大切な人と会う前には身だしなみを整えるばかりでなく、爽やかな香りを身につける人も数多くいます。様々な香水の中に、オー・デ・コロンを用意している人もいらっしゃることでしょう。フランス語のオー・デ・コロンはケルンの水を意味します。18世紀にドイツのケルンでヨハン・ファリナが、オレンジをベースとした香水を世界で初めて工場生産を始めたことに由来します。ケルンはライン川の水の恵みを様々に利用して発展していたのです。
ケルンはベルリンとパリの中間点に位置し、両都市とは直通列車で結ばれています。ドイツ鉄道DBのケルン中央駅を出ると、無意識のうちに視線は上を向いてしまうようです。駅前の広場の真正面には巨大な聖堂が聳え立っているのですから、極めて自然なアクションということができます。
ケルン大聖堂は、高さ157メートル、奥行き144メートル、幅86メートルの規模で、ゴシック様式による建造物としては世界最大のスケールを誇っています。一般的にはケルン・ドームと呼ばれる聖堂の正式な名称は、ザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂です。
ライン川に架かるホーエンツォーレルン橋の西岸約500メートルの位置に、最初に教会が建設されたのは4世紀のことです。街の繁栄に伴い818年に改築されたのですが1248年に、火災によって焼失してしまいました。計り知れない痛みを感じつつ焼け落ちた瓦礫の後片づけが行われ、その作業が終わる頃には再建工事が始まっていたのです。
ところが16世紀になると宗教改革が起こり、財政難によって工事を継続することができなくなってしまいました。当初の設計図では2本描かれた正面のファサードの塔が、1つしかない状態で中断となったのです。バランス感覚を欠いた外観で約300年の時が過ぎ、2本目の塔の建築が再開したのは1842年のことです。ナポレオンとの戦いを終えたばかりのドイツでは、ゴシック・リヴァイヴァルの声が高まりケルン大聖堂の完成が強く望まれたのです。1880年に悲願は達成されましたが建設開始から遡ると、600年を超える歳月が経過していました。当時のケルンの市民は、世界一の高さを誇る2つの塔を誇らしげに見上げたに違いありません。
黒みを帯びた外壁を正面から眺めるだけでも厚みを感じることができます。重厚に積み上げられた石の細部には精緻な彫刻、装飾が施されています。巨大な2つの塔の他にも、針のような細い柱が聖堂を取り囲みながら垂直に立っています。天を目指す強い思いが、束ね柱や左右の大きな塔に集約されているようです。南塔には509段の螺旋階段が設けられ、各段からは巨大な構造物を作り上げる細かな装飾を間近に見ることができます。
分厚い石壁の中央に設けられたアーチ状の玄関を潜ると、頭上のはるか上方に丸天井を備えた礼拝堂です。上下左右に視界が広がる神聖な空間には開放感が漲ります。高層の窓を彩るステンドグラスからは、やわらかな太陽の光が差し込んできます。南側の側廊のゲルハルト・リヒターが創作した格子柄のステンドグラスには目を見張るものがあります。ゴシック建築の特徴のすべてを凝縮したケルン大聖堂は1996年に、ユネスコの世界遺産に登録されました。
【データ】
施設名:ケルン大聖堂 Kölner Dom
住所:50667 Dompropstei, Margarethenkloster 5, Koln
URL:https://www.koelner-dom.de/homepage
開館時間:<11〜4月>6:00〜19:30,<5〜10月>6:00〜21:00
休み:無休