シンガポールの中央郵便局として建てられたフラトンホテルの系列ホテル、フラトンベイホテル。そのフラトンベイホテルのロビーフロアに位置し、元々入国管理所だった歴史的な場所の内側をリノベーションして作られたレストランが、クリフォード・ピア。「ピア=波止場」という名前通り、昔は目の前にそびえるマリーナベイサンズもなく、広々とした大海原に面していました。そして、長い航海を経てやってきた人たちが初めてシンガポールの地を踏んだというロマンあふれる場所。
そんな中で提供されているのが、ローカルフードを英国ゆかりのアフタヌーンティーにアレンジした、ヘリテージアフタヌーンティー(S$49)。そして、レシピを考えたのは、建国の父、リークアンユーの姪にあたる、料理研究家のシャーメイ・リー(Shermay Lee)。彼女の祖母、つまりリークアンユーの母のレシピを受け継いだレシピは出版もされていて、人気を博しています。
そんな彼女が、様々な種類のローカルフードを、食事系8品、スイーツ8品という、一口サイズに仕上げたのがこのヘリテージアフタヌーンティーです。紅茶は、シンガポールの有名ブランド「TWG」、そしてさらにローカル感を味わいたいという方には、シンガポール風のコーヒー「コピ」、マレー風紅茶「テ・タリ」、バラの香りのミルク風味の飲み物、「バンドン」などから選ぶことができます。私は「バンドン」をいただきました。鮮やかなピンク色で、しっかり甘くて、バラの香りが異国情緒たっぷり。
まず出てきたのは、チリクラブにつきものの揚げパン、マントウにチリクラブを挟んだサンドイッチ、そして豚の中華風角煮を挟んだパン、コンババオ(Kong Ba Bao)。大きなカニがドーンと出てくるので、少人数では頼みづらく、かつ食べづらいチリクラブですが、サクサクのマントウに挟まっているので食べやすく、殻をむく手間もありません。
その他の食事系のメニューからいくつかをご紹介すると、チキンカレーは今はほとんど失われてしまった伝統的な技法で焼かれた、レースのような繊細なクレープ、ロティ・ジャラ(Roti Jala)に包まれています。中華風の炭火焼の干し肉バクワ(Bak Kwa)は、細かく刻んでオープンサンドイッチ風に。スパイシー魚のココナッツ煮込みオタ・オタ(Otak Otak)は、バナナの皮の代わりに、パイ包みに。春巻きは、中華風の小麦粉の皮ではなく、シンガポール伝統のプラナカン風で、卵をたっぷり使った皮で、カニや中華風ソーセージを巻いたもの。この、卵の皮の春巻きは、今ではなかなか見られない貴重なもの。プラナカン料理の代表格、クエパイティー、別名「トップハット」は、帽子や王冠のようなサクサクの器の中に刻んだ野菜が入っています。
スイーツ類は、バラの香りのバンドン(Bandung)のマカロン、パンダンの香りのカヤ(Kaya)カスタードを巻いたロールケーキ。ココナッツを固めたケーキなど、ローカル感あふれるもの。シンガポールの国旗をイメージしたという、ハイビスカスのジャムで星形を描いたアーモンドクッキーなど、目でもシンガポールを満喫できます。旧正月の時期ということで、スコーンはパイナップルとココナッツ。添えてあるのも、クロテッドクリームだけでなく、自家製のカヤジャムやベリーのジャム、薬味にはシンガポールらしいチリソースまで揃っていました。
特にこのチリソースは、リークアンユーの母直伝の味として知られています。ちなみにこのチリソースは瓶詰で売られていて、フラトンベイホテルのショップで購入することもできます。白を基調とした美しい空間、華やかな3段トレイを前に、ゆったりと当時に思いを馳せてみるのもよさそうです。
【データ】
店名:ザ・クリフォード・ピア(The Clifford Pier)
営業時間:ランチ 12:00〜14:30(平日のみ)、ヘリテージ・ディムサム(点心)ブランチ 11:30〜14:30(土・日・祝日)
アフタヌーンティー 15:30〜17:30、ディナー 18:30〜22:00、サパー 22:00〜24:00(日〜木曜)、22:00〜25:00(金・土曜)
住所:Fullerton Bay Hotel 80 Collyer Quay, Singapore 049326
Tel: +65-6597-5267
アクセス:MRTラッフルズプレイス駅から徒歩5分ほど
仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイド。ブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。