![清道のワイントンネルでは柿を使ったワインを飲むことができる](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310160437693.8.jpg)
行列に並ぶ人たち。グラスにワインを注ぐスタッフ。韓国のワインブームも加熱しているなぁ、という意図の写真に見えるかもしれませんが、そうではありません。いえ、韓国のワイン人気は確かに拡大し、ずいぶんと裾野を広げていますけどね。そしてそれが前提にもなるのですが、ここで書きたい話はワイン人気から広がっていった韓国の地方におけるご当地ワインの話。しかも、ブドウで作るワインではなく、土地ごとの特産品で造るワインが増えていますよ、という話をしたいと思います。
![清道名産の柿。秋には至るところで実をつけた柿の木を見かける](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310170172499.9..jpg)
冒頭の行列写真は慶尚北道の清道(チョンド)で撮ったもの。清道といえば韓国でもよく知られた柿の名産地であり、先のスタッフが注いでいたのも、柿ワイン(韓国語ではカムワイン)です。それだけでもご当地モノとしては珍しさを語れますが……。
![ワイントンネルの内部。温度、湿度の安定した中でワインを貯蔵](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310180315819.1..jpg)
それをトンネルで貯蔵している、というところにもうひとつ面白さがあります。その名もワイントンネル……というのはストレートすぎるネーミングですが、実際にこのトンネルは鉄道用として実際に使われていたもの。ソウルと釜山を結ぶ京釜線の通るトンネルとして1904年に開通したのですが、やがて廃線となり、それを再利用したものです。トンネルの中は通年で温度と湿度が安定するため、ワインを貯蔵するのにはぴったりなのだとか。
![グラスワインと軽食のセット。トンネル内には座れる場所も用意](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310191061517..jpg)
トンネルの中ではワインの販売もしており、軽食をつまみながらグラスを傾けることもできます。甘口(レギュラー)と辛口(スペシャル)の2種類があって、辛口のほうがアルコール感が強く、どちらも酸味と甘味を強めに感じる白ワイン風。軽食として用意されているカムマルレンイ(切り干し柿)と合わせると柿同士でいい感じです。なお、トンネルの入口付近にも屋台が出ていて、カムマルレンイや、柿酢、柿エキスなどを販売しているので、ワインとともにこれらをお土産にしてもいいかもしれません。
![泗川のワインギャラリー。こちらも廃線になったトンネルを利用](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310194897105.9..jpg)
そしてまた違うトンネル。こちらは清道とは異なり、ワインギャラリーと呼ばれています。韓国の中南部、慶尚南道の泗川(サチョン)という地域にあって、ワインの貯蔵庫であるとともに、近隣で活躍する芸術家が作品を発表する場ともなっています。やはり慶尚道と全羅道を結ぶ、慶全線のトンネルとして使われていたものが、廃線になって再利用されました。
![トンネル内にはワインの入ったケースがずらりと並べられている](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310202887001.2..jpg)
ずらり並んでいるのはなんとキウイで造ったワイン(韓国語ではタレワイン)。泗川はキウイの名産地であり、韓国ではまだ珍しかった1975年よりいち早く栽培を開始しました。現在では日本にも輸出するほど。そんな泗川のキウイで造ったワインは、すっきりとした口あたりの白ワインという感じで、ほどよい酸味がキウイを思わせます。
![キウイワインにグラスとワインオープナーを添えた贈答用のセット](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310213399150.3..jpg)
ユニークなのはそのネーミング。写真のラベルには「7004S」とありますが、これ以外にも「4000」と「3004」があります(Sはスイートで、ほかにDがあってドライ)。4000は韓国語でサチョンと発音するのですが、地名の泗川と同音異義語なんですね。そこに引っ掛けて4000。また、泗川には三千浦という有名な漁港があり、これはサムチョンポと発音します。韓国語で3000はサムチョン。4は英語のフォー、を韓国語ではポーと発音するので(外来語のFはPで発音される)3004はサムチョンポー。ダジャレ風ではありますが、土地にちなんだ数字を銘柄にしているということです。そして、この2種類を合わせたのが7004で、4000と3004を足して7004(チルチョンポ)。
![リンゴワイン。リンゴ農家が自ら栽培したリンゴで造っている](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/1702131022307498.1..jpg)
韓国の中西部、忠清南道の礼山(イェサン)ではリンゴワインが造られています。こちらは蜂蜜を入れていることもあって、かなり甘口のアイスワイン風。金箔入りというおめでたい仕上がりになっているのも特徴的ですね。銘柄名は「秋史(チュサ)」といって、地元出身の有名な書道家の号から取ったそうですが、秋にとれる「サ」グァ(リンゴ)という意味もあるのだとか。
![リンゴブランデーはオーク樽の中で熟成。2010年より製造開始](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310232258653.7..jpg)
そしてもうひとつ、このワイナリーではアップルブランデーも造っています。リンゴワインの一部を蒸留し、オーク樽で熟成させたもの。
![リンゴワインを蒸留して造った姉妹品のアップルブランデー](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/img/17021310243081596.9..jpg)
香りのよい仕上がりで、アルコール度数40度とは思えないほどに口当たりが滑らかでした。ワインのほうは甘口だけあって女性人気が高いということですが、こちらは男女問わず、お酒の好きな方から評価を得ているそうです。ちなみにひとつ余談ですが、このワイナリーではリンゴのジャムも作っているのですが、これも絶品。立ち寄ることがありましたら、ワイン、ブランデーとともに買ってみてください。
【データ】
店名:ワイントンネル(와인터널)
住所:慶尚北道清道郡華陽邑松金キル85(松金里252-2)
住所:경상북도 청도군 화양읍 송금길 85(송금리 252-2)
Tel:054-371-1904
【データ】
店名:ワインギャラリー(와인갤러리)
住所:慶尚南道泗川市昆明面慶西大路3552(新興里93-3)
住所:경상남도 사천시 곤명면 경서대로 3552(신흥리 93-3)
Tel:055-854-5800
【データ】
店名:礼山サグァワイン(예산사과와인)
住所:忠清南道礼山郡古徳面大夢路107-38(大川里501-2)
住所:충청남도 예산군 고덕면 대몽로 107-38(대천리 501-2)
Tel:041-337-9584
![八田 靖史](https://www.studyabroad.co.jp/files/blog/tabiisara/writer/18.jpg)
八田 靖史
1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年より執筆活動を開始し、最近は講演や、企業のアドバイザー、グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品!ぶっちぎり108料理』(三五館)ほか多数。ウェブサイト「韓食生活」を運営。2015年より慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。