台北市内に残る日本統治時代の名建築

1895年から1945年の約50年間、台湾は日本の統治下にあった。台湾全土に、この時代の建物が多く残されている。日本では保存されていないような建物が、台湾では今でも目にすることができるのである。
その中でも、台北市内にある代表的なものをご紹介する。

日本統治時代の建物として最も有名なのが総統府である。日本統治時代は、台湾総督府として台湾統治の中心を担った。60メートルの時計塔を備えたルネサンス様式の建物で、赤レンガと白い石の組み合わせが見事である。
竣工は1919年で、設計者は東京駅を設計した辰野金吾の弟子、長野宇平と森山松之助である。
戦争中の米軍の爆撃で一部損傷し、内部は全焼した。後に修復されて現在に至っている。

1915年に台北総督府博物館として建てられた、現国立台北博物館。ギリシャ神殿のような石柱と中央のドームが特徴の豪華な造りでひときわ目を引く建物である。もともとは、第四代台湾総督の児玉源太郎と民政長官の後藤新平の業績をたたえた記念館であった。

中央のドームは、近年修復された東京駅のドームをも凌ぐ美しさである。博物館の内部は撮影禁止だが、このドームがある中央のロビーと一部の常設展示だけは撮影が許されている。林立するギリシャ様式の柱も見事である。

現在、収蔵品として展示されている児玉源太郎、後藤新平像は、日本の彫刻家、新海竹太郎によるもので、第2次大戦前まではロビーのアルコーブに置かれていた。100周年を迎えた2008年に、専用の陳列室が作られ、改めて展示されるようになった。

1936年に竣工した建物で、当時は台北公会堂と呼ばれていた。市民のための公共施設で、演劇などが行われていた。現在は、孫文にちなんで中山堂と呼ばれている。戦後、日本の降伏式典が行われた場所でもある。

中山堂2階東側のテラス。蒋介石と夫人が広場に集まった群衆に対して当選のあいさつをした場所である。

中山堂の内部は自由に見学できる。古い学校のような雰囲気で懐かしさを感じる。

中山堂の中にある「蔡明亭珈琲走廊」という、クラシカルで落ち着いた雰囲気の喫茶店。お茶やデザートの他、軽食メニューもある。

日本統治時代、建成尋常小学校として使われていた建物で、現在は台北市当代藝術館という現代アートの博物館となっている。

ロビーでチケットを購入し、荷物をロッカーに預ける。

廊下があって教室が連なる、小学校がそのまま美術館となっている。講堂も大きな展示室として使われている。約2か月ごとに変わる現代アートの展示を見るのも楽しいが、建物自体を見るだけでも十分楽しめる。

台湾の原宿と呼ばれる若者の街、西門町に残る1908年建築の赤レンガの建物。当時、市場として使われていた。戦後は一時映画館として使われていたが、その後老朽化が進み放置されていた。2007年に現在の形に整備され、劇場、カフェ、工房などに利用されている。

西門紅楼の1階には、お土産品の販売コーナーや、日本統治時代の古い看板などを集めた展示コーナーがある。2階がレトロな劇場になっている。

最後に、これまで紹介した名建築とは少し違うが、東門市場をご紹介したい。日本統治時代から今に至るまで市場として営業している。日本統治時代は、千歳町市場と呼ばれていた。

以前は、日本国内にもこのような市場がたくさん残っていたが、最近では一部の地方都市をのぞいて、ほとんど見ることができなくなった。迷路のように広がる市場を散策するとタイムスリップしたような気分を味わえる。スーパーとは違い、部位ごとに塊のまま置かれている肉、魚も切り身ではなくそのままの姿で並べられている。南国のフルーツや野菜などを見ているだけでも楽しめる。

【データ】
総統府
住所：台北市重慶南路1段122号
Tel：02-2312-0760
営業時間：9:00~11:30
休み：土・日・祝日
入館料：無料
＊入館時パスポートが必要。
＊毎月1回、週末に特別開放日あり。

国立台湾博物館
住所：台北市襄陽路2号
Tel：02-2382-2566
営業時間：9:30~17:00
休み：月曜日（月曜日が祝日の場合開館）
入館料：20元

中山堂
住所：台北市延平南路98号
Tel：02-2381-3137
営業時間：9:30~22:00
休み：無休
入館料：無料

台北当代藝術館
住所：台北市長安西路39号
Tel：02-2552-3721
営業時間：10:00~18:00
休み：月曜日
入館料：50元

西門紅楼
住所：台北市成都路10号
Tel：02-2311-9380
営業時間：11:00~21:30（金・土曜日は22時まで）
休み：月曜日
入館料：無料

東門市場
住所：台北市羅斯福路1段８号
営業時間：7:00~18:00
休み：月曜日