
現在、世界にある約200の国々の中で、日本は195ケ国と外交関係をもっています。与那国島の西方洋上約100キロに浮かぶ身近な国、台湾とは国交はありませんが経済や文化の面で深い繋がりをもっています。90日以内の観光目的ならばビザなしで渡航できます。大陸の中国との関係から国際的には微妙な立場ですが、台湾という社会が存在することは紛れもない事実です。日清戦争後は日本領土となった台湾は第二次世界大戦後、1949年に大陸から蒋介石をリーダーとする国民党が入島し大きく変わりました。蒋介石は国父とされ、彼の偉業をたたえ1980年に首都台北に中正紀念堂が造営されました。

台北の人々の足となっているのは、1996年の開通から走行区間を延長する台北捷運MRTです。MRT中正紀念堂駅の5番出口から中山南路を北に100メートル余り歩くと、巨大な5連アーチの門が目に入ります。高さ約30メートルの青色の屋根を備えた白色の柱の間を抜けると、両側に建つ宮殿のような建物に圧倒されます。右側はオペラハウス国家戯劇院、左側はコンサートホール国家音楽庁です。赤色の列柱に黄色の屋根が設けられた姿には気品と貫禄が満ち溢れています。




宮廷建築に挟まれた空間から南東には敷地面積約25万平方メートルの広大な公園が広がります。第二次世界大戦前には日本が山砲隊、歩兵第一連隊の軍用地として使用したところです。現在は花壇や、回廊、庭園、池などが整備され市民の憩いの場となっています。ブライダル写真撮影のために訪れる人も多く人気スポットでは順番待ちとなることも珍しくありません。

正門を背にして中央の石畳の通路を進むと階段がせり上がっています。公園を見下ろす基台の上に中正紀念堂が建造されました。「中正」は蒋介石の本名です。純白色の大理石と青色の瑠璃瓦による堂からは、清廉潔白さが滲み出してくるかのようです。屋根の形は八角形になっており、孫文が唱えた「忠、孝、仁、愛、信、義、和、平」の八徳を象徴しています。

本堂の中に入ると、正面中央に蒋介石が凛々しい姿で椅子に腰かけています。高さ6.3メートルのブロンズ像には威厳を感じるとることができます。背後の壁には蒋介石が基本とした政治理念「倫理、民主、科学」の文字が刻まれ、像の土台には彼の遺言が記されています。また天井の中心には台湾の国章、青天白日の紋章がはめ込まれています。


像の左右には国父を守る衛兵が直立不動で立っています。微動だにしない姿はオブジェのようですが、毎日10:00から16:00まで1時間おきに交代儀式が行われます。10分前後のセレモニーの間は、しいんと静まり返った空間に衛兵の足音と、銃を床に打ちつける音だけがこだまし、知らず知らずの内に背筋が伸びてくるようです。

メインホールは巨大な蒋介石の像を拝み見るだけの空間なのですが、堂内の展示室では彼の生涯を辿ることができます。文物展示室では愛用車の周りを遺品や写真が取り囲んでいます。蒋介石記念室には、台湾総統時代の執務室が再現されています。蝋人形は極めてリアルで息遣いが聞こえてきそうです。総統府から移された文物に囲まれた蒋介石は、現代の台湾の国政を預かっているかのようです。


【データ】
施設名:中正紀念堂
住所:台北市中山南路21号
Tel:(02)2343-1100
URL:http://www.cksmh.gov.tw/
開館時間:9:00〜18:00
休み:旧正月時期のみ