旅行に行ったスコットランドでウィスキーの魅力に魅せられたジョイス(Joyce) ・クーン・フイ( Khoon Hui) 夫妻が2006年にウィスキーの販売店オープン、2007年にオープンしたのが、クエイヒ・バー(Quaich Bar)。この8月にMRTブギス駅直結の便利な場所に移転オープンしました。クエイヒ(Quaich)とは、スコットランドで、17世紀ごろから使われ始めた両端に取っ手のある杯で、その杯を使って酒を飲むことで、両手に武器を持っていないことを示し、友好のしるしとして交換したという逸話が残っている器のこと。今は、スコットランドのウィスキー文化の象徴としても知られています。 ウィスキー店だけあって、スコッチウイスキーを中心に、品揃えは豊富。「特に『ブティックウィスキー』と呼ばれる、小規模な造り手のものを扱っています。昔ながらの手作りですべてを行っている醸造所の本物の味を伝えたい」とクーンさんは語ります。ここの特徴は、ウイスキー文化を広めたい、と、少量ずつのテイスティングセットを用意していること。様々なウイスキーを15mlずつ5杯楽しめます。好みに合わせてカスタマイズもできますので、興味のある方はぜひスタッフに聞いてみてくださいね!今回は、シングルモルトのS$50のセットをお願いしました。ちなみに、10月31日までは、プロモーション期間中で、半額のS$25で楽しむことができます。 スプリングバンク(Springbank)10年日本のウイスキーの父、とも呼ばれる、ニッカウイスキーの創始者、竹鶴政孝がウィスキーづくりについて学んだ街、スコットランドのキャンベルタウン(Campbeltown)で1828年創業と、もっと古い家族経営の蒸留所で、年間生産量は20万本。今も100%手作業ですべての工程を行う、希少な蒸留所。ワールド・ウイスキー・アワード(World Whiskies Awards)でも受賞したウィスキーです。「バランスの取れた伝統的なウィスキーで、かすかにスモークのようなバランスがある。甘くなくて、ブラックコーヒーのような通好みのウィスキー」と、クーンさん。確かに、口にすると複雑な味わいで、余韻がとても長く、時間と共にそのインパクトが薄れるのではなく、力強さが保たれている印象です。 トミントール12年、 (Tomintoul 12 years old)大手蒸留所立ち並ぶメジャーな産地でもある、スペイサイド産。香りをかぐと、はちみつやメープルシロップを思わせる甘い香りがあります。「シェリー樽で仕上げてあるのでチョコレートの香りも感じられるでしょう?甘い香りで飲みやすいですよ」とクーンさん。 スコットランドらしく、まずは大麦をスモークしたピートのスモークの香りが感じられるのが、レダイグ10年(Ledaig 10 years old)。スコットランドの中でも、アイランズ(Island)モルトと呼ばれる、小さな島、マル島で造られています。「味わいは塩気が少し感じられるでしょう?ウィスキーは熟成中に年間2パーセントずつ減っていくんです。その分、海の空気を吸っていく。だから、味わいが塩っぽく感じられるのですよ」とクーンさん。飲んでいるうちに、その奥には海藻のような植物系の味わいも感じられます。 ウイスキーの聖地とも呼ばれているアイラ島で生産されているのが、ブナハーブン12年。(Bunnahabhain 12 years old)。アイラ島は、島の4分の1がピートに覆われていることもあり、通常ここのウイスキーはピートの香りをしっかり利かせるのが特徴ですが、こちらはスモークの香りはなく、ふんわりとしたバニラのような香り。「スモークの香りで本来の味を薄れさせたくない」という蒸留所の意向で、このような造りになっているのだとか。シェリー樽の甘い香りが楽しめ、味わいとしては少し酸味を感じるフルーティーさと、ほのかな海藻のような味わい、そして時間がたつにつれて、ごくほのかにスモーク感が出てくる印象でした。 「これは、実はブラインドで出すと、ほとんどの人がスコットランドのウイスキーと勘違いするんです」とクーンさんが微笑みながら出してきたのが、ポール・ジョン(Paul John)。産地はなんとインド!「ノービンテージですが、これは大体6〜7年熟成したもの。スコットランドに比べて気温の高いインドでは、年間に自然に揮発する分量は8%とスコットランドの4倍、その分早く熟成が進むと考えられます」とクーンさん。香りはアーモンドの花のような香り。そして、時間が経つにつれて、ヘーゼルナッツ、栗のような香りに、ほんのりとスモークの香りが追いかけてきます。時間が経つにつれてまろやかに、ナッツの甘味のようなものが出てくる印象でした。そして、驚いたことに、インドでは手に入らないピート以外は、すべてインドの原料を使っているのだそう。 そして、このテイスティングセットとは別に、クーンさんがカスク(樽)買いしているという、アイラ島のボウモア(Bowmore)のウイスキーも味見させていただきました。冷却濾過を行わずに自然な状態でボトリングされたというウイスキーは、どこかペパーミントを思わせるようなメントール系の香りが感じられるウイスキーでした。テイスティングを終えて感じたのは、それぞれ個性の異なるウイスキーを比較して飲むことで、味わいの違いを細かく知ることができたこと。今回はクーンさんが説明してくださいましたが、いらっしゃらなくても、店のスタッフは前出の伝統的な手法も守っている造り手、スプリングバンク蒸留所で数週間研修をし、実際にウイスキー造りを体験しているそうで、色々な質問に答えてくれますので、ぜひいろいろと質問してみてくださいね。 【データ】■ クエイヒ・バー・アット・サウス・ビーチ(Quaich Bar @South Beach)営業時間:17:00〜25:00(月曜〜土曜)住所:30 Beach Road #01-16 South Beach Avenue, Singapore 189763電話: +65 6732 3452定休日:日曜最寄駅:MRTエスプラネード駅直結 仲山 今日子元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイド。ブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。