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「キング・オブ・チリクラブ」モダンチャイニーズの店、ブルー・ロータス

   
仲山 今日子
仲山 今日子
 
香港出身のリッキーシェフ

香港出身、オーストラリア・パースを経て、シンガポールの中華レストラン、同楽(Tong Le)グループに招聘されたリッキー・ン(Ricky Ng)シェフがオーナーを務める店、ブルー・ロータス(Blue Lotus)。目の前にセントーサ島のヨットハーバーを望む、心地よいロケーションの店です。

中華料理には古臭いイメージがあり、どうしても祖父母の誕生日などで食べに行く場所、というイメージがあったものを、西洋のテクニックなどを使い現代的にアレンジして生み出した料理を提供しています。

また、セントーサコーヴ、W Hotelのすぐそばにあることから、この地域にある唯一の中華レストランということで、アジア系の利用者でにぎわっています。観光客がわざわざ街に行かなくても、シンガポールの味を楽しめるような工夫もされています。そして、化学調味料を一切使っていないのも特徴。ハーブやスパイスを重層的に使ったり、素材から丁寧に引き出した旨みで料理の味を作り上げています。

軽くて油残りもなく、いくらでも食べられそう

まずは、中華の前菜の定番、魚の皮のフライ(Crispy Fried Salmon Skin、S$16)。ブルー・ロータスでは鮭の皮を使っているそうですが、臭みもなくてカリカリ。そして、ソルテッドエッグヨークと呼ばれる、塩漬け卵黄の粉をまぶしてあり、表面にコクが生まれています。どうしても重たくなりがちな揚げ物ですが、油の温度を上手に管理することで、このサクサクの軽い食感を生み出しているとか。中華と違い、上にライムを絞ってすっきりと仕上げてあるのも特徴です。

見た目ほど辛くはありませんが、唐辛子自体

続いては、ナスの一皿(Crispy Eggplant、S$12)。ベジタリアンも多いインド系の人たちの好みに合わせて開発されたというスパイシーなベジタリアンの一皿。
ナスをセロリやたくさんの唐辛子と一緒に炒め、四川風に仕上げたナスは、外側はカリカリで中はしっとり。火の通し方がかなり上手だと感じました。クミンなどのスパイスの香り、そしてゴマの香ばしさが効いています。香港出身で、自身の料理のベースは広東料理だというリッキーシェフですが、中国全土の味を幅広く料理に取り入れています。

スープとフィリングのロブスターの身、両方の味が楽しめる

そしてロブスターのビスク(Smoked Truffles Wanton Lobster Bisque、S$18)。濃厚なアメリケーヌのような、殻からとったスープ、中心には甘いロブスターの身が詰まったダンプリング(点心)。スターアニスやシナモンのような中国のスパイス、トリュフやモリーユ茸などの香りも感じられます。以前に、東京のフレンチ、オテル・ドゥ・ミクニの三國清三さんがシンガポールにイベントのためやってきた際に、三國さんが作るフレンチに、バターやコニャックを使ったロブスタービスクがあったのにインスピレーションを受けたのだといいます。シャキシャキしたクワイの実がアクセントになっています。

シンガポール育ちのスズキは臭みのない味

続いては、高温の炭火で焼き上げることができると人気のジョスパー(Josper)オーブンで焼き上げたスズキ(Josper Grilled Barramundi Fillet with Pickled Chilli sauce、2切でS$34)は、雲南風のチリソースと一緒にいただきます。ふっくらとしたスズキの身は、脂っこすぎることもなく、とても上質な味わい。チリソースとライムで、さっぱりといただけます。

ダイナミックな子豚の丸焼きはパーティーなどにもぴったり

キャベツの千切りとチリソース、マスタードソースでどうぞ

スローローストした子豚の丸焼き。中国風の場合は、皮に穴をあけるのが特徴だそうですが、こちらは穴をあけず、表面をつやつやに仕上げるスペイン風。スペイン産の子豚を、表面を程よく乾燥させてからホワイトビネガーなどに漬け込み、焼き上げたものだそう。パリパリの皮、そして皮の下の程よい脂身の層が楽しめます。

スパイスの効いた子羊とタイ風のサラダの相性もばっちり

タイ風のグリーンマンゴーのサラダを添えた子羊のショートリブのロースト(Roast Australian Baby Lamb Short Ribs、S$34)は、中国の五香粉にフェンネルシードを加えることで、中華の香りにエスニックさが加わり、新しい味に仕上がっていました。

シンガポールのローカルフードをパエリアにアレンジ

続いては、今考案中の新メニューということで、チキンライスパエリアを試食。
日本米を使って、もっちりとした食感のあるパエリアですが、材料はレモングラスやパンダンリーフ、ココナッツミルクなど、すべてチキンライスの材料。ジョスパーオーブンで仕上げているので、炭火の香りがついた鶏肉、もっちりとした食感の日本米、鉄板の上で香ばしくカリカリに焼き上がったおこげの部分。シンプルなチキンライスに、いろいろな表情が加わっておいしかったです。

2種類のローカルフードの良いところ取り

そして、高温でいためる中華の手法、Wokの香りがついたローカルフード、チャークイティオ。ふつうはホーフン(河粉)と呼ばれるきしめんのような米の麺を使うのですが、リッキーシェフは、麺のように細く切ったプラタ(インド系のパンケーキのようなローカルフード)に変えた一皿(Wok Fried "Prata" Seafood Char Kway Teow、S$20)。表面はカリッと、内側はふっくらと焼きあがったプラタが、たっぷりの魚介の旨みと、焦げた中国醤油の香ばしさを吸い込んでいます。

この日はスリランカ産のカニが登場

そして、何よりもおすすめなのが、シグネチャーのチリポメロクラブ(Blue Lotus Signature Chilli Pomelo Crab、S$7.8/100g、写真は身をはさみにつけたStuffed Crab Craw、S$24)。
チリクラブをアレンジした料理で、シンガポールを代表する新聞、ストレイツ・タイムズ(Staraits Times)紙で、キング・オブ・チリ・クラブ(King of Chili Crab)とも評されたことのある味が魅力。

実際に食べてみると、干しエビで作った伝統的な調味料、サンバル・ブラチャンがしっかりと香り、ジンジャーフラワーやアッサムジンジャーなどが織りなす、深みのある味わい。シンガポールで愛されている、夏ミカンのような味わいのポメロの粒が、さわやかなアクセントになっています。

「シンガポールのローカルフードは、甘くてスパイシーなものが多いけれど、全体的に砂糖も塩も控えめにして、素材の味を生かした料理を心掛けている」というRickyシェフ、どちらかと言えば甘みが控えめのソースですが、添えられているやや甘めのマントウが、良いバランスです。

ドリアンのピュレが乗ったミルクかき氷など、様々なデザートも

そしてデザートは、ドリアンのかき氷(Chilled Durian Puree Shaved Ice、S$12)。D24というブランドのドリアンをピュレに仕上げ、下はミルクのかき氷。キャラメライズしたバナナとのコンビネーションです。

唐辛子などのスパイス、東南アジアらしい香草やカラマンシー(小さなライム)を使って、軽やかにシンガポール風に仕上げた中華。火の入り方も程よくて、くつろいだ雰囲気で、美味しいアジア料理を楽しみたいという方にお勧めです!

<DATA>
■ ブルー・ロータス(Blue Lotus)
営業時間:ランチ 11:30〜15:00(土曜・日曜)、ディナー 18:00〜22:00 (無休)
住所:31 Ocean Way #01-13 Quayside Isle, Singapore 098375
電話: +65 6339 0880
アクセス:シンガポール中心街からタクシーで20分ほど

仲山 今日子

仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイドブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。

    

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