
個人によって美意識は異なりますが、富士山の姿には全ての日本人が美しいと感じるものでしょう。文学作品をはじめ絵画、版画などの様式で描写されました。ベルギーの首都ブリュッセルのグラン・プラスは、名高い文豪たちが各々の形容をしています。ヴィクトール・ユーゴーは世界で最も美しい広場、ジャン・コクトーは豊饒なる劇場と表現しました。著名人の言葉を借りるまでもなく、グラン・プラスの空間に入れば誰もが思わず息をのんでしまうに違いありません。

グラン・プラスは、縦横約110メートル、70メートルの広場です。聖ニコラス教会とはオー・ブール通り、小便小僧の像とはエチューブ通り、シャルル・ビュル通りで繋がっています。整然と石が敷き詰められた方形の空間は、威厳に満ち溢れた建築物が取り囲まれています。足を踏み入れると数百年、時を遡ったような錯覚に襲われます。



広場の南面を作るトレーサリーは、ブリュッセル市民の生活を支える市庁舎の狭間飾りです。直線と曲線が絶妙のバランスで流れるような幾何学模様を作り上げています。フランスの後期ゴシック調のフランボワイヤン様式の建物は1402年、ヤコブ・ファン・ティエネンによって左翼とライオンの階段の建設から始まりました。1444年にはギヨーム・ド・ヴォーゲルが右翼は増築を行います。さらに1455年にヤン・ファン・ルイスブロエクが中央に、ヨーロッパ随一の高さを誇る96メートルの尖塔を築き外観を整えました。



市庁舎に向き合うように広場の北面に建つのが王の家です。12世紀にパン市場が開設されたところに15世紀、ブラバン公の行政庁が置かれたのです。16世紀になるとスペイン王カール5世が後期ゴシック様式の館を築いたため、王の家と呼ばれるようになりましたが王様が住んだことはありません。当時の建物は1695年にルイ14世による砲撃を受け焼失しましたが、1895年に復元され現在は市立博物館として公開されています。

グラン・プラスを囲む市庁舎以外の建造物の大半は火災の被害を受けたのですが、1882年に東面にコロサルという建築様式を用いた館が建設されました。同業者組合の集まる6棟のギルドハウスが一つにまとめられたのです。中段に施された金箔模様からは眩い輝きが放たれます。正面には歴代ブラバン公の胸像が並んでいるため、ブラバン公爵の館と呼ばれています。1階と地下にはレストランが入り、上階はホテルとなっています。

グラン・プラスを囲む四面で最も変化に富んでいるのが西面です。数々のギルドハウスの建物が各々の個性を滲ませながら壁画を作っているようです。壁面を飾る包丁や樽、手押し車などの紋章で、個々のギルドを探り当てることができます。ハウスの前に立っていると、商人や職人たちの活気に満ちた声が聞こえてくるかのようです。

360度のパノラマから中世ヨーロッパの風情が染み出すグラン・プラスは、1998年にユネスコの世界遺産に登録されました。


【データ】
施設名:ブリュッセル市立博物館〈王の家〉 Musée de la Ville de Bruxelles (Maison du Roi)
住所:Grand-Place - 1000 Bruxelles
Tel:02-279-4350
URL:http://www.brussels.be/artdet.cfm/4202
開館時間:火〜日曜日10:00〜17:00
休み:月曜日,1/1,5/1,11/1,11/11,12/25