世界一豪華なニューヨークカフェ カフェ文化といえばウィーンが有名ですが、お隣ハンガリーの首都、ブダペストも豪華絢爛、まるで美術館のようなカフェが存在します。「ニューヨークカフェ」という名前だけ聞くと、てっきりモダンなカフェを想像しがちですが、一歩足を踏み入れると、そこにはバロック様式の装飾が見事な天井やシャンデリアが広がり、壮麗さに圧倒された多くの観光客で賑わっています。 店内は段差のある造りで、中2階のスペースでは生演奏が流れエレガント。席間が狭いのは残念ですが、この空間に座っていられるだけで、夢見心地のお姫様気分に浸れるのは貴重な体験です。混雑時には長い行列で20~30分の待ち時間は必須なのですが、ひとりだと早めに席に案内してもらえる場合もあり、たとえ時間がなくても見物に行くだけでも興奮度が高く、スタッフもフレンドリーなサービスで迎えてくれるので気おくれすることはありません。 アジア系の観光客も多く、正直カフェでゆっくり過ごすというよりは観光の意味合いで出かけたほうが、しっくりくるかもしれません。ただ、このゴージャスさの割には価格も驚くほど高くはないのがうれしいですね。お食事やスイーツも充実していてランチや夕食で、このカフェを利用するのもいいし、アフタヌーンティーなどのメニューも時間が許せばオーダーしたくなるほどクオリティーが高くて驚きです。 ブダペストも他のヨーロッパ諸国同様、やはりコーヒーの文化が主流ですが紅茶派の私はリサーチも含め、紅茶をオーダーしてみました。たとえ高級ホテルでもティーバッグと白湯をポットサービスというパターンが多く、特徴的なのは頼んでもいないのに、もれなくフレッシュレモンがついてくる。中欧での紅茶のいただき方はレモンとお砂糖をいれるスタイルがスタンダードなようで古き良き日本の昭和の紅茶事情と重なります。ティーバッグはスリランカのディルマのイングリッシュブレックファースト。甘すぎるスイーツには濃いめの紅茶で砂糖もレモンもなしのストレートでいただくほうが私は美味しくいただけるような気がします。 1894年の創業以来、作家や芸術家の社交の場として繁栄した、このカフェは資本が変わったり改装などを経てはいるものの当時の華やかな場面をイメージするには充分すぎて「宮殿」と称されても言い過ぎではありません。朝早くから深夜までの営業時間はスケジュールに組み込みやすく、このカフェは一度は訪れてみたい、もはやブダペストの名所のひとつです。 シシィが愛した老舗カフェジェルボー 1858年創業のカフェジェルボーは街の中心広場の威風堂々の建物の1階にあり名実共にブダペストを代表するカフェ。2009年東京青山に海外初出店している知名度も手伝い、日本人観光客にも有名です。団体客ツアーの定番は地下の個室に通されることもあり、それはこのカフェの雰囲気が充分味わえないので、ぜひ個別に訪れてみたいものです。割と地味目なエントランスですが一歩中に足を踏み入れると、そこはタイムスリップした中世ヨーロッパの世界観が広がります。 地元の人たちにも愛されるジェルボーは、その昔「シシィ」の愛称で親しまれハンガリーの地をこよなく愛した、かのエリザベート王妃もお気に入りだったと伝え聞くカフェ。1997年に改装されていますが当時の風格をそのままに、優雅な雰囲気が漂い老舗ならではの味わいです。 ロココ様式のシャンデリアや天井も美しく、どのお席にしようか?店内は広くてゆったり過ごせる雰囲気もポイントが高く、疲れた身体を休めるのにはぴったりの場所です。 シシィがこのカフェでよく注文していたといわれているケーキはドブシェトルテという説が有力ですが、地元では彼女はエステルハージ・トルタも好きだったということで後者を選択しました。紅茶はウィーンの高級食材店の紅茶のティーバッグ。くし型レモンもお約束どおりで、思わず笑みがこぼれてしまい、ご当地のおすすめどおり甘いケーキにレモンティーもなかなかのお味でした。もちろん、このカフェおすすめのコーヒーをセレクトするほうが無難だと思いますが・・。 その昔、作曲家リストをはじめとして、著名人たちがこのカフェに集い、音楽や芸術について語りあったたのでしょう。そんなハンガリーの歴史とドナウの国のロマンチズムは、すっかり冷めてしまった紅茶でさえ、懐かしい思いで飲み干してしまい、美味しいと感じてしまうから不思議です。 老舗なのに最近は素朴なハンガリー風ケーキだけではなく、ラブリーなフレンチスタイルのスイーツも豊富にそろっていて、心躍ってしまいます。 歴史あるカフェの再生、カフェツェントラルは地味にスゴイ! ツェントラル・カーヴェーハーズは1887年創業の老舗ですが、戦争という歴史を経て閉店していた時代もあり、2000年に復活した地元民にも親しまれているカフェです。朝早くから深夜までオープンしているので利用しやすく開店同時に入店してみました。 実は深夜にも通りかかったのですが、ひとりでお酒をたしなむならまだしも、紅茶とスイーツを楽しむ雰囲気ではなく、時間を変えての再訪でした。「朝カフェ」は店内の撮影にも気をつかわなくていいし、すいていてどこに座ってもOKで、貸切感覚も味わえます。同じカフェでも時間により表情が変わり、まったく違ったカフェに見えてしまうのも魅力のひとつでしょう。 歴史あるカフェですが、こちらもリニューアルされた店内はセンスよく居心地がいい空間で、オープンと同時に朝カフェを楽しむ地元民がやってきては朝刊を広げて読む光景は憩の場として定着しているブダペストのカフェ文化の深さも感じます。色彩豊かで小ぶりなスイーツがたくさん並びショーウィンドーが華やかなのも人気の秘密かもしれません。 夜遅くまで営業していてお酒や食事のメニューも充実しているのでカウンター席も常連客で賑わっていました。このカフェのハンガリー名物グヤーシュを食べそこない、悔いが残り今度は勇気を出して「おひとりさま夜カフェ」に出かけてみようと思いました。 今回は3軒を紹介しましたが、どこも今の時代に歴史を感じる美しいインテリアに、お味も確かな有名カフェ。異国の地で旅の疲れを癒しに立ち寄ってみてはいかがでしょうか?【データ】店名:ニューヨークカフェ住所: Erzsebet krt.9, 1073 BudapestTel:(0)1 8866 167営業時間:9:00~24:00URL:http://www.newyorkcafe.hu/店名:ジェルボー住所:1051 budapest vörösmarty tér 7-8Tel:(0)1 429 9000営業時間:9:00〜21:00URL:http://www.gerbeaud.hu/店名:ツェントラル・カーヴェーハーズ住所:Károlyi utca 9., Budapest 1053Tel: 1 266 2110営業時間:9:00 - 23:00URL:http://www.centralkavehaz.hu 坂井 みさき1976年に渡米以来、趣味は海外旅行。訪問国は現在43ヵ国。出版社勤務時代の海外取材経験を活かし「世界のTEAを巡る旅」を続け、都内で「紅茶の船旅」をテーマとした「紅茶でおもてなし教室・TEA MIE」を主宰。 著書に『パパがジュゴンに恋をした』立風書房刊。*ミンミンゼミブログ *TEA MIE紅茶でおもてなし教室