初心者から本格的な愛好家までが楽しめる、ウィスキー&炭焼バー「ザ・ウォール(The Wall)」。Wall、英語で壁、という名前の由来は、歴史的な建造物でもある建物の、100年以上前から残るレンガの壁から。それをそのまま生かした、隠れ家的雰囲気溢れるお店です。場所はオフィス街からもほど近い、タンジョン・パガーエリアです。 一階は賑やかな雰囲気で、気軽にウィスキーを楽しみたいという方にぴったり。ピート香のあるスコッチウィスキーをこよなく愛する、バーマネージャーのジェレミー・タン(Jeremie Tan)さん、オペレーション・マネージャーのサマンサ・ホー(Samantha Ho)さんと話しながら、好みにあったウィスキー選びをすることもできます。 2階席に向かう階段の脇には、コレクターやマニア垂涎の、レアボトルが展示されています。「どれも値段のつけられない貴重なものばかり。多くのウィスキー好きの人に、貴重なボトルを見てもらいたい」とジェレミーさん。 落ち着いた雰囲気の2階席は、ゆったりとした革張りのソファーが並び、じっくりと話をしたい、というシチュエーションにも使えそう。オーナーはワインビジネスも行なっているそうで、2階席の奥のワインセラーの中には、 銘醸ワインがずらり。そして、そのワインセラーの中のドアを開けると、秘密の個室が登場します。(2階席は最低利用料金がありますので、興味のある方はお問い合わせください) ここの所シンガポールにも増えてきたウィスキーバーですが、このザ・ウォールは、ウィスキーに馴染みのない人にも、食事とともにウィスキーを楽しんでもらおう、という新しいコンセプト。一軒目からウィスキーバー、というチョイスが可能になりました。初心者でも気軽にウィスキーを楽しめる、ウィスキー・フライト・イースト・ミーツ・ウエスト(Whisky Flight East Meet West、S$37。内容は在庫によって変わる場合あり)は特におすすめ。 料理は、スモーキーな香りのウィスキーにも合う、備長炭による本格的な炭焼き。シェフは、オーチャードの会席料理、葵匠で、オープニングから3年間キャリアを重ねたというン・ウォエ・ルオー(Ng Woei Luoh)シェフです。串焼きは、このウィスキー・フライトセットとのペアリングになっていて、一緒にオーダーすると、通常S$23相当の串焼きセットが、S$12と半額以下で楽しめ、とってもお得です。 このウィスキー・フライトの、1杯目は、スコットランド・グラスゴー近郊の蒸留所で作られた、オーヘントッシャン・スリー・ウッド(Auchentoshan Three Wood)。蜂蜜や黒糖のような香りがあり、後味に森林の香りの余韻が残ります。こちらとのペアリングは炭焼きの手羽先、レモンを絞っていただきます。レモンの柑橘の香りがウィスキーの甘い香りを引き締める、ちょっとカクテル的な組み合わせ。2杯目は、珍しいフランス産のウィスキー、レ・モワッソン(Les Moissons)。麩や麦こがしのような、ローストした大麦のはっきりとした香りがあり、白い花やハーブを思わせる印象のオーガニックウィスキー。こちらには、鶏もも肉とわさび。あっさりと調味料は塩だけで仕上げ、わさびの香りと、ウィスキーのハーブの香りを重ねています。 3杯目は、日本が誇る山崎!日本人のせいか、一番ホッとする味です。熟成の際に、ボルドーワインの樽を使っているということで、そのせいかどこかコニャックを思わせるような、熟したぶどうのような甘い香りがあります。こちらには、鳥つくねを合わせて。軟骨の入ったコリコリした食感、甘辛味に卵黄をつけていただくと、豊かな甘い香りが、卵黄やみりんのコクのある甘さを増幅するような組み合わせです。そして、最後の一杯は、ネギマにあわせて。台湾のウィスキー、カヴァラン(Kavalan Single Malt)。マンゴーなど南国のフルーツを思わせる濃厚なフルーティーさ、甘い香りがあり、ネギのはっきりとした香味に負けない組み合わせとなっていました。 その他にも、各種ウィスキーが、1グラスS$14〜。宇宙でウィスキーの熟成をしたことでも知られる、アードベッグ(Ardbeg)社が、宇宙実験を記念して作った限定のウィスキー、ガリレオ(Galileo、1グラスS$90)など、ロマン溢れるウィスキーも楽しめます。 味噌ナチョス(S$8)白味噌やニンニク、生姜などを使った自家製の牛肉の肉味噌に、あっさりとした塩味のナチョスを添えて。 フグのみりん干し(S$25)甘辛味のフグを炭火で焼き、日本のマヨネーズに胡麻油や胡麻を混ぜ唐辛子をほんのり効かせたソースとともに。 味噌茄子(S$6)金山寺味噌を使って自家製で作った甘い味噌、桜味噌をベースに、鶏ひき肉を入れた甘辛味。茄子は、しっとりというより、表面を軽く焼いたような印象です。 ピーマン肉詰め(S$6)いわゆるピーマンにつくねの肉を詰めた、ピーマンの肉詰めですが、ピーマンと相まって、ゆずの香りが若干強調されているように感じ、よりさっぱりいただけます。 ホタテベーコン(S$9)北海道のホタテをカリッと表面を香ばしく焼いたベーコンで巻いた、定番の味わい。 デザートは、その時々で変わりますが、こちらは本物のわらび粉で作ったわらび餅(ウィスキーペアリング付きおまかせコース、S$168の一部として提供)。香ばしいきな粉と一緒にいただきます。 (写真は左から、ジェレミーさん、サマンサさん、ンシェフ)最近アジアでも人気が急上昇しているウィスキー。その価格もうなぎ登りだとか。希少なウィスキーも数多く所有していますが、ジェレミーさんは「ただコレクションして、値上がりを待って転売するというビジネスには疑問を抱いている。ウィスキーは、投機の対象ではなくて、それを愛する人たちのためのもの。ここには、値段のつけられないようなウィスキーも並んでいるけれども、そういった貴重な品を保管して展示する、ミュージアムのようなつもりでいる」のだといいます。高価だから置いてある、のではなく、心からウィスキーを愛しているからこそ大切に置いておきたい。そんな人たちの思いが詰まった、ビギナーから愛好家までが楽しめるウィスキーバーです。 <DATA>■ザ・ウォール(TheWall )営業時間:17:00〜25:00(月〜土曜)、日曜休住所:76 Tanjong Pagar Road Singapore 088497 電話: +65 6225 7988アクセス:MRTタンジョンパガー駅から徒歩5分URL:http://thewallsg.com/ 仲山 今日子元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイド。ブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。