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世界でここだけ! インフューズドクラフトビールバー「アルケミスト」

   
仲山 今日子
仲山 今日子
 
フランシスさん(写真左)とバーナビーさん(同右)

シンガポールに去年オープンしたばかりのクラフトビールブルワリー(醸造所)が、新しいビールの楽しみ方を提案するためにオープンしたのが、「インフューズド・ビア」と呼ばれる、果物やスパイスなどを漬け込んだビールがメインのお店、「アルケミスト・ビア・ラボ」。「インフューズドビールを置いている店は少しずつ出てきているけれど、これだけのラインナップをそろえているのは、世界でもうちだけ」と、創業者のフランシス・クー(Francis Khoo)さんは胸を張ります。製造担当のイギリス出身のバーナビー・マードック(Barnaby Murdoch)さんと共に、常時5種類の自家製クラフトビールと、4種類のインフューズドビールをそろえています。先月オープンしたばかりですが、インフューズドビールのフレーバーは、常に新しいものに変わっていっているそうで、いつ来ても新しい味わいが楽しめそう。

フルーツ、ハーブ、スパイスからなんとマシュマロまで漬け込む

フランシスさんは、銀行員を辞めて、シンガポールでおいしいビールを作りたいとビール醸造所を作り、シンガポールではフルーティな、甘くて飲みやすい味が好まれるという事で、考え出したのが、自身の醸造所で造ったクラフトビールに、果物やハーブ、ホップ、マシュマロなど、様々なもの漬け込んだインフューズドビールを提供するこのスタイルだったとか。ラム酒などのリカー類に果物やスパイスを漬け込むのは聞いたことがありましたが、発泡性のあるビール、泡を逃さず、しっかりと漬け込む素材の味をビールに移すにはどうしたらよいのか。その答えは、インフュージョンタワーと呼ばれる、アメリカ製の機械。

醸造システムを説明するフランシスさん

元々のアイデアは、ビールの製造工程の一つで、「ホップ・バック(Hop Back)」と呼ばれる製法。加熱して煮だしたホップではなく、ドライにしたホップをそのまま漬け込むことで、フレッシュな味わいを引き出すという手法。それを、果物やスパイス、ハーブに応用しました。バーナビーさんが、作り方を見せてくれました。まずは、果物などの漬け込み材料を切り、このタワーに入れていきます。「ビールと同じタイプの味を重ねるか、逆に正反対の印象の味を組み合わせるか」がペアリングのコツなのだとか。タワーの中心には、グライコール(Glycol)と呼ばれる冷却成分が入った金属の管があり、ビールを2〜4度に冷やすことで、泡が逃げるのを防ぎ、さらにその中心にある管から、酸化防止のために上部の空間に充填する二酸化炭素が出てくる二重構造になっていて、ビールのフレッシュさをそのまま保てるようになっています。

「しっかり密封するのが大切」とバーナビーさん

果物などを入れた後は、ビールを入れていきます。機械の下にあるチューブが奥の冷蔵室とつながっていて、2〜4度にしっかりと冷やされたビールが、チューブを伝って送られます。ビールには酸素に触れると酸化するため、二酸化炭素と窒素ガスを混ぜたものを送り込むことで、ビールがタワーに充填される仕組みです。この二酸化炭素と窒素ガスのバランスにも秘密が。スタウトはクリーミーな印象を与えるために、窒素ガスを75%、二酸化炭素が75%に配分されているそう。その理由は、窒素ガスはビールに溶けるのに4〜5日かかるのに対して、二酸化炭素は数時間で溶けて、炭酸となるため。まろやかな炭酸を味わうために、窒素ガスを多めに配分しています。逆に、ゴールデンエールには窒素ガスを40%。ラガーには25%という配分にしているのだとか。

しっかり冷却し、ビールを送り込む際のガスのおかげで、ビールの炭酸も抜けることなく、上に入った二酸化炭素のおかげで、酸化も防げる。それが、このインフューズドビールがビールらしいフレッシュな味わいを保てる秘訣なのだとか。3リットル入りのタワーですが、ビールが足りなくなったら足していき、大体3回転、9リットルほど醸造してから、新しい素材を入れ、新しい味のインフューズドビールを造るのだとか。4種類のインフューズドビール、この日は左から、ブロンドラガーベースが3種類、スタウトが一種類。

インフューズド・ビールのテイスティングセット(S$35)も

まず、私が試したのは、モサンビと呼ばれる、ライムとオレンジの間のような味わいのフルーツに、中国の干し梅を加えたブロンドラガー。ほのかな塩気と、すっきりとしたかんきつの香りがよく合います。暑いシンガポールでのどが渇いたときに、こんなビールで一杯目、というのもよさそう。モサンビは蒸して、繊維の部分から出る苦みを抑えるようにしているのだとか。パイナップルとスターアニスは、南国らしい甘い香りが特徴。干し梅もそうですが、アジアのフレーバーを取り入れることも意識しているのだとか。ホップは、モヒートのようなかんきつ類の香りと、ミントのようなシャープさを持つNZモトゥエカ(Mutueka)産のもの。コリアンダーやオレンジピールのような甘い香りがありつつも、味わいにはボディーとホップの苦みがしっかりとある魅力的な飲み口。スタウトは、黒ビールならではのキャラメルのような香りを強調するためにこんがりと表面をトーストしたマシュマロ、バニラ、そして、全体をすっきりとまとめるミントの組み合わせ。

左が漬け込む前のサイダー、右が苺を漬け込んだ後のサイダー

常時4種類のインフューズドビールがある他、苦みが少なく、飲みやすい3種類のインフューズドサイダー(発泡性のリンゴ酒)もあります。甘酸っぱいグアバ、パッションフルーツとオレンジ、バジルのすがすがしい香りが苺の甘味を引き立てる、バジル&ストロベリーなど、フルーティーで飲みやすく、苦いアルコールが苦手という方にもぴったり。

幅広いクラフトビールの品ぞろえ。ワインも赤と白がある

ベースとなっているクラフトビールもAsia Beer Award 2016で金賞を受賞したスタウトビール(黒ビール)など、味にこだわったものばかり。 フランシスさんが同じくオーナーで、シンガポール島内で醸造しているリトル・アイランド・ブルーイング(Little Island Brewing)から出来立てが届きます。漬け込む前と漬け込んだ後の飲み比べも楽しいです。

中東風ひよこ豆のコロッケ、ファラフェル(S$15)

MRTエスプラネード駅直結、最近オープンしたおしゃれな複合施設、South Beach内にあり、天井が高く、解放感も抜群。ここでしか飲めないオリジナルクラフトビールを使ったインフューズドビールを楽しんでみませんか?ちなみに、平日はお昼から営業、アルコール度も6%弱と控えめなので、お昼に軽く飲みたいというシチュエーションにもぴったりです。金額は、午後7時までがS$12、それ以降がS$15。インフューズド・ビールもそうでないものも同じ料金ですが、インフューズド・ビールのグラスは330mlと、通常のグラス(470ml)に比べて小さくなっています。ビールにぴったりのチーズがとろけるサンドイッチや、ひよこ豆のコロッケなど、軽食もそろっています。ぜひ、気軽に訪れてみてくださいね!

スタイリッシュな内装も魅力

【データ】
■ ザ・アルケミスト・ビア・ラボ(The Alchemist Beer Lab)
営業時間:12:00〜24:00(月曜〜木曜)、〜26:00(金曜)、16:00〜24:00(土曜)
住所:26 Beach Road #B1-16 The South Beach, Singapore 189768
電話: +65 6543 9100
定休日:日曜
最寄駅:MRTエスプラネード駅直結

仲山 今日子

仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイドブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。

    

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