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フィラデルフィア 生命と自由と幸福を追求する世界遺産「独立記念館」

   
舞林鳥 恵
舞林鳥 恵
 
インディペンデンスモール南側に位置する「独立記念館」

ここは、ペンシルベニア州フィラデルフィアの「インディペンデンス・モール(Independence Mall)」。1776年7月4日にトーマス・ジェファーソンがアメリカ独立宣言(United States Declaration of Independence)に署名した広間がある建造物として広く知られる「独立記念館(Independence Hall) 」が建つ区域です。独立記念館は、1979年にユネスコ(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization、国際連合教育科学文化機関)の文化遺産として登録された世界遺産です。

アメリカ合衆国国立公園管理局の2015年度の訪問者数の統計資料によると、2015年度に国立独立記念公園を訪れた人数は4,311,582人。2014年度の3,648,052人を18.19%上回り、訪問者の数は近年増える傾向にあるようです。

政教分離と表現の自由を示唆する憲法修正第1条が刻まれた碑

また、同局の資料によると、建築家エドムンド・ウーリー(Edmund Woolley)がアンドリュー・ハミルトン(Andrew Hamilton)の助力を得て設計を手掛け1732年に建築工事に着手したこの煉瓦造りの建物は、1748年には塔以外の工事が終了し、当初はペンシルベニア州の議事堂として使われていたそうです。

ここでは、1775年に、イギリス植民地下にあったニューイングランド植民地群、中部植民地群、南部植民地群の13州の代表者が集まって第2回大陸会議(Second Continental Congress)が開かれ、翌年7月4日に独立宣言が採択されました。その建物の中では、1787年にアメリカ合衆国憲法も制定され、また、フィラデルフィアがアメリカ合衆国の首都だった1790年から1800年までは、アメリカ合衆国議会議事堂としても使用されていたのです。

ジョージアン様式の建築の意匠が施された独立記念館

独立記念館は外側から眺めるだけでも大変趣がありますが、独立記念館内のガイド付き(英語)のツアーに参加すると、イーストウイングでのオリエンテーション後、独立記念館に入館し、一階の元ペンシルベニア州議事堂とトーマス・ジェファーソンが独立宣言に署名した広間の見学をすることができます。

議事堂として使用中は、2階に上院が、1階に下院が置かれました

ウエストウイングのツアーでは、アメリカ合衆国憲法、独立宣言関連の資料、1776年から1789年の連合規約等の展示物を見学。フィラデルフィアがアメリカの首都だった頃議会議事堂として使用されていた室内の見学ツアーはチケットなしで参加できます。

ちなみに、今日のアメリカ合衆国の連邦議会(United States Congress)は、上院(元老院、United States Senate)と下院(代議院、United States House of Representatives)の二院制で成り立っていますが、それは、当時のこの建物の2階に上院(upper house)が置かれ、1階に下院(lower house)が置かれたことに由来すると言われています。

独立記念館前のジョージ・ワシントン像

独立宣言の序文に"We hold these truths to be self-evident, that all men are created equal, that they are endowed by their Creator with certain unalienable Rights, that among these are Life, Liberty and the pursuit of Happiness."という文言が出てきます。「我々は自明の真理として以下のことを信ずる。すなわち、全ての人間は平等に造られ、その創造主によって、生命と自由と幸福追求を含む侵すべからざる権利を賦与されていること」と提唱されています。「全ての人間が平等に造られている」「生命と自由と幸福追求を含む不可侵の権利を与えられている」といった自然権を重要視したこの普遍的な価値観や思想には大いに頷けますね。

独立記念館の真向かいのナショナルコンスティテューションセンター

さて、独立記念館見学の後は、マーケットストリートを行き交うカラフルなツアーバスやツアー用のキャリージを眺めながら、西側のプレジデンツ・ハウス(Presidents’ House Site)の展示物を鑑賞しその後リバティ・ベル・センター(Liberty Bell Center) へ行き「自由の鐘(Liberty Bell)」を見てみます。

マーケットストリート沿いのプレジデンツ・ハウスの跡地

大切に保護されているのは残部のみ。ガラス越しに鑑賞できます

リバティ・ベル・センターもまた、アメリカ合衆国の国立公園局により大切に管理されている所で、館内に入って見学することができますが、混雑を回避したければ、安全検査を通る列に並ばずにガラス越しに自由の鐘を鑑賞することもできます。

自由の鐘が収容されているリバティ・ベル・センター

上部に"PROCLAIM LIBERTY THROUGHOUT ALL THE LAND UNTO ALL THE INHABITANTS THEREOF LEV. XXV X.(国中の全ての住民に自由をふれ示さなければならない レビ記25章第10節)"という銘文、その下に"BY ORDER OF THE ASSEMBLY OF THE PROVINCE OF PENNSYLVANIA FOR THE STATE HOUSE IN PHILADA(ペンシルベニア州議会の命令によりフィラデルフィア議会議事堂へ)"、その下に"PASS AND STOW(製作したジョン・パスとジョン・ストウの名字)"、"PHILADA(フィラデルフィア)""MDCCLIII(1753年)"と刻印し鋳造されたこの鐘の重さは943kg(2080lbs.)。銅70%、 錫25%と他の金属数種が混合された青銅製です。

初めて鳴らした時にひびが入ってしまったという逸話を持つ自由の鐘ですが、一回目の修復以来何度か修復が重ねられたようですが、ここにはひび割れが入ったままの状態で収容されています。

建物の外から鑑賞するガラスの向こう側の「自由の鐘」の側面

1776年7月8日、ジョン・ニクソン(John Nixon)によってアメリカ独立宣言が朗読された時フィラデルフィア市民を招集させたというアメリカ史上重みのあるこの鐘は、大陸会議が開催された時や戦争勃発時にも使われました。住民はこの鐘の音色に耳を傾けながら、ある時は国の独立や奴隷制の廃止という朗報に歓喜し、またある時は戦争の勃発を嘆き、人々の死を悼んだのです。

今日世界遺産として、また重要な文化財として世界中から注目を浴びるようになった「独立記念館」や「自由の鐘」ですが、それら以外にもインディペンデンス・モール界隈に存在する全てのものが、「生命」と「自由」と「幸福追求」の象徴であるような気がします。

大きなガラス張りの建物の内部に「自由の鐘」が収容されています

【データ】
独立記念館(Independence Hall)
住所:
143 S. 3rd Street Philadelphia, PA 19106
TEL:(215) 965-2305
URL:https://www.nps.gov/inde/planyourvisit/independencehall.htm

入館料:無料(当日発券のみ。チケットをご予約の際は手数料として$1.50かかります。)
開館時間:
2016年5月28日~9月5日まで: 9:00~19:00 (7月1~4日:9:00~20:00)
2016年9月6日~2017年5月まで:9:00~17:00 (サンクスギビング・デーと1月1日:11:00~16:00、クリスマス・イブ:9:00~15:00、クリスマス休館)
安全検査のスクリーニングは閉館時間の15分前に閉鎖されますので、ツアーをご希望の場合はご注意ください。

アクセス:
独立記念館は5thストリートと6thストリートの間のチェストナッツストリートに面しています。安全検査を受けてからの入館となります。GPSをご利用の際は”520 Chestnut Street”と入力してください。

リバティ・ベル・センター(Liberty Bell Center)
住所: 6th St & Market St, Philadelphia, PA 19106
TEL:215-965-2305
URL:https://www.nps.gov/inde/learn/historyculture/stories-libertybell.htm
開館時間:各パビリオンによって営業時間が異なります。

インディペンデンス・ビジター・センター(Independence Visitor Center)
2016年5月28日~9月5日 8:30~19:00
2016年9月6日~2017年5月 8:30~18:00

リバティ・ベル・センター(Liberty Bell Center)
2016年5月28日~2016年9月5日 9:00~19:00
2016年9月6日~2017年5月 9:00~17:00
*安全検査は閉館5分前に閉鎖。

ナショナル・コンスティテューション・センター(National Constitution Center)
住所:525 Arch St, Philadelphia, PA 19106
TEL: 215-409-6600
月~土曜日: 9:30~17:00
日曜日: 12:00~17:00
入館料:無料
URL:http://constitutioncenter.org/

プレジデンツ・ハウス跡地(President's House Site)
月~日曜日:7:00~22:00
URL:http://www.phila.gov/presidentshouse//index.html

ワールド・ヘリテージ・センター・ユネスコ(World Heritage Centre UNESCO)
住所:7, Place de Fontenoy 75352 Paris CEDEX 07 France
TEL: +33 (0)1 45 68 24 96
URL:http://whc.unesco.org/en/list/78

アメリカ議会図書館(The Library of Congress)
住所:101 Independence Ave, SE Washington, DC 20540
TEL:総合案内 202-707-5000、アクセス 202-707-4700、閲覧室営業時間 202-707-6400
URL:https://www.loc.gov/

「独立宣言」の参考資料:
?In Congress, July 4, 1776. The unanimous declaration of the thirteen United States of America.
URL:https://www.loc.gov/item/90898037/

?Fac-simile of the original draught of the Declaration of Independence in general Congress assembled 4th July, 1776
URL:https://www.loc.gov/item/2003656533/
URL:https://www.loc.gov/resource/ppmsca.08314/

フィラデルフィア市(City of Philadelphia)公式ウェブサイト
電話番号:215-686-1776
URL:http://www.phila.gov/Pages/default.aspx

フィラデルフィア観光公式ウェブサイト
ビジットフィリー・ドット・コム(VISITPHILLY.com)
住所:
VISIT PHILADELPHIA 30 S. 17th Street Suite 2010 Philadelphia, PA 19103
電話番号:215-599-0776
Eメール: questions@visitphilly.com

インディペンデンス・ビジター・センター(Independence Visitor Center)
住所:1 N Independence Mall W, Philadelphia, Pennsylvania 19106
TEL:1-800-537-7676
URL:http://www.phlvisitorcenter.com/

アメリカ合衆国国立公園局(National Park Service)
本部
住所:National Park Service 1849 C Street NW Washington, DC 20240
TEL:202-208-6843

北東地域(Northeast Region)事務局
住所:National Park Service U.S. Custom House
200 Chestnut Street, Fifth Floor Philadelphia, PA 19106
TEL:215-597-7013

インディペンデンス国立公園の年間の訪問者の統計資料
URL:https://www.nps.gov/inde/learn/management/statistics.htm

リバティベルに関する資料
URL::https://www.nps.gov/inde/learn/historyculture/stories-libertybell.htm
URL:http://www.ushistory.org/libertybell/

「国中の全ての住民に自由をふれ示さなければならない レビ記25章第10節」
旧約聖書 日本聖書協会 1972年刊

下記のURLで「自由の鐘」の音色を聴くことができます。
URL:https://www.nps.gov/inde/upload/-Uncracked-2s.mp3

舞林鳥 恵

舞林鳥 恵
80年代後半から日米間を往復する暮らしを始め、現在DCから小一時間の田舎町で夫とのふたり暮らしを満喫しています。カントリーライフの醍醐味をHappyNest in Americaにて配信中。ワシントンDC周辺の観光名所や魅力的な穴場スポットの情報をお届けします。

    

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