2011年3月11日、東日本大震災のときの東北地方沿岸のテレビ映像は衝撃的なものでした。怒涛のように押し寄せる波が次々に町を飲み込む様子に、いたたまれない思いを抱かずにはおれませんでした。震災後は海岸から離れた高台に新しい町が作られつつあります。東北地方の海岸線からは建物が消えようとしていますが、海抜0メートル以下の土地で暮らす人もいます。オランダの国土は4分の1が海面より低いということには驚かされます。
首都アムステルダムの平均海抜は2メートルで、度重なる水害に悩まされていました。アイ湾に流れ込むアムステル川を13世紀中頃に、ダムで堰き止め海水の侵入を防ぐことに成功しました。小さな漁村でしかなかったアムステルダムは飛躍的に発展し、16世紀には海運貿易の拠点としてヨーロッパ屈指の大都市になったのです。
アムステルダムを訪ねた人が最初に目にするのは中央駅でしょう。ヨーロッパ各国からの電車が発着する他、スキポール空港からも約15分のアクセスです。駅舎はネオゴシックとネオルネサンスを融合させた様式によって1889年に建造されました。ホームは大小3つのドーム状の屋根トレイン・シェッドで覆われています。格子状の窓の外に見える海が、アムステル川河口のアイ湾に土を盛った人口島に、駅舎が作られたことを証明してくれます。
中央駅からは市街地を網の目を縫うようにトラムが走っています。白地に青のストライプの車両に乗ればどこにでも行くことができます。市内の道路は幅が狭いところが多く、車と接するように走ります。路上ではトラムと車がつかず離れずの距離で行き交いますが、街中に張り巡らされた水路をボートで移動すると旅情が湧いてくるものです。
アムステルダムは海沿いの中央駅を中心として、コンパスが円弧を描くように水路が掘られているのです。渋滞に巻き込まれることのない水上バスは市民の貴重な足となっています。中央駅北側の埠頭を起点として観光用の運河のクルーズ船を運航しています。最も手軽なのは乗船時間1時間あまりのショート・トリップでしょう。他にもディナー・クルーズ、キャンドル・ライト・クルーズなどの飲食つきのコース、シンゲル運河の南にある国立ミュージアムをはじめ数館の博物館を繋ぐミュージアム・ボートなどもあります。
扇の中心から運河に漕ぎ出せば、水上から左右にアムステルダムの街並を見ることができます。運河沿いに立ち並ぶ倉庫や事務所、民家を正面から眺めると、どの建物も間口が狭いことに気づきます。運河に面して建物を建てる場合は、間口の長さによって税金の額が定められていたので、玄関を小さくしたのです。その代わりに奥行きを長くしてスペースを確保したのです。
複数の水路が出会うポイントや道路を横切るところには、石造りのアーチ橋、跳ね橋、回転する橋などが設けられ、運河沿いの建物とともに豊かな景観を作り上げています。
シンゲル運河、プリンセン運河、カイゼル運河、ヘレン運河など、アムステルダムのシンゲル運河の内側にある17世紀の環状運河地域は、2010年に世界遺産に登録されました。
【データ】
クルーズ船運航会社：Rederij Lovers
住所：B.V./Van Gogh Cafe, Prins Hendrikkade 25,1012 TM Amsterdam
電話：020-530-1090
URL：http://www.lovers.nl/nl/
クルーズ船運航会社：Rederij P. Kooij
住所：Rokin opposite number 125 1012 KK Amsterdam
電話：020-623-3810
URL：http://www.rederijkooij.nl/
クルーズ船運航会社：Canal Company
住所：Weteringschans 26-1hg, 1017 SG Amsterdam
電話：020-217-0500
URL：https://www.canal.nl/
大林 等
メーカ勤務の出張とプライベート旅行で渡航した国の数は49になります。各国での 異文化体験は数知れません。カルチャーショックを起爆剤に、各国の歴史や文化に 深く切り込むスタンスを崩すことなく持ち続けています。観光情報から社会、習 慣、宗教、グルメ、アート、民族芸能まで、ジャンルの垣根を超えた海外での経験 を、各種の雑誌やWebサイトなどで発信し続けています。
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