地球の温暖化の影響でしょうか、夏場の気温が年々、上昇しているように感じられます。汗にまみれる生活から抜け出して、高原などの涼しいところに出かけたくなります。南米大陸の肥沃な湿潤パンパに発展したコルドバは、アルゼンチンの人々が保養地として訪れる街です。
コルドバはブエノスアイレスから西北西に約700キロに位置します。長距離バスでは最も速い便でも8時間はかかってしまいますが、飛行機を利用すれば1時間半足らずのアクセスです。コルドバは1000万人を超える人々が集中するブエノスアイレスの首都圏に次ぐ第二の都市ですが、人口は百数十万で静かで落ち着いた雰囲気に包まれています。
コルドバの市街地はサン・マルティン広場を中心に形作られています。広場の北西には18世紀に市の政治を担う市議会、カビルドが建築されました。白壁にアーチ状の門が整列するシンプルな外観に安定感が感じとることができます。現在は歴史博物館として公開されています。
カビルドの南には柔らかなクリーム色の外壁をもつカテドラルが見えます。1784年に左右に2つの塔を備えるバロック様式で建造されました。
サン・マルティン広場から南西エリアのマンサナ・へスイティカスには、17世紀から18世紀にかけてスペインから訪れたイエズス会がキリスト教の布教のための施設を次々に建設しました。カテドラルから各々1ブロック南西の角にはラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会が建造されています。正面の壁に四角い穴が数多く設けられていることが、とてもユニークです。バロック様式による質素な外観をもちますが、聖堂の中は鮮やかな色彩で彩られます。主祭壇の下壇にはイグナチウス・ロヨラやフランシスコ・ザビエルの像が見られます。イエズス会は1640年前後から、この教会を中心にしてキリスト教を広めたのです。
教会の他にもイエズス会は学校の建設も積極的に行いました。ラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会の南には、1613年にアルゼンチンで最も古い大学が建てられました。現在は国立コルドバ大学のキャンパスとなっています。
大学に南接するのは国立モンセラート中等学校です。1687年に開校した当時の姿で残されています。1907年には大学の付属中学校となり、時代を超えた学び舎となっています。イエズス会地区のマンサナ・へスイティカスは、時計が数百年止まったような空間です。
サン・マルティン広場の南にはノスタルジックな景観が広がる一方で、北側は近代的なショッピング・エリアとなっています。歩行者専用道路の7月9日通りや、5月25日通りの両側は様々なショップやカフェが並んでいます。さらに郊外には、イエズス会が整備した集落のエスタンシアが5つ残されています。教会を中心として人里を広大な農園が囲んでいるのです。
コルドバの市街や郊外には、異なる時代に生きた人々の息遣いが残されているのです。2000年には「コルドバのイエズス会伝道所とエスタンシア群」としてユネスコの世界遺産に登録されました。
【データ】
施設名：カテドラル Catedral de Córdoba
住所：Plaza San Martin, Independencia 64, Córdoba
Tel：54 351 422-3446
URL：http://www.catedraldecordoba.org.ar/
大林 等
メーカ勤務の出張とプライベート旅行で渡航した国の数は49になります。各国での 異文化体験は数知れません。カルチャーショックを起爆剤に、各国の歴史や文化に 深く切り込むスタンスを崩すことなく持ち続けています。観光情報から社会、習 慣、宗教、グルメ、アート、民族芸能まで、ジャンルの垣根を超えた海外での経験 を、各種の雑誌やWebサイトなどで発信し続けています。
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