東京のウォーターフロントお台場には、ファッショナブルなショップやカフェが溢れています。今では屈指のエンターテイメント・エリアとなっていますが、江戸時代末期には海に向かって砲台が並べられました。黒船など海外からの軍船から江戸を守る必要に迫られていたのです。
大西洋とカリブ海に挟まれ欧米からの船舶が頻繁に往来したキューバの首都ハバナには、巨大な4つの要塞が築かれました。旧市街が広がるラ・アバーナ・ビエハ地区には運河カナル・デ・エントラーダに沿って、フエルサ要塞、プンタ要塞が建造されました。
大西洋を渡ってきた船は数百メートル幅の運河を通ってハバナ港に入ります。水路をへだてたカサ・ブランカ地区の高台にも、モロ要塞とカバーニャ要塞が建設されています。ハバナへの物資輸送の要となる運河は4つの要塞から睨みをきかされていたのです。
旧市街から1957年に完成した海底トンネルで運河を渡ると、カサ・ブランカの北西端に出ます。水路の出入口にあたる岸にはモロ要塞が築かれました。1640年にスペイン人によって築かれた石造りの堅牢な砦です。運河を隔てた正面のプンタ要塞から鎖を渡し、ハバナ港に向かう全ての船を管理したのです。現在は博物館となっており、1492年にキューバを訪れたコロンブスの大航海の軌跡が紹介されています。1762年にはキューバの統治を争うイギリスに占領されたこともありますが、翌年にはスペインが奪回しました。
イギリスによる侵略に悩まさるスペイン王のカルロス3世は1773年、モロ要塞から南東1キロ足らずのところにカバーニャ要塞を建造し、防衛力の強化を図りました。10年の歳月をかけて完成した砦は、新大陸でスペイン人が建造した最大の要塞と言われています。毎夜21時に始まる大砲の儀式は150年間にわたって続けられています。
カバーニャ要塞の広大な敷地の一画には、ゲバラ博物館が設けられています。K-7の表示のある部屋がゲバラの執務室です。彼が実際に使ったテーブルや椅子の他に数々の写真や遺品が展示されています。
カバーニャ要塞に隣接したところに近代の兵器が並んでいます。武器博物館の展示物の中には旧ソ連製のMIG-21戦闘機もあり、大航海時代から東西冷戦時代までの複雑なキューバの歴史を感じとることができます。
1959年の革命によってキューバは自治を勝ちとりました。独立運動をリードしたチェ・ゲバラは、カバーニャ要塞から南東約150メートルのところに暮らしたことがあります。現在、第一ゲバラ邸宅として公開されている家には、革命前の大統領バティスタの義理の兄弟が住んでいました。現在は博物館に役割を変え、ゲバラが愛用した日用品が展示され、彼が休息をとったベッドも残されています。
モロ要塞やカバーニャ要塞など、カサ・ブランカ地区の高台からは、運河越しにハバナの市街地の全景が広がります。1982年にはハバナ旧市街とその要塞群として、ユネスコの世界遺産に登録されました。
【データ】
施設名:モロ要塞 Castillo de Los Tres Santos Reyes Magos del Morro
住所:Via Monumental y Carretera de la Cabaña, Habana
開館時間:9:30〜18:00
休み:無休
施設名:カバーニャ要塞 Fortaleza de San Carlos de la Cabaña
住所:Via Monumental y Carretera de la Cabaña, Habana
開館時間:10:00〜22:00
休み:無休
施設名:第一ゲバラ邸宅 Centro Cultural Casa del Che en la Cabaña
住所:Carretera de la Cabaña, Habana
開館時間:10:00〜18:00
休み:日曜日