前回、ペナン島ジョージタウンのみどころをまとめて紹介したが、私のお気に入りスポットをあえて1つ外しておいた。それがクー・コンシー(邸公司)である。ここは単独で取り上げてご紹介したかったからだ。
クー・コンシーは、18世紀後半に中国福建省からこの地に渡ってきた邸一族が1906年に建立した中国式寺院だ。コンシー(公司)とは、先祖を祭る廟のことである。ここには邸一族の先祖たちが祀られている。クー・コンシーの近くに、葉一族を祭った、ヤップ・コンシー(葉公司)というのもある。
クー・コンシーの外観である。まず目に付くのは屋根の装飾である。金色の飾りも多用されており、なかなかゴージャスな様相である。
さて、このクー・コンシーのどこをそんなに気に入ったかと言うと、それは装飾の見事さ、精緻さである。まずは、私が特に注目している4体の石像をご紹介したい。上の写真は、クー・コンシーの正面階段の前からお堂の入口方向を写したものである。階段の手すりの一番下と上に、左右1体ずつ石像が立っている。番号を付けておいたので、以下順番にご紹介しよう。
階段の下側左の石像である。なんともユーモラスないい表情をしている。ふくよかな感じが良く出ていて、「こんな人見たことある」と誰もが思ってしまいそうな出来栄えである。
階段の下側右の石像がこちら。今度はやせ形の僧侶だ。そう、太った僧侶とやせた僧侶が左右対になっているのだ。こちらのやせた方も、どこかで見たことがあるような気がする。味のあるいい顔だ。
続いて上の左側。この服がすごい。石を彫って作られているのに柔らかい感じがする。だいぶ落ちてしまっているが、ところどころに色が付いている。できた当初はかなりカラフルな石像だったようだ。表情は歯を食いしばり、怒っているのか?なにか持っているが、何なのかよくわからない。
上の右側。こちらも左側の像と対になっている。こちらの方が色がよく残っている。鮮やかなブルーが見て取れる。顔は、どちらかというと柔和な感じだ。何か、植物のようなものを持っている。個人的には、この石像が一番気に入っている。それにしても見事な出来栄えだ。
クー・コンシーには、他にもいろいろと面白いものがある。こちらは、警備兵として雇われた外国人兵士の像。おそらくインド人ではないだろうか。それにしても、ここの石像は顔がすごい。よくできている。マダムタッソーの蝋人形に対抗できそうだ。
階段を登ったところのテラスを見回しても、驚くような装飾がたくさんある。まずこの柱である。芯となる石柱があり、その上に石を彫って作った網状の彫刻が被せてある。どうやったらこんなものを作れるのだろうか。
壁側を見ると、彫刻がびっしりと施されている。数か所に明り取りの窓があるが、この彫刻がまた細かい。
おそらく麒麟だろうか、色使いがすばらしい。
お堂の入口に2匹の獅子がいる。もちろん石で出来ている。
よく見ると、口の中に玉がある。これは、後から入れたものではなく、削り出したものとしか考えられない。
この場所からは屋根の装飾もよく見える。こちらもなかなか細かい。
お堂の内部だ。ここに邸一族が祀られている。まばゆい金ピカの装飾、左右の壁画、欄間の彫刻、とにかくド派手だ。堂内もゆっくり観察すると、いろいろなものが見つかる。
例えば、この祭壇の前に置いてある壺。この鷹は今にも飛び立ちそうなほど生き生きしている。他にもたくさんおもしろいものがあるが、すべて紹介しきれないので、是非実際に行って探してみてほしい。
クー・コンシーには展示館が併設されている。
写真は、邸一族の代々の首長の名前である。40の名前が表示されているが、何故か順番はバラバラで、一番古いのが2世、一番新しいのが47世である。少なくとも、47代は続いているということだ。
展示館は、それほどおもしろいものではない。当時の暮らしを再現したジオラマなどがある程度だ。時間が限られているなら、石像や堂内をゆっくり見ることをお勧めする。
住所:18 Cannon Square, Penang 10200, Malaysia
行き方:ハーモニーストリートを真っ直ぐ南に向けて歩くと、アルメニア通りとの交差点からキャノンストリートに変わる。正面にアチェモスクの塔を見ながら進んで行くと左手にクー・コンシーの入口がある。
営業時間:9:00-17:00
休み:年中無休
入場料:10リンギット(12歳以下の子供は無料)
阿部 吾郎
24年間旅行会社に勤務した後、2013年に独立し「トラベルガイド株式会社」を設立。「人がそこに行きたくなる写真」をテーマに国内外で写真撮影を行っている。同社が運営するマレーシアの旅行情報サイト、トラベルガイド・マレーシアにも自身で撮影した写真が多数使われている。その他、旅行写真素材の販売、旅行記事の執筆、旅行会社へのコンサルティングなどを手掛る。最近はマレーシアに年4~5回程度渡航。その他、旅行会社時代の経験も含め得意な方面は、台湾、香港、マカオ、シンガポール、アイスランドなど。