東部の小さな町　思い出のリストランテで頬張る最高のサンドイッチ

何年ぶりかで訪れた『リストランテ・パエザーノ』。初めてこのレストランを訪れたのは2002年。このお店がまだ、道路を隔てた斜向かいの平屋の小さな店舗で営業している頃でした。リトランテというよりはピッザリアという呼び名のほうがふさわしかった当時のピザ屋『パエザーノ』は、その近所に住むアメリカ人の友人に誘われて、ランチの待ち合わせをした場所でした。

初めて入ったピザ屋のカウンターの向こうのこぢんまりとした厨房では、お揃いの黒いTシャツを着用した3人の男性の従業員が、愉快そうに外国語を交わしながら、粉だらけの手でピッツァ・ドウのソースの上にたっぷりのぺパロニをのせたり、はみ出しそうな位の量のチーズステーキをパンにはさんだりしていました。
がらんとした店内のテーブル席に着いているのは、私と友人だけなのに、彼らは忙しない様子で手を休めずに働いていました。見ると、トマトベースのピザソースやハーブや玉ねぎの匂いの充満する厨房のオーブンのそばには、ピザのテイクアウト用のボックスが５つ重ねてありました。

カウンターの隅に無造作にセロテープで貼ってあった『ご自宅の掃除を請け負います』という手書きの広告が目に留まり、カウンターを挟んで向かい側で注文をとってくれた男性に、その広告主が知り合いなのかを尋ねると、彼は厨房から出てきて自己紹介をした後、「パエザーノ」は彼と親族が経営していること、広告主の女性はよくお店にやってくるお客様で彼女も外国の出身であること、また、お店は3年ほど前に開業したばかりだけれど、近い将来近くの大きな店舗に移るつもりでいることなどを話してくれました。

私の生まれた国がどこなのか訊かれたので、日本であるを告げ、席に戻ってから、窓際のテーブルの向かい側に座っていた友人に「お国はどこですか？って！私アメリカ人に見えない?どこへ行っても英語で喋りまくってくたびれて自宅に帰って、鏡を見てからびっくり仰天することがあるのよ。『あら、こんなに英語の中に埋没した暮らしをしてるっていうのに、どうやらまだ髪の色だけは金髪に変わっていないようじゃない！』ってね。」と両掌を挙げるジェスチャーで大袈裟に嘆いてみせると、彼女は、頬を紅潮させてげらげら笑ってみせました。

あれから10年以上の歳月を経て、『パエザーノ』は小さな町の中央に位置する煉瓦造りの大きな店舗に移りました。テーブル席も数えきれないほどに増え、店の奥には大勢でパーティを催すことができるほどの規模の別室も備わっているとのことでした。

久しぶりに訪れたこの日、私がオーダーしたのは、クラブサンドイッチ。夫がオーダーしたギロ・サブも当時と変わらない抜群のおいしさで、新鮮なレタスやトマトがたっぷりはさんであるのも昔のままです。食べきれないほどの量の、揚げたてのフレンチフライも添えられていました。

初めてこのお店を訪れた日に、瞳を輝かせながら将来の展望を話してくれたオーナーの方の姿を探してみましたが、カウンターの向こう側の大きな開閉扉で仕切られた厨房の向こう側を覗くことはできませんでした。

テーブルにサンドイッチを運んでくれたサーバーの男性は、彼の親戚なのかなという思いが一瞬過りましたが、店内の写真撮影を許可していただけるかどうかだけしか尋ねることができませんでした。どこか面影が似ていなくもない若いサーバーの男性は、にこやかに「もちろん、オッケーですよ。」と答えると、すぐにカウンターに戻って行きました。

初めてお店を訪れた時にお会いしたオーナーの方にお会いすることはできませんでしたが、その日、大きな額に入れられて壁面を飾っていたモノクロームの写真の何点かは、確かに、10年以上前にあの小さな店内で私が見た、当時の写真その物なのでした。

【データ】
パエザーノズ・ピッツァ・イタリアン・リストランテ(Paesano's PIZZA Italian RISTORANTE)
住所：1 West Main Street New Freedom, PA 17349
Tel：717-235-4879
URL：http://www.paesanosnewfreedom.com/
冬季の営業時間(10月1日~4月30日まで)：
月曜閉店、火~木曜日 11:00 ~ 21:00、金・土曜日 11:00 ~ 22:00 日曜日 12:00 ~ 21:00
アクセス：I-83 号線36番出口より、サスケハナ・トレール北（Susquehanna Trail N）へ。ワシントンDCユニオンステーションから運転で約1時間40分。

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