ブルガリアの中央に巨大な廃墟があります。かつて同国を治めていた共産党は1981年、バルカン山脈の峰に巨大建築物「ブズルジャ」を造りました。なぜこの場所だったかというと、元々オスマントルコに支配されていたブルガリアにとって、ここは独立の要となった地でした。しかし共産党体制が崩壊するとともに、管理されなくなったブズルジャは荒れ放題に。今では廃墟となりました。
廃墟といっても、誰も訪れないわけではなく、しばしば見物客はやってきます。ただし公共交通機関はないため、訪れるには車が必要です。バラで有名な町カザンルクの近く、首都ソフィアからだと、高速道路と一般道を乗り継いで車で3時間の道のりです。廃墟への道程と言っても、道路はすべて整備されていて運転に問題はありません。
見学は基本的に外からのみ。内部には巨大なモザイク画に囲まれたホールなどがありますが、危険が伴うため、おすすめできません(入口は閉じられていますが、一部が壊されています)。加えて内部は自然光のみであるためとても暗く、重ねた年月により至る所が壊れています。館内に入る人も、ほとんどいないため、万が一の時は助けを呼べないケースがあります。
建物の隣に立つ塔も荒れ放題になっています。当時はエレベーターがあったようですが、今は非常階段のみ。館内は湿っているため、金属製の階段は滑りやすく、こちらも大変危険です。
建物内部は安全とは言えませんが、時代を感じさせる共産党趣味の建築、および周囲に広がるバルカン山脈の山並みは、特筆すべきものがあります。気候の良い時期は、周囲ものどかでゆっくりするには、ぴったりの場所です。ブルガリアで少し趣向を変えて遠出をしてみたいという人には、良い選択肢の1つではないでしょうか。
【データ】
施設名:ブズルジャ(Buzludzha)
住所:Vrah Hadji Dimitar, връх Хаджи Димитър, 6100
加藤 亨延
ジャーナリスト。日本の雑誌に海外事情を寄稿。専門は日・英・仏の比較文化。ロンドンにて公共政策学修士を修了後、東京で雑誌、ガイドブック制作に携わる。2009年9月よりパリ在住。取材などで訪れた先は約60ヵ国800都市。現地コーディネートも担当。趣味は飲物。各国蔵元とミネラルウォーターの源泉へ足を運ぶことがライフワーク。フランス/パリの旬の話題を中心に更新していきます。ご連絡はこちらまで。