
夏の盛りには頭上から降り注ぐ厳しい陽射しに、耐えきれなさを感じることがあるものです。真上にあるように見えても、北回帰線より北にある日本では夏至の日でも太陽は影を作ります。春分と秋分の日に地球の中心に引かれる赤道上に立てば影は消えるのでしょう。南米エクアドルでは、首都キトの北約24キロを赤道が横切り国名としています。

キトは、15世紀末には南米大陸に領土を広げたインカ帝国の支配下に置かれました。クスコからは遥か北に位置しながら、キトは第2の首都として整備されたのです。帝国最後の第13代皇帝アタワルパはここを拠点としました。アタワルパがクスコへ向かう途上でスペイン軍に捕らえられ大帝国は消滅したのです。
現在のキトは北から新市街のノルテ、旧市街のセントロ・ヒストリコ、南地区のスールの3つのエリアに大きく分かれています。ノルテ地区ではフォッチ広場を中心に、オフィスやレストランが立ち並び、深夜まで人並が絶えることがありません。これとは対照的にセントロ・ヒストリコには、ゆったりとした時間が流れています。

約1キロ四方のセントロ・ヒストリコの心臓といえるのは独立広場です。中央には1830年8月のエクアドル独立を記念した碑が立ちます。西に面する純白の壁に目が引かれる大統領府と、東のモダンなデザインの市庁舎を豊かな緑が繋いでいるのです。


独立広場を南から見下ろすのは、1535年に建造された大聖堂カテドラルです。緑色のタイルで覆われたドームと、その下に扇を広げたような形の階段の柔らかな曲線には、穏やかなバランスを感じとることができます。聖堂の敷地内にはエクアドルの独立運動のリーダー、ホセ・スクレが埋葬されています。カテドラルの南西約100メートルに暮らした活動家の家は現在、博物館として公開されています。


スクレの家博物館からスクレ通りを西に約300メートル西に向かうと、サン・フランシスコ教会・修道院が建っています。アンデスのエル・エスコリアル宮殿の別称をもつ施設は1535年に造営され、南米で最も古い教会です。


サン・フランシスコ広場の西面にも、もう一つ教会が見えます。イタリアとスペインのバロックの様式を融合したラ・コンパーニア教会は、163年もの歳月を要して1768年に完成しました。石造りの壁面全体に緻密な彫刻が施されています。内部の祭壇には約7トンの金が使われました。

独立広場の南約300メートル、グアヤキル通りとロカ・フェルテ通りの交差点にはサント・ドミンゴ広場があります。広場の南東の角には17世紀初頭にドミニコ会修道院が、サント・ドミンゴ教会・修道院を建造しました。バロック様式の建築の内部の礼拝堂はロサリオの聖母と呼ばれています。

サント・ドミンゴ広場のグアヤキル通り側はトロリーバスのターミナルです。セントロ・ヒストリコの中でも最も交通の便のよい広場では、ダンスなどのパーフォーマンスを見ることもできます。

キトのセントロ・ヒストリコは、1978年にキトの市街として世界遺産に登録されました。
【データ】
施設名:カテドラル Catedral
住所:Venezuela 715
Tel:(02)257-0371
博物館開館時間:9:30〜17:00
博物館休み:日曜日
施設名:サン・フランシスコ教会・修道院 Iglesia y Convento de San Francisco
住所:Cuenca 477
Tel:(02)295-2911
博物館開館時間:<月〜土曜日>9:00〜17:30,<日曜日>9:00〜12:00
博物館休み:無休
施設名:サント・ドミンゴ教会・修道院 Iglesia y Convento Santo Domingo
住所:Flores 150
Tel:(02)228-2695
博物館開館時間:<月〜金曜日>9:00〜13:30,14:30〜17:00<土曜日>9:00〜14:00
博物館休み:日曜日