
日常の生活を送っていると様々な感情が沸き上がってくるものです。心の動きは顔の表情や動作に表れます。激しく体を動かせば激情が周囲の人に伝わります。ブエノス・アイレスの港近くの裏町カミニートの酒場では、胸にこみあげてくる思いを全身で表現するダンスが盛んに踊られるようになりました。19世紀半ばから表現様式に磨きがかかり、タンゴとしてブエノス・アイレスをはみ出しアルゼンチン全土に広まったのです。
ブエノス・アイレスの市内には、いたるところにタンゴ・ショーを見せてくれるタンゲリーアがあります。タンゴ・ポルテーノは、7月9日大通りとコリエンテス大通りの交差点に建つオベリスコから北に約100メートルあまりの市の中心に劇場を構えるタンゲリーアです。



タンゴ・ポルテーノでは毎夜20:30から夕食が始まり、22:15から1時間あまりのタンゴのショーが行われています。炭火で豪快に肉を焼いたアサードなどのアルゼンチン料理を味わった後にタンゴの世界に浸ることができるのです。食後の時間に劇場に入り、ドリンクを飲みながらショーだけ見ることもできます。

開演時間になるとステージの幕が上がり、オルケスタ・ティピカの演奏が始まります。バンドネオン、ヴァイオリン、チェロ、ベース、ピアノから繰り出される2ビート、4ビートの歯切れよいリズムに自然に体が揺さぶれます。数組の男女のペアが踊り始めると、ステージの上はあたかも社交ダンスのホールです。


ソロ、デュオなども加え、バラエティー豊かなステージが展開していきます。情熱的でセクシーな身のこなし、キビキビとして軽快なステップなど、予想をはるかに超える多彩なアクションがとめどなく流れていくのです。豊かな表現力に圧倒されっ放しです。手を組んで踊るペアのフットワークは、寸分の狂いもなくぴったりと息が合っています。目にもとまらぬ速さで回転したかと思うと、特徴的な決めポーズでアクセントをつけます。



頭のてっぺんから足のつま先までの全身を使って、湧き上がる感情を表現するのです。言葉を使わずに、すべてが体の動きに置き換わります。ステージは「人生は一曲のタンゴ」の映画タイトルそのものです。
後半にはペアが立体的に踊るユニークなシーンも組み込まれています。まるで、アパートの部屋を外から覗き見ているかのようです。アルゼンチンでは日常的に家族でタンゴが踊られているのでしょう。タンゴは2009年にユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。

タンゴ・ショーの終演は深夜の23:30前後です。この時間でも路線バスは動いており、劇場のほぼ正面のコロン劇場のバス停から乗車できます。タクシーも7月9日大通りを頻繁に行き交っています。とはいえ真夜中ですから帰りの手段を事前に確保しておいたほうがいいでしょう。宿泊しているホテルのフロントで数軒のホテルを回って劇場までの送迎をしてくれるミニバス・ツアーを申し込むことができます。

【データ】
店名:タンゴ・ポルテーノ Tango Porteno
住所:Cerrito 570, Buenos Aires 1010, Argentina
Tel:(011)4124-9400
URL:http://tangoporteno.com.ar/
営業時間:夕食20:30〜,ショー22:15〜23:30
休み:無休
