ここはペンシルベニア州ランカスター(Lancaster)。現在のペンシルバニア州の州都はハリスバーグ(Harrisburg)ですが、ランカスターは、1700年代初頭にヒッコリータウン(Hickorytown)として始まり、植民地時代の内陸では最も大きな都市としてみなされていました。また、独立戦争時代の1777年の9月27日には1日だけ首都となり、1799年から1812年までは州都だったところです。というわけで史跡や観光名所、重要な文化財が多い土地柄ですが、この日は少し革新的でモダンな「ザ・シード(THE SEED)」という名前のベジタリアン/ビーガン・カフェを訪れてみました。 店内に入る前にまず目に留まったのが、カウンターの奥の大きな黒板。アメリカのカフェでよく見かける黒板はメニュー用に使われていることが多いのですが、このカフェの黒板にはカジュアルな字体でお店のミッションが書かれています。Worker cooperativeとは労働者協同組合のことですが、ここは、ランカスターで唯一ボランタリーのメンバーによって経営されているカフェで、この地域のフリーマーケット等の様々な活動やオープンマイクを通した社交や地域の人々の交流の場としても店舗を提供しているのです。「ここはどなたでも歓迎している安心できる空間です。(This is a radically inclusive safe space.)」という一言が嬉しいですね!また、黒板には興味深いことが5つ記されていました。このお店で見当たらないものとして「電子レンジ」「冷凍食品」「アスパルテーム(人工甘味料)」「差別」「異性化糖によるコーンシロップ」が挙げられており、黒板の真ん中には、できるだけ地元の新鮮で適正な価格でフェアートレードされた有機栽培の食材を使っていること等も明記されていたのです。 ここでは魚介類や肉料理のオーダーはできませんが、今月のスペシャルというメニューの中に「ビーガン・クラブケーキ(vegan Crabcake)」があったので、それを注文してみます。初夏の柔らかな木洩れ日が、大きな窓ガラスの向こうで揺れていてとても気持ちの良い空間。お店の方に写真撮影をしても良いかどうか伺ってみると、快くOKして下さったので、料理が運ばれてくるまで店内をゆっくり歩きまわってみました。 店内を見て回った後、棚の上に置いてあった小冊子に目を通していると、食事が運ばれてきました。通常、蟹肉に小麦粉や卵を混ぜて焼いた料理をクラブケーキと呼ぶのですが、こちらはヒヨコ豆とグルテンフリーのクラッカーと刻んだ野菜とスパイスがベースの、要するにビーガン版の『蟹ケーキもどき』。カイザーロールに、タルタルソースがかかったクラブケーキと一緒にたっぷりのレタスとレッドキャベツ、玉ねぎ、ニンジンの千切りが挟んであり、ピクルスとポテトチップスが添えられています。言われなければとても偽物とは思えないほど上出来のクラブケーキです。 とてもゆったりと寛げる「ザ・シード」。その名の通り、小さな種が沢山の花や植物や樹木に成長して緑豊かな環境で安心して暮らせるようにと願う人々の、ここを訪れる全てのお客様への愛情と食材へのこだわりで支えられているこんな素敵なカフェを発見できたことに感謝しつつ、この日はのんびりと家路に着いたのでした。 【データ】ザ・シード(THE SEED)住所:52 N Queen StLancaster, PATEL:717-945-5787営業時間:月曜日休業 火~木曜日10:00~19:00 金・土曜日10:00~21:00 日曜日10:00~18:00URL:http://theseedlancaster.coop/アクセス:https://www.facebook.com/theseedlancaster/info/?entry_point=page_nav_about_item&tab=overview 舞林鳥 恵80年代後半から日米間を往復する暮らしを始め、現在DCから小一時間の田舎町で夫とのふたり暮らしを満喫しています。カントリーライフの醍醐味をHappyNest in Americaにて配信中。ワシントンDC周辺の観光名所や魅力的な穴場スポットの情報をお届けします。