シンガポール発の世界遺産に認定されたボタニックガーデン内に1920年代に建設された、歴史的建造物でもあるガレージ。この度、気軽に使えるレストラン&カフェとして生まれ変わりました!建物の名前は、そのままザ・ガレージ(The Garage)。元々は近くにあったラッフルズ・カレッジの教授たちの車のガレージで、歴史的建造物のため名前の変更はできません。また同じ理由から、改築をするのがなかなか難しかったそうですが、構想から6年の歳月を経て、満を持してのオープンとなりました。
2階が今回ご紹介するモダン・ビストロスタイルのレストラン、ボタニコ・アット・ザ・ガレージ(Botanico at The Garage)。現在はディナーのみの営業となっていますが、これから徐々にランチ営業も始めて行くそうです。ちなみに1階はサービス料のかからないセルフサービススタイルのカジュアルなカフェ、ビーズニーズ・アット・ザ・ガレージ(Bee's Knees at The Garage)。サンドイッチやピザやパスタなどが楽しめます。
Botanico(ボタニコ)の名前は、ボタニック・ガーデンの「ボタニック」をスペイン語にしたもの。スペイン・マドリッド出身で、ミシュラン三ツ星を獲得した故サンティ・サンタマリア(Santi Santamaria)シェフや、モダンスパニッシュのロカ(Roca)兄弟の元で研鑽を積んだ、アントニオ・オヴィエド(Antonio Oviedo)シェフによる料理が楽しめます。
階段を上がり2階の建物に入ってみると、カジュアルでありながら、上品でシックなデザインに癒されます。そこここに配置された緑も、ボタニックガーデンらしい演出です。高い天井の梁のデザインは昔ながらの骨組みを生かしたもので、歴史を感じます。現在料理はアラカルトでの提供。「価格を控えめにするように」という政府の指示で、抑えた価格設定になっているのも魅力です。屋外にはテラス席もあり、開放的な空気を楽しめます。魅力的なメニューの数々をご紹介。
カクテルは、自家製のエルダーフラワーシロップを使ったジントニック。グレープフルーツの入ったすっきりとした味わいは、食事のスタートにもぴったりです。
スペイン・バスク地方の羊のナチュラルチーズ、イディアサバルチーズをスモークに牛乳を加えたベシャメルソースのコロッケ。上にはほのかに辛味のあるチョリソーのスライスが乗っています。スモークの香りがあり、どこか酒粕のような旨味のある、ミルキーで濃厚なチーズに、サクッと揚がった衣の香ばしさ、チョリソーの野生的な旨味がさらにそれを後押しします。
小さなイカをフライにして、ガーックマヨネーズに海藻、ごま油を加えたアイオリソースを添えたもの。天ぷら粉を使うことで、さっくり軽やかに仕上げています。ビールやカクテルなどのおつまみにも良さそうです。
キャメロンハイランド産の伝統品種のトマトに、ブッラータチーズ、ピクルスにしたビートルートやラディッシュ、きゅうり、季節のフルーツ(今回は桃)をオリーブオイルのドレッシングで和えたシンプルなサラダ。トマトの自然な甘みを中心に据え、その味を最大限引き出す組み合わせが考えられています。
日本産の新鮮なイワシを自家製スモークにして、チョリソーや巨峰、みりんと醤油に漬け込んでから、オーブンで焼き上げてセミドライ状態にした南スペイン産のミニトマト、クルトンをイベリコ豚の脂で揚げたMigasというサクサクしたものを合わせて。甘みと旨味たっぷりのトマトに、チョリソーなどの豚の脂、そしてイワシ。新鮮な海の幸に寄り添う様々な旨味が持ち味の一皿。最後に、アーモンドとにんにく、オリーブオイルで作ったまろやかなソースをかけていただきます。焼いた魚の角を、このソースの丸みが包んでくれるような印象の一皿。時期によってイワシはアジになるときもあるそうです。
なかなか見ない、珍しい仔羊の生肉を使ったタルタル。上質な仔羊のヒレ肉を使い、上には揚げたケイパーと、マスタードのアイスクリームが載っています。ピリリと辛いナスターチウムの葉、ペコロスのピクルス、スモークしたオリーブオイル、コクを加える卵黄のクリームなどがアクセントに散らされています。生の羊肉を食べるのは初めてでしたが、後味にほのかな羊らしい草の香りが残るものの、とても上品で臭みがありません。この日とても気に入った品のひとつです。
超高温で一気に焼き上げる炭火のオーブン、インカオーブンで焼いたスペイン産の赤海老、カラビネーロ。深海に住む海老で、その甘みは絶品。身の部分は香り高いサフランのアイオリソースを添えて提供されますが、頭などそのまま食べない部分はビスクスープにして、そこに米を入れて作ったリゾットとともにいただきます。リゾットには、豚足を柔らかく煮込んで作ったテリーヌを乾燥させて、表面をカリカリに、内側にゼラチン質の食感を残すように揚げたものを散らしてあります。
日本産のホタテの貝柱の表面を軽く焼き、菊芋のピュレとチップスで仕上げ、イベリコ豚のラードと海水のような独特のミネラル感を感じるシーアスパラガスで仕上げています。素直な味わいのホタテを、菊芋などの個性あふれる素材と組み合わせることで、その自然な甘みを引き立てています。
ミディアムレアにフライパンで仕上げたフランス産の鳩の胸肉、低温調理したモモ肉、パースニップと焦がしバターのピュレ、ソテー、スモークしたくるみなどを合わせた一皿。鳩の骨と赤ワインで作ったソースを添えて。パースニップの梨を思わせるようなどこか甘い香りが鳩によく合います。
ボタニスト(植物学者)という名前通り、緑の香りを十分に生かした料理で、シグネチャーカクテルのジントニックをデザートにアレンジした料理。きゅうりのソルベ、青リンゴ、グラニースミスをジンとジュニパーベリーに漬け込んだもの、ココナッツのフォーム、ココナッツサブレ、カフィライムの香りをつけたもの。森林浴しているような、緑の強いインパクトを感じるデザートです。
もともと、スペイン料理店のウナ(UNA)、ビノミオ(Binomio)で働き、シンガポール在住歴14年というAntonioシェフですが、シンガポールに来て一番驚いたというのがラクサリーフの味わい。そして、このエリアはもともと、ナツメグやジャックフルーツなどの農園があった場所。そんな歴史に思いを馳せた一皿です。ラクサリーフのアイスクリームに、ホワイトチョコレートとターメリックのガナッシュ、シーココナッツ、ジャックフルーツ、ロンガンなど、その名の通り、南国シンガポールだからこそ食べられるフルーツがたっぷり入っています。
今後はディナー営業の日数も増やしていく予定ということで、営業時間など詳しくは、公式ウェブサイト http://www.thegarage.sg/ をご覧くださいね。
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■Botanico at The Garage(ボタニコ・アット・ザ・ガレージ)
営業時間:ランチ(今後開始予定)、ディナー 18:00〜22:00、(水曜〜日曜)
住所:50 Cluny Park Road Singapore Botanic Gardens, Singapore 257488(Cluny Park gate を入ってすぐ)
電話:+65 6264 7978
アクセス:MRTボタニックガーデン駅徒歩7分
仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイド。ブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。