオン・アートの洪水なのです!
ここはウォルサムストウ出身のネオン・アーティスト、故クリス・ブレイシー氏のアトリエ兼ギャラリー。2014年秋に彼がガンによって他界(享年59歳)した後も、妻と3人の息子が引き継いで週に三日(金・土・日)だけ一般に無料公開しています。
中にはカフェもあって、その名前がまた洒落てるんですよ。
「ザ・ローリング・スコーンズ」!もちろんカフェ・エリアだって数多のネオンサインや、主に廃物(ジャンク)に手を加えたアート作品が所狭しと。
ブレイシー氏の父親は、南ウェールズ出身の元炭鉱夫。ロンドンの下町ウォルサムストウに移り住んで、看板や電飾の制作請負いを生業としました。そんな家業を継いで、歓楽街ソーホーのネオンサインに手腕を発揮していたのが、そもそもの始まり。
「この仕事を始めてから20年ほどは、ソーホーにあるポルノ関連ショップの99%は手掛けたかな」と、生前のインタビューで語っていた彼は、やがてその独特なセンスを見出されて数々の映画セットやファッション、リテール等でも大人気のアーティストとして活躍するようになりました。
「ブレード・ランナー」や「バットマン・リターンズ」などでも彼の作品が多用されたと聞けば、「あー言われてみれば、この作風は確かに!」と合点のいく映画ファンも多い事でしょう。
「エロティック・ショー」という看板を掲げた小屋の前では、ルイ・ヴィトン柄の衣を着て羽根にはシャネルのロゴ付き・・・という天使が電話機を抱えていたり。じゃあ、その小屋の中は?と覗いてみれば、
両手に銃を持つジーザズがいる!という具合。カラフルで明るいネオンの光に彩られていながら、ペーソス溢れる作品が印象的です。
そんな社会風刺・諧謔のセンスはきっと、廃坑によって職を失い故郷ウェールズを離れてロンドンに活路を見出した、苦労人の父親から受け継いだものも多かったのではないでしょうか。
ポップで奇妙な美しさを湛える、「神様のゴミ置き場」。こんな不思議空間に、あなたも迷い込んでみませんか?
【データ】
ゴッズ・オウン・ジャンクヤード(God's Own Junkyard)
住所: Unit 12, Ravenswood Industrial Estate, Shernhall St, London E17 9HQ
Tel:020-8521-8066
URL:http://www.godsownjunkyard.co.uk/
金曜日&土曜日:11am-9pm
日曜日:11am-6pm
(月〜木は休業)
小野 雅子
ロンドン西郊外に住む会社員、職場はヒースロー空港周辺です。在英20年以上の経験値を発揮して、初めてイギリスへいらっしゃる方にも興味深く分かりやすいロンドン観光&生活ガイドとしてお役に立てれば…と思います。個人ブログ「ロンパラ!」はこちら♪