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「デヘサ」大自然の恵みに感謝を込めた、ダイナミックなスペイン料理

   
仲山 今日子
仲山 今日子
 
ジャン・フィリップ・パトルノシェフ

去年12月にオープンしたスペイン料理のレストラン、イベリコ豚が育つ草原、を意味するデヘサ(Dehesa)は、内臓からしっぽまで、美味しい肉を余すところなく食べることができるレストラン。オーナーシェフの、ジャン・フィリップ・パトルノ(Jean-Philipe Patruno)さんは、父がイタリア人、母がスペイン人、フランス・マルセイユで生まれ育ったそう。姉の一人は500〜600頭の山羊を飼い、チーズを生産、そしてもう一人の姉はフランス料理店を経営していたというジャンシェフにとって、料理の道に入るのはとても自然なことだったそう。
「新鮮な野菜や豊かな海の幸に恵まれた地域に育ち、父の作る馬肉のタルタルや、母の作るガスパチョが大好物だった。美味しい食材をシンプルに調理するおいしさを伝えたい」というジャンシェフ。その後、ロンドンに渡って、ミシュラン三ツ星レストラン、シェ・ニコ(Chez Nico)のニコ・ラデニス(Nico Ladenis)シェフの下で10年間働くなどして、キャリアを重ねてきました。

金融街からほど近い便利な立地にある

そして、内臓まで無駄なく使うことで、食材に敬意を払いたいと考えてオープンしたのが、このレストラン。鳩の心臓などの内臓料理だけでなく、イタリアや南仏のエッセンスを加えたスペイン料理が色々と楽しめます。「これまで通常料理に使われている部位だけではなくて、味だけで言ったら、美味しいものがたくさんある。部位の名前で敬遠されがちな食材の本当のおいしさを伝えたい」と語ります。

某有名シェフからの誘いを断り、今回初めて、自らのレストランをオープンしたというジャンシェフ。「お客が何百人もいるようなレストランで、ただ機械的に仕上げていくだけ、という料理はしたくなかった。手間をかけて、目の前にいるお客に届ける、料理をしたい、だから自分のレストランも、目の届く範囲のサイズにしたんだ」と言います。

なかなか提供しているお店を見つけるのが難しいソブレサダ

まず出てきたのは、スペインのマジョルカ島の特産だという、ソブレサダ(Sobresada、S$12)。パプリカのたっぷり入ったソーセージです。塩気が強く、おつまみにピッタリ。目の前で表面を軽くあぶって、パンと共にいただきます。

魚介の旨みが生きたシーフードサラダ

「もちろん、うちのメインは肉や内臓料理だけれど、その他の料理が食べたい人だっている。だから、地中海沿岸で愛されているシーフード、タコを使った料理もおすすめだよ」ということで、タコを使った様々な料理もおすすめだとか。

まずは、シーフードサラダ(Seafood Salad、S$23)新鮮なタコ、ムール貝、アサリ、トマトや紫玉ねぎなどを使ったフレッシュなサラダ。スペイン南部で主に夏に食べられているサラダで、どのシーフードも野菜もとても新鮮で、フェンネルの香りがふんわり。がっつりとしたお肉料理などを食べる時にも、口の中をすっきりとさせてくれそうな料理です。

自家製ロメスコソースのコクと辛みが効いている

続いて、タコのカルパッチョ(Octopus Carpaccio、S$27)。スペイン・カタルーニャ地方の伝統的なソース、トマトやナッツ、唐辛子を主体に作った、自家製のロメスコソースが効いています。タコの質感がとても柔らかく、オリーブオイルとタイムのすっきりとした緑の香り、そしてロメスコソースのコクと辛みが新鮮なタコの甘みを引き立てています。

上質な豚の脂の味を楽しめる

タコに薄くスライスしたラードを乗せ、バーナーであぶって仕上げた一皿(The Octopus/ Lardo/ Ratte、S$28)。豚の脂の香ばしさをまとったタコは、しっかりとしたアルコール度の高いお酒にも合いそうな味わいです。

地中海の香りがする野菜の自然なおいしさが生きたサラダ

グリーンピースなどの春野菜のサラダ(Peas/Broad Beans/ Minth/ Ricotta/ Lemon Honey、S$16)は、ミントやタイムのハーブが効いたサラダ。グリーンピースやソラマメ、そしてフレッシュなチェリートマトと、マイルドでクリーミーなリコッタチーズの取り合わせですっきりといただけます。

シャキシャキした食感もあり、暑さを忘れさせてくれそう

もう一つは、ややフルーツサラダのような雰囲気の、ラディッシュや洋梨などのサラダ(Raddish/ Pear/ Pomegranate、S$18)。洋梨とザクロの甘みと、きりっとしたラディッシュやセロリアックの味わい、上にはペコリーノチーズが。豚肉と合わせると、この甘みが絶妙に生きてきます。この後に食べた脂の乗ったイベリコ豚のローストとの相性が良かったです。

ケイパーがアクセントになったボーンマロー

続いては、ケイパーの乗ったボーンマロー(Grilled Bone Marrow、S$25)。トロッと焼きあがったところをいただきます。個人的には少し香りが強いように感じましたが、スパイス香やタンニンの強い赤ワインなどと合わせると、個性がうまく調和する感じがしました。

ボリューム感に圧倒されるビーフのロースト

200日間穀物肥育したというアンガスビーフのロースト(Cotes De Boeuf、S$170/kg)。香ばしく焼き上げられた赤身の肉は、シンプルにおいしい、定番の味。

上質なイベリコ豚の脂身の旨みを堪能できる

でも、私が個人的に一番気に入ったのが、イベリコ豚のリブロースト(Iberico Pork Ribs、S$40)。
24時間低温調理してから、ローストしてあるということで、脂身はとろりと、そして表面はカリカリに焼き上げられています。コリアンダーやクミン、スターアニスなど、どこかエキゾティックな香りのスパイスでマリネしてあり、メキシコ産の唐辛子で辛みをプラス。脂身の部分もとってもおいしくて、カロリーも忘れてペロッと食べてしまいました。

カリカリのパンチェッタとプディングが意外な相性の良さ

デザートも、個性あふれるもの。パンチェッタ(スモークした生の塩漬け肉)をキャラメルコーティングして、プディングの上に乗せたデザート(The Lardo Flan/ Caramelised Pancetta、S$14)が絶品。デザートにパンチェッタ?と思いましたが、シンプルなプリンに塩気とスモーク香り、そしてキャラメルのコクと甘みが加わります。塩キャラメルを更に香ばしくした印象で、上質な豚の脂は、臭みもなく、デザートにも合うという新しい発見でした。これは個人的にもリピートしたいデザートです。

中東の影響も受けているスペインのデザート

そして、中東からスペインに渡ったお菓子、ライスプディング(Torijas/ Plum/ Creme Fraiche、S$14)は、スペイン特産のアーモンドミルクで煮込んで香ばしく。間にはプラムのソースが入っています。

大自然に育まれた味を、ダイナミックに、そして余すところなくいただくレストラン。ポーションも大きめなので、お腹を空かせて行ってみてくださいね!

<DATA>
■ デヘサ(Dehesa)
営業時間:ランチ 11:30〜14:30(平日のみ)、ディナー 17:30〜深夜 (月曜〜土曜)、日曜休
住所:12 North Canal Road, Singapore 048825
電話: +65 6221 7790
アクセス:MRTラッフルズプレイス駅から徒歩6分ほど

仲山 今日子

仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイドブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。

    

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