音楽は人間の感情に大きく作用します。音楽には気分をリラックスする、新たなエネルギーを沸き立たせるなど、様々な効果をもっています。世界中に多様な様式の音楽が産まれましたが、ヨーロッパではクラシック音楽の伝統が築かれました。モーツァルトはその礎を作った大作曲家です。オーストリアのザルツブルクに産まれ、ウィーンをはじめヨーロッパ各地で活動しました。ザルツブルクは音楽の街として広く知られるようになり、夏のザルツブルク音楽祭には世界のトップアーティストが勢揃いします。 塩の城を意味するザルツブルクは、ザルツァッハ川の水運を利用して発展しました。市の南約15キロのバート・デュルンベルクでは豊富な岩塩を産出しています。ザルツァッハ川の流れを利用して塩をヨーロッパ各地に送り豊かな経済力を得たのです。通行税が大司教の財源となり、798年には神聖ローマ帝国領に属する大司教区となりました。歴代ザルツブルク大司教の馬が水飲み場とした馬洗池に迫るメンヒスベルク山の崖前の壁には馬のフレスコ画が描かれています。 街を見下ろすメンヒスベルクには1077年にホーエンザルツブルク要塞が建造されました。外敵や世俗権力が侵入しない旧市街地で、市民が集い合ったのがレジデンツ広場です。バロック様式のアトラス神の噴水が清水を湛える広場の南には、ロマネスク様式の大聖堂が神々しい姿を見せています。西面の大司教の居城レジデンツでは、モーツァルトがオペラ上演を行ったこともあります。 レジデンツ広場の北東にはモーツァルト広場が隣接しています。中央に立つモーツァルトはザルツブルクに響く音に耳を傾けているのでしょうか。 像の北西端から繋がるユーデンガッセに歩を進めると、モーツァルトの足跡を追うことができます。数メートルの幅で弧を描くような通りを数百メートル歩くと、通りの名前はゲトライデガッセとなります。不規則に絡み合う細い小路に中世の都市構造が偲ばれます。ロマネスク、ルネサンス、バロックなどの様式による建物の軒下を飾る鉄細工の装飾看板は一つ一つがアート作品です。 ゲトライデガッセ9番地では黄色い民家に目が引かれます。1756年にモーツァルトが産まれた家です。誕生後7年暮らした生家は現在、博物館となっています。館内には彼が愛用したヴァイオリン、ピアノ、一家の肖像画や書簡などの展示が並びます。 7歳になったモーツァルトは住居を変え、ザルツァッハ川の北岸のマカルト広場に面するピンク色で暮らすようになりました。住家の内部の装飾、天井、壁、床、シャンデリアなどは彼が住んだ当時の姿に再現されています。 住家の北西に建つミラベル宮殿の大理石の間では、モーツァルトが演奏を行ったこともあります。宮殿が面する敷地は広大な庭園となっています。ペガサスの噴水が水しぶきを輝かせる周囲はギリシャ神話をモチーフとする彫刻が囲んでいます。園内の花壇は手入れがゆきとどき四季折々の彩りで包まれます。庭園から南方に視線をやると、ザルツァッハの川の先にホーエンザルツブルク要塞や大聖堂の麗しい姿が絶妙の角度で眺めることができます。 ザルツブルクの旧市街と歴史的建造物は「ザルツブルク市街の歴史地区」として、1996年にユネスコ世界遺産に登録されました。【データ】施設名:モーツァルト生家 Mozarts Geburtshaus住所:A-5020 Salzburg, Getreidegasse 9Tel:(0662)84-4313URL:http://www.mozarteum.at/museen/mozarts-geburtshaus.html開館時間:<9〜6月>9:00〜17:30,<7・8月>9:00〜20:00休み:無休施設名:モーツァルト住家 Mozart Wohnhaus住所:A-5020 Salzburg, Makartplatz 8Tel:(0662)87-4227URL:http://www.mozarteum.at/museen/mozart-wohnhaus.html開館時間:<9〜6月>9:00〜17:30,<7・8月>9:00〜20:00休み:無休 大林 等メーカ勤務の出張とプライベート旅行で渡航した国の数は49になります。各国での 異文化体験は数知れません。カルチャーショックを起爆剤に、各国の歴史や文化に 深く切り込むスタンスを崩すことなく持ち続けています。観光情報から社会、習 慣、宗教、グルメ、アート、民族芸能まで、ジャンルの垣根を超えた海外での経験 を、各種の雑誌やWebサイトなどで発信し続けています。Facebook: