オーストラリア最大の都市、シドニー。ハーバーブリッジが架かり、世界遺産にも登録されているユニークな形のオペラハウスもあるシドニーは、行政機関の建物も集まるニューサウスウェールズ州の州都。ニューサウスウェールズ州の州議事堂もここシドニーに位置しています。
1816年に完成した州議事堂。もともとは「病院」として建てられた3つの建物のうちの1つ。ユニークなのは、この建物の建設資金の調達方法。これらの建物の建設資金を得る為に、州総督は建設業者に当時規制が厳しかった「ラム酒の輸入販売権利」を与えたそう。ラム酒の恩恵で完成した州議事堂と病院。その為、州議事堂の隣に位置するシドニー病院は、別名「ラム病院」とも呼ばれています。
一般の方でも気軽に内部を見学することができる州議事堂。シックな内装の玄関ホールに行く途中にまず目に入るのは、議会メンバーの集合写真。議員みんなが会議室内で振り返りざまに笑顔、という「議会」という堅苦しそうなイメージを全く感じさせない一枚に、まずは日本とは違う"オーストラリアらしさ"を感じずにはいられません。
そんな集合写真の隣には、ズラリと並ぶ歴代議長の写真たち。歴史を感じさせるモーツァルトのような中世を思わせる巻き髪から、スーツで決めた近年のものまで並んでいます。この写真たちをよくよく見てみると、巻き髪の流行はとうに過ぎたと思われる20世紀後半の議長たちも巻き髪。一歩間違えたら、仮装パーティー!?と言わんばかりのレベルの明らかなカツラを着用。
議事堂の職員さんに巻き髪カツラについて質問してみたところ、"被るか否かは議長の好み"とのこと。イギリス議会の流れを組むオーストラリアの政治。巻き髪はかつてのイギリスの議会で議長の象徴だったらしく、「伝統を大切にしたい」という議長は巻き髪カツラを着用して、「巻き髪は好みではない」という議長は着用せずに写真を撮影しているそうです。
建物の中庭には噴水が設置され、それを囲むように建物内にはニューサウスウェールズ州に関連したアート作品が壁に展示されています。アートギャラリーのような要素も兼ね備えるこの議事堂内には、一般の方々も利用できるカフェも併設。カフェ内ではお土産にぴったりなオリジナルグッズも販売されており、ニューサウスウェールズ州の紋章や、州花であるテロペアがデザインされたステーショナリーやワインまで揃っています。
そんなニューサウスウェールズ州の議会は、上院(元老院)と下院(代議院)で構成されている二院制。赤と茶色のエレガントな内装が印象的な元老院の会議場は、もともとスコットランドで組み立てた建物を船で運び、利用しているそう。会議場の隣には、会議室同様にエレガントな内装のラウンジもあります。
この議事堂内でのおススメは、1905年に造られた「ジュビリールーム」と呼ばれる議事堂図書室。上を見上げてみれば、天井にはローマ神話に登場する知恵や芸術の女神ミネルバとを中心に、植物のエンブレムも描かれた美しいステンドグラスも。この植物のエンブレムは、イギリスの各地域の象徴。イングランドのバラ、スコットランドのアザミ、アイルランドのクローバーと、ここにもイギリスの影響が見受けられます。
1980年代以降、図書室としての機能は別の建物に移されていますが、このクラシカルで雰囲気のある図書室は現在も主にファンクションルームとして利用されています。
ユニークな歴史を持ち、建物内部にも各所に見どころがあるニューサウスウェールズ州議事堂。個人での見学は予約も不要なので、シドニーを訪れた際は気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。
【データ】
・名称:ニューサウスウェールズ州議事堂 (Parliament of NSW)
・住所:Macquarie Street Sydney NSW
・TEL:02‐9230‐3444
・URL:https://www.parliament.nsw.gov.au/Pages/home.aspx
・営業時間:月‐金曜日 9:00 am 〜 5:00 pm ※クリスマス休暇期間、議会開催日時を除く