マレーシアの首都、クアラルンプールから電車で約2時間。マレー半島の北西部に位置するペラ州の州都イポー。19世紀に錫の鉱山で栄えたマレーシア第3の都市。市内には多くの歴史的建造物が残っている。
この街の郊外には、石灰岩の台地が広がり、奇妙な形をした岩山が林立する独特の景観が見られる。秋芳洞で有名な山口県の秋吉台を思い出す。こういったカルスト地形の土地には、石灰岩が雨水や地下水によって浸食されてできた洞窟が多い。
当然、イポーにも洞窟が多く、もともと中国系の住民が多いという事情もあり、洞窟を利用した中国寺院がいくつもある。その中でも、特に規模が大きく、見応えのあるものを２つ紹介する。
まず1つ目は、三寶洞（サンポトン）。イポー市内から約5?南のグヌン・ラパにあるイポー最古の洞窟寺院で、19世紀後半に建立されたものだ。
門の後ろに、洞窟寺院への入口がある。そそり立つ崖にぽっかりと口があいているような感じだ。
中に入ると、意外と広く、様々な仏像が祀られている。洞窟内の側面は漆喰のようなもので固められているが、天井部分は岩がむき出しになってる。
岩肌をそのまま彫って作られた祠に仏像が並んでいる。他では見たことのない、神秘的な雰囲気だ。
仏像が置かれている広い場所から、洞窟はさらに奥へと延びている。
洞窟をずっと進んでいくと、この場所に出てくる。
そして、見上げると立派な中国建築の寺院が建っていて、まわりは小さな広場のようになっている。四方は崖に囲まれており、洞窟のみがここに通じる道だ。洞窟を出た瞬間、コナンドイルの「ロストワールド」を思い出した。恐竜でも出てきそうな雰囲気だ。
建物をよく見ると、赤と白を基調にしたデザインがすばらしい。よくこんなところに建築資材を運んで、寺院を建てたものだ。
広場の隅には池があり、何故かたくさんの亀がいる。そういえば、入口のところで老人が空芯菜の束を売っていた。あれは、お土産用ではなく亀のエサであったことに気づいた。
三寶洞へは、イポー市内から車で15分程度。年中無休で、9時30分ごろから15時30分ごろまで開いている。入場は無料。
霹靂洞（ペラトン）はイポー市の北6?にあり、1926年に建設された中国寺院で、イポー周辺にある石灰岩洞窟の中につくられた寺院の中でも最大級の規模を誇る。
赤い門の向こうに、洞窟の入り口がある。
洞窟に入ると、すぐに広いホールのような場所に出る。そして、正面には、12.8メートルの巨大な金色の大仏様が鎮座している。その左右をこれまた金色の四天王が固めている。天井や壁面には、龍や天女の壁画が描かれている。
洞窟が大きいので、大仏様の大きさをあまり感じないのだが、近くによってみるとやはり大きい。目を見開いた、はっきりとした顔立ちが印象的だ。
大仏様の右横のところから、洞窟はさらに奥へと続いている。大仏様のところほど大きくはないが、もう一か所ホールのようになっている場所がある。
洞窟内には、全部で40体以上の仏像が祀られている。こちらは、千手観音像。
洞内の仏像は、ほとんどが金色に輝いている。
2つ目のホールから、洞窟は上に向かって伸びている。
ずっと上に登って行くと、日の光が見えてくる。
そして、さらに登ると崖の上に出てくる。この洞窟は、竪穴の下にホールが広がっている構造になっていたのだ。
霹靂洞（ペラトン）へは、イポー市内から車で20分程度。年中無休で、9時〜16時まで開いている。入場は無料。
イポーにある２つの洞窟寺院を紹介したが、いかがだっただろうか。日本にこんな場所があったら、参道にたくさんのお店が並び観光客が大挙して押しかけるような観光地になるだろう。しかし、この２つの寺院はそれほど観光客の数も多くなく、ゆっくりと見ることができる。
イポーには、この他にも魅力的なスポットや地元グルメがあるが、またの機会に紹介したいと思う。
阿部 吾郎
24年間旅行会社に勤務した後、2013年に独立し「トラベルガイド株式会社」を設立。「人がそこに行きたくなる写真」をテーマに国内外で写真撮影を行っている。同社が運営するマレーシアの旅行情報サイト、トラベルガイド・マレーシアにも自身で撮影した写真が多数使われている。その他、旅行写真素材の販売、旅行記事の執筆、旅行会社へのコンサルティングなどを手掛る。最近はマレーシアに年４~5回程度渡航。その他、旅行会社時代の経験も含め得意な方面は、台湾、香港、マカオ、シンガポール、アイスランドなど。
