18世紀中ごろといえば日本は江戸時代でしたが、アメリカ合衆国はイギリスからの独立前の植民地時代。ワシントンDCが創設されるかなり前の1751年には正式な都市となっていた(今日のワシントンDC北西部に位置する)ジョージタウン(Georgetown)は、外洋航路からタバコの運送のためポトマック川(Potomac River)とチェサピーク・オハイオ運河(Chesapeake and Ohio Canal)を行き来する貨物船舶を中継ぎする商業港として繁栄していました。そのジョージタウンのMストリートに、1765年に建てられイギリス植民地時代のアメリカの中産階級の暮らしぶりを彷彿させる「オールド・ストーン・ハウス(Old Stone House)」という古い石造りの家が現存しています。 アメリカ合衆国国立公園局発行の「オールド・ストーン・ハウス」に関する案内書によると、1791年に、時の大統領ジョージ・ワシントンが、当時の都市計画を支援した建築家ピエール・シャルル・ランファン(Pierre Charles L'Enfant)とともにジョージタウンを訪れ、ジョン・スター(John Suter)という一家が経営するファウンテン・イン(Fountain Inn)という宿に滞在したことで、ここがジョージ・ワシントンの司令部だったという伝説が生まれたようです。実際は、この建物は1810年ごろジョン・スターの息子ジョン・スター・ジュニア(John Suter Jr.)の時計店だったということです。 さて、その幻の伝説を残すオールド・ストーン・ハウスですが、現在インテリアは司令部風にではなく、植民地時代の普通の民家風にコーディネートされています。まず、通りに面した入り口を入ってすぐのショップを覗いて奥の台所へ入ってみます。低い天井には太い梁がめぐらされ、現在煉瓦が敷いてある床は建てられた時には土間だったそうです。石造りの家の特長ですが、この家も例外でなく壁の厚みは2〜3フィート(60~90cm)ほど。 台所には、植民地時代に使われた台所用品やろうそく立て等が陳列されています。竈として使われた炉辺には鋳鉄や錬鉄の鍋、ロースターなどもありました。当時の木製玩具の中には、日本のけん玉によく似たおもちゃもあります。博物館や美術館の展示品には「触らないでください。」と表示されている場合も多いものですが、ここの植民地時代のおもちゃは「遊んでみてください!」の嬉しい表示つき!思わず日本の民芸品のような温かみのある玩具を、ひとつずつ手に取って遊んでみました。 上の階には、食堂兼居間、簡素な主寝室、子ども用の寝室や子どもの遊ぶ部屋が。また、台所だけでなく食堂兼居間にはもちろんのこと、子ども用の寝室を除く各室内に暖炉がついていました。 最上階の屋根裏部屋風の子ども部屋から降りてきて、一階のショップで買い物を。ショップには、手吹きガラス、ストーン・ウェア、ポッタリー、植民地時代の玩具、ゲーム、フレーム入りのポスター、書籍、コレクターが喜びそうな品々など沢山のお土産が揃っています。ショップを覗いた後は、フェンスの裏手にある英国風のガーデンへ。 何度も人手に渡り1953年に連邦政府が9万ドルで買い取るまで、オールドストーンハウスは個人所有となっており、パークウェイ・モーター・カンパニー(Parkway Motor Company)という中古車販売業者が事務所として使われていて、現在庭園となっている部分は当時舗装されていたのだそうです。一般公開が始まったのは1960年、土地と建物が合衆国国立公園局に移管されてからです。 「オールド・タウン・ハウス」の見学を終え、界隈に数あるブティックでのお土産の買い物と食事を済ませたら、同じくジョージタウンにあるウォーター・フロント・パーク(Waterfront Park)、ダンバートン・オーク・パーク(Dumbarton Oaks Park)、モントローズ・パーク(Montrose Park)、フランシス・スコット・キー・メモリアル・パーク(Francis Scott Key Memorial Park)などの公園の散策はいかがですか。これらの公園も、アメリカ合衆国の国立公園管理局によって管理されています。 【データ】オールド・ストーン・ハウス(Old Stone House)住所:3051 M Street, NW, Washington, D.C. 20007TEL:202-730-9307 (内線12で短い英語の電話ツアーに参加できます。)URL:https://www.nps.gov/places/old-stone-house.htm開館日日時:毎日11:00~18:00(連邦祝日を除く)入館料:無料アクセス:最寄りのメトロ駅はフォギー・ボトム(Foggy Bottom)。サーキュレーター・シティ・バスですと、オールド・ストーン・ハウスの前で降車できます。 舞林鳥 恵80年代後半から日米間を往復する暮らしを始め、現在DCから小一時間の田舎町で夫とのふたり暮らしを満喫しています。カントリーライフの醍醐味をHappyNest in Americaにて配信中。ワシントンDC周辺の観光名所や魅力的な穴場スポットの情報をお届けします。