人間が住みやすい環境を作り上げる地球上は、無数の生物が生活をする場でもあるのです。日常生活の中で身近に暮らす動物を興味深く眺める機会は多くはないことでしょう。ところが、どの動物も種族を保存し生き続けるためのユニークな習性をもっているのです。
ガラパゴス諸島は太平洋上で100を超える島々で形成されています。この内、人間が集落を作っているのは4島のみで、大半が人手の全く加わらない無人島です。各々の島で自然の生態系が維持され、日本では見かけることのできない珍しい生物の楽園となっています。
ガラパゴスの無人島の一つノース・セイモア島は、サンタ・クルス島などからのツアーで訪れることができます。ツアーには自然環境を守る役割を担ったナチュラリストが必ず同伴します。
サンタ・クルス島から2時間あまりでノース・セイモア島の沖合に到着です。クルーズ船は岸壁に横付けすることができないため、ゴムボートに乗り換えてのウエット・ランディングとなります。上陸するとツアー・メンバーが近くにいても、大海原に浮かぶ島を独り占めしたような錯覚を覚えます。
波打ち際から島の中に入ると溶岩の大地に根を下ろす植物の林に分け入ります。白い樹肌のパロサントは生気を失ったかのようにも見えますが、乾季に葉を落としているだけで、雨季になると瑞々しい緑の葉で覆われます。
モノトーンな光景に彩りをつけるのがグンカンドリです。ほとんど天敵のいないガラパゴスでは身を隠す必要もなく白色の枝で、大きな黒色の羽根を休めています。さらに目を引くのが鮮やかな赤色の装飾です。これはグンカンドリのソウが喉袋を膨らませているのです。自慢の喉元の袋を膨らませて、メス鳥に求愛しているのです。ところが、カップル成立のための決定権はオス鳥には全くなく、メス鳥が近寄ってくるのをひたすら待ち続けるのです。
控えめなグンカンドリのオスと比べると、アオアシカツオドリのオスは少し積極的です。先ず、メス鳥に近寄りクチバシと尾羽を空に向け翼を大きく広げます。スカイ・ポインティングと呼ばれるユニークな仕草をしたかと思うと、鮮やかな青色の2本の足で四股を踏み始めます。メスがオスのリズムに合わせてダンスを踊り始めればペアが成立するのです。そして2羽のアオアシカツオドリは、体を寄せクチバシを絡み合わせます。
アホウドリになると礼儀正しい挨拶をしてから意思表示をするのです。オス鳥は最初にクチバシを回転させながらおじぎをします。その後、互いのクチバシを軽く打ち合わせ呼吸がぴったり合うと番いの誕生です。一度契りを交わした夫婦鳥は一生添い遂げます。
珍しい鳥たちのユニークな身振りに気づくと、自然と微笑んでしまいます。季節や時間を変えて訪れると新たな発見がえられることでしょう。でも、人目を惹きつけるような行動をしなくても、思わず目を引き付けられる鳥も数多くいます。アカメカモメやアオメバトは、目元がとてもチャーミングです。
2時間足らずの島歩きが終わり波打ち際に戻ると、海岸線をカッショクペリカンが自由に飛び回っています。人を恐れることがないため、目の前を横切ります。全長2メートルの羽根を広げて向かって来られると思わずのけぞってしまいます。食事の時間になるとカッショクペリカンは水平に開いた羽根をたたみ、垂直方向に90度進路を変え海中にダイブしていきます。大きな喉袋を漁網にした狩りの始まりです。
【ノース・セイモア島へのアクセス】
個人で行くことはできません。
宿泊施設のあるサンタ・クルス島のプエルト・アヨラの旅行社でツアー予約ができます。