台北市内には、パワースポットと呼ばれる場所がいくつかある。中でも有名なのが、保安宮・行天宮・龍山寺の3大パワースポットだ。 保安宮は、正式名を「大龍峒保安宮」といい、中国福建省から移住した人々が保生大帝という神を祭るため1830年に完成した寺院である。保生大帝とは、呉偉本という実在の名医を神格化した神様で、病気回復、健康長寿を祈れば効果絶大と言われている。 保安宮本殿、実に均整のとれた堂々とした建築物である。 本殿の正面に、龍が巻き付いた八角の石柱(八角蟠龍幨柱(はっかくはんりゅうたんちゅう))がある。外側の2本は創建当初のもので、真ん中の2本は日本統治時代の1918年(大正7年)に追加された。いずれも、見事な石の彫刻で一見の価値がある。 保安宮でもうひとつ注目すべきは、陶器で作られた屋根の上の飾りである。こういった装飾は、台湾にある中国寺院ではよく見られるが保安宮のものは特に立派である。龍は鱗一枚一枚丁寧に作られており、上の方の人物群像は一人一人の表情まで細かく作られている。肉眼ではなかなか細かいところまで見えないが、写真に撮って拡大してみるとよくわかる。 門の扉には、見事な一対の扉絵が描かれている。保安宮は、中心に本殿があり、その周りを、この門から境内を取り囲むように回殿が巡らされている。回殿に沿って11の小部屋があり、ここにも様々な神々が祀られている。 こちらが、本殿に祭られている保生大帝。なんとも威厳のある顔立ちの神様である。 回殿に祭られている、媽祖(まそ)とも呼ばれる天上聖母。航海や漁業の守護神である。この他回殿に祭られているのは、神農大帝、関聖帝君、註生娘娘などの神々である。 行天宮は三国志の英雄、関羽を祭っている。関羽は劉備玄徳に仕え、どんなことがあっても決して主君を裏切らず最後まで仕えたため、信用の象徴とされ商売の神としてあがめられている。この行天宮は1967年に完成した比較的新しいお寺で、鉱山の経営でも成功した「玄空師父」が建立したものである。 行天宮の境内は、真剣にお祈りをする人たちでいつも賑わっている。台北の人々の信仰の深さがよくわかる。 こちらが関羽が祀られている本殿。暑さ除けのミストが、なんとなく神秘的な雰囲気を醸し出している。 境内では、「収驚」というお祓いを受けることもできる。行列に並んで順番を待ち、自分の番が回ってきたら、青い服を着た効労生に自分の名前を告げ、お祓いを受ける。これを受けると精神が安定し元気になると言われている。効労生とは、行天宮で修業している人々のことで、ボランティアでこのお祓いを行っている。 保安宮と行天宮は道教の寺院だが、龍山寺は仏教寺院で、聖観音菩薩を祭っている。しかし、関羽や天上聖母、さらには日本の天神さんまで祀られており、様々なものがミックスされている。日本のように、神社、お寺という明確な区別は無いようである。龍山寺は、清時代の1740年に完成した歴史あるお寺である。第2次大戦中に米軍の爆撃で大破したが、本尊の観音菩薩像は無事であった。現在の伽藍は、1953年に再建されたものである。 昼間も夜も多くの人々で賑わう龍山寺。日中に訪れるのもよいが、夜になるとひときわ神秘的な雰囲気だ。 龍山寺の屋根にも、保安宮のものとはちょっと表情が違う龍が鎮座している。こちらの龍もなかなか見事だ。夜空を背景にライトアップされ、今にも飛び立ちそうに見える。 本殿(圓通寶殿)の後ろに、関帝聖君(関羽)、天上聖母(媽祖)、文昌帝君(天神様)が祀られている。 さて、台北の重要なパワースポットとして、もう一つ加えておきたいのが迪化街にある霞海城隍廟だ。恋愛の神様、月下老人を祭っている。これに関しては、既に別稿で紹介したので、そちらをご参照いただきたい。台北パワースポット・迪化街 懐かしい風景と縁結びの神様 【施設情報】大龍峒保安宮住所:台北市大同區哈密街61号営業時間:6時30分~22時休み:年中無休行天宮住所:台北市中山区民權東路二段 109 号 営業時間:3時30分~22時ごろ休み:年中無休龍山寺住所:台北市広州街211号営業時間:6時~22時休み:年中無休 阿部 吾郎24年間旅行会社に勤務した後、2013年に独立し「トラベルガイド株式会社」を設立。「人がそこに行きたくなる写真」をテーマに国内外で写真撮影を行っている。同社が運営するマレーシアの旅行情報サイト、トラベルガイド・マレーシアにも自身で撮影した写真が多数使われている。その他、旅行写真素材の販売、旅行記事の執筆、旅行会社へのコンサルティングなどを手掛る。最近はマレーシアに年4~5回程度渡航。その他、旅行会社時代の経験も含め得意な方面は、台湾、香港、マカオ、シンガポール、アイスランドなど。