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韓国のマツタケ山に潜入 〜2016年は大豊作で価格もぐっとお手頃に

   
八田 靖史
八田 靖史
 
にょっきり顔を出したマツタケ。傘が開く前のほうが上物とされる

秋を代表する高級食材のマツタケ。昨年、一昨年と不作に泣かされていた韓国ですが、今年は久しぶりに豊作だそうです。産地を歩いてみると、至るところに即席の販売所が設けられて、マツタケ、マツタケ、マツタケ。その光景を見るだけでもついつい興奮してしまいますが、豊作とあって値段もぐっと下がっているのがさらに嬉しいところです。主産地のひとつ慶尚北道奉化(ポンファ)郡を訪ねてみたところ、1等級のマツタケで1kgあたり22万ウォン(約2万円)前後という値段がついていました。報道によれば、例年よりも10万ウォンほど安い価格とか。それでもまだまだ高級品ではあるものの、お手頃価格ならちょっと手を出してみたくなりますね。

アカマツの生い茂るマツタケ山。名人の自宅裏から林道へと入る

そんなワクワク感ととももに訪れたのが奉化にある某マツタケ山。なんとも幸運なことに、縁あってマツタケ採り名人に密着する機会を得たのです。マツタケといえば、親族以外には生えるところを秘密にして誰にも教えない、後をつけられると困るので回り道をしながら採りに行く、といった物々しいイメージがありましたが、この日お会いした名人からそんな緊張感は一切なし。こともなげに自宅の裏山へと案内してくれたかと思うと、ものの1〜2分で「ここだよ」とマツタケの生えるスポットに到着してしまったのでした。

斜面を指さして「ほら、ここにあるよ」と教えてくれる名人

え、もう? あっけないというかなんというか。周囲を警戒することもなし。獣道のようなところへもぐりこむ訳でもなし。小道からひょいと外れて落ち葉を払うだけで、そこにはまさしくマツタケがニョキっと顔を出しているのでした。しかもずいぶん立派なサイズ。また、1本や、2本の話でもなく……。

ずらり並ぶマツタケ。顔を出し始めたものも傘の開いたものもある

見てください、コレ。ずらりという感じで至るところにマツタケが生えています。豊作とは聞いていましたけれども、いやはやまさかこれほどまでとは。名人によれば「多いときでシーズンに250キロ採ったこともある」とのことで、本当に採れるときにはいくらでも採れるんですね。逆に去年の場合はシーズンを通してわずか4本。その落差にもまた驚くほかないのでした。

マツタケを選別する名人。これでいくらになるだろうとつい思う

ものの30分ほどでこれだけの収穫。ずらり並べているのは見せびらかすためでなく、サイズや傘の開き具合によって、「これは1等級、これは2等級、ここからは並以下で、これは虫食い」とより分けているところです。手前にあるものほど上物で、1本が3万ウォン(約2800円)ほどにはなるだろうとのこと。もちろん産地の卸価格ですから、食卓に上がる頃にはもっと上がっているでしょうけどね。

採れたてのマツタケを手で割く。この時点で香りがぶわっと漂う

名人によれば奉化のマツタケは身がしっかりして食感もよいのが特徴とか。手で割いてももろく崩れたりはせず、ギュッと締まった感じの印象を受けます。

割いたマツタケを味見させてもらう。採ってすぐの貴重な体験

せっかくなので採れたてを生のまま試食させていただきました。土を払っただけでなんの味付けもなしですが、瑞々しさの中にもほんのり甘味があって香りも鮮やか。これまでにも飲食店で刺身と称した生マツタケを食べたことはありましたが、採れたてはまったく別物でしたね。鼻腔のあたりにほんわり香りが残って、いつまでもいつまでもマツタケを感じられるほどでした。

購入したマツタケを焼肉店に持ち込む。産地ならではのサービス

でも、やっぱり本格的には焼いて食べたいですよね。奉化では牛肉と一緒に焼くのが定番。以前にも紹介したように奉化は韓方材をエサにした韓薬牛(ハニャグ)の名産地でもあります。市場や販売所で買ったものを焼肉店に持ち込んでもいいですし、むしろ焼肉店でもこのシーズンはマツタケを季節メニューとして用意しています。

牛肉のジューシーな脂とマツタケの香りが同時に飛び込んでくる

サンチュの上に焼けた牛肉とマツタケ、サムジャン(包み味噌)を載せて食べれば、牛肉の脂と、マツタケの香りが重なって、最高の贅沢を満喫している気分になります。恍惚というか、陶酔というか、むしろ笑うかもしれませんね。なんか幸せすぎて笑えてきます。にやけ顔全開。

仁廈院のソンイトルソッパプ。釜飯のマツタケは半生で出てくる

焼肉以外ではソンイトルソッパプ(マツタケ釜飯)もおすすめ。奉化の「仁廈院(イナウォン)」という店の自慢料理で、このまま食べてもいいですし、店ではナムルなどの副菜と混ぜて、贅沢すぎるマツタケビビンバにして食べる方法も推奨しています。と書くともったいないようにも思えますが、それでも香りや存在感は消えず、むしろ旬ならではの力強さを再確認できる食べ方です。

なお、奉化におけるマツタケのシーズンは9月下旬から10月上旬まで。年によって多少の前後はしますし、地域が変わればまた少しずつズレますので、その点のみご注意ください。

【データ】
店名:仁廈院(인하원)
住所:慶尚北道奉化郡奉化邑幼鹿キル20(石坪里713)
住所:경상북도 봉화군 봉화읍 유록길 20(석평리 713)
Tel:054-672-8289

八田 靖史

八田 靖史
1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。2001年より執筆活動を開始し、最近は講演や、企業のアドバイザー、グルメツアーのプロデュースも行う。著書に『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品!ぶっちぎり108料理』(三五館)ほか多数。ウェブサイト「韓食生活」を運営。2015年より慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。

    

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