建築に興味がある人なら、必ず耳にしたことがある「ル・コルビュジェ」という名前。スイス出身で近代建築の発展に大きな影響を与えたその建築家は、1917年にパリに居を構え、それまでの建築における伝統的形式主義と決別します。その中で、1928年から1931年にかけてパリ郊外のポワシーに、サヴォア家の週末用の別荘としてデザインされたのが、世界遺産にもなっている「サヴォア邸」です。 ル・コルビュジェは「新しい建築の5つの要点」として、「ピロティ」「自由な平面」「自由な立面」「水平連続窓」「屋上庭園」という近代建築の5原則を提唱します。現代建築では当然のように行なわれているこれらデザインも当時は革新的なことでした。これらがサヴォワ邸で再現されています。 サヴォワ邸を訪れてまず驚くのは、これが約100年前の建物とは思えないくらい、モダンに感じられること。シンプルで洗練されていて、今の時代でも何の違和感もないこと。むしろ先進性さえも感じさせます。庭はただ芝生が広がるのみで、そこに家がオブジェのように置かれています。 内部構造は1階がトイレ、ガレージ、使用人の部屋になっており、2階にリビング、キッチン、ゲストルーム、廊下、浴室、寝室など、サヴォワ家の生活空間が配置されています。サヴォワ邸を訪れる間に建築の知識を少しでも予習しておくと、細かな構造の意味も分かり、さらに楽しめます。 サヴォワ邸まではパリからRER A線に乗り、終点のポワシー駅で50番のバスに乗り換え。ヴィラ・サヴォワで下車すると敷地前まで行けます。徒歩だとポワシー駅から15分ほどで到着。サヴォワ邸までは、途中から道に矢印が描かれているため、分かりやすいです。大体パリから往復半日圏内の距離です。 ポワシー市内は、サヴォワ邸までの道のりに中世の様子を感じさせる遺構が残るなど、サヴォワ邸以外も楽します。少し遠出したい時にはおすすめの場所です。【データ】名称:サヴォワ邸(Villa Savoye)住所:82 Rue de Villiers 78300 PoissyTel:01 39 65 01 06営業時間:10:00〜17:00休み:月曜入場料:7.50ユーロ最寄り駅:RER A線Poissy、50番バス「La Coudraie」方面「villa Savoye」URL:http://www.villa-savoye.fr/ 加藤 亨延ジャーナリスト。日本の雑誌に海外事情を寄稿。専門は日・英・仏の比較文化。ロンドンにて公共政策学修士を修了後、東京で雑誌、ガイドブック制作に携わる。2009年9月よりパリ在住。取材などで訪れた先は約60ヵ国800都市。現地コーディネートも担当。趣味は飲物。各国蔵元とミネラルウォーターの源泉へ足を運ぶことがライフワーク。フランス/パリの旬の話題を中心に更新していきます。ご連絡はこちらまで。