ロンドン北東のウォルサムストウには、英国のデザインを改革したウィリアム・モリスが子供時代から青年期までを過ごした家があります。詩人や実業家としても成功し後年は社会主義運動に情熱を傾けたモリスですが、特にテキスタイルや家具などインテリア・デザイン分野での功績が有名です。 1834年に生まれたウィリアム・モリス。父親は金融街シティで証券ブローカーとして財を成したので、裕福な家庭に育ちました。若い頃は聖職をめざしてオックスフォード大学へ進学しましたが、友人とのフランス旅行などを経て次第に芸術家としての道を歩むようになったそうです。 モリスが過ごしたヴィクトリア時代というのは、産業革命ののち工場で大量生産されたチープな製品が溢れるようになった頃。そんな現状を嘆いて、暮らしの中にも芸術的なセンスや職人による工芸品を!と「アーツ・アンド・クラフツ運動」を提唱し、またモリスみずから実践していきます。 ギャラリーではモリスの生涯と、彼の遺した功績を辿る事ができます。上の画像で額縁に収まっているのは、28歳のとき初めてデザインした壁紙の下書き。その周りに見えるのが、製品として完成した壁紙です。 中には当時、テキスタイルの印刷に使われた原板なども。その説明書きには「触っても大丈夫ですが、古いため今では実際の印刷には使えません」とありました。 手工芸の美しさを尊んでいたモリスの営む会社では、完成品だけでなく、刺繍用に下絵が印刷された布なども販売。その下地を使って刺繍をほどこしたクッション・カバー等も見られます。 他にも家具や教会のステンドグラス、また出版社を興して著作や書籍デザインも手掛けたり・・・更にマルクス主義に始まり社会主義運動に傾倒していった、情熱と行動の人。惜しくも62歳で世を去りましたが、今も英国で愛され尊敬されているウィリアム・モリス。 館内には天窓からの自然光が明るいカフェや、モリスがデザインした柄があしらわれたグッズを販売するショップも併設。英国モダン・デザインの父と慕われているモリスの足跡を追って、訪ねてみたいギャラリーです。【データ】ウィリアム・モリス・ギャラリー(William Morris Gallery)住所:Lloyd Park, Forest Road, Walthamstow, London E17 4PPTel:020-8496-4390URL:http://www.wmgallery.org.uk/水〜日 午前10時〜午後5時(月・火は閉館)入場無料 小野 雅子ロンドン西郊外に住む会社員、職場はヒースロー空港周辺です。在英20年以上の経験値を発揮して、初めてイギリスへいらっしゃる方にも興味深く分かりやすいロンドン観光&生活ガイドとしてお役に立てれば…と思います。個人ブログ「ロンパラ!」はこちら♪