18世紀後半、英国人のキャプテン・フランシス・ライトがペナンに上陸、この地に英国東インド会社の支店を置きイギリス領としました。19世紀に入って中継貿易の拠点として栄え、ジョージタウンも発展していきました。
今も当時の建物が多く残るこの街は、2008年にマラッカとともにユネスコ世界文化遺産に登録されました。
ジョージタウンの中心に、マスジット・カピタン・クリン通り(通称ハーモニーストリート)という真っ直ぐな通りがあります。この道の起点になる場所にあるのが、セントジョージ教会です。
セントジョージ教会は、1819年に建てられた東南アジア最古の英国式教会です。大理石の床と高い尖塔が印象的な白亜の教会で、2010年に行われた大規模な改修で建設当時の姿を取り戻しました。
セントジョージ教会から真っ直ぐハーモニーストリートを進んで行こうと思いますが、その前にちょっと寄り道をして、もうひとつキリスト教の教会をご紹介します。セントジョージ教会に向かって右方向に3分ほど行ったところにローマカトリック大聖堂があります。もとは1786年にフランシス・ライトが初めてこの地に来た時に建てた教会で、現在の建物は1861年に再建されたものです。
祭壇に向かって真っすぐ伸びるタイルの道が美しい教会の内部です。祭壇の正面に美しいステンドグラスがあります。
ハーモニーストリートに戻って南の方向に歩いて行きます。セントジョージ教会から5分ほど行くと観音寺に到着します。ペナン島に入植した中国の広東や福建の人々が1830年に建立したお寺です。
寺院内部には観音菩薩像が祀られており、毎日多くの人々がお参りに訪れます。
観音寺からさらにハーモニーストリートを進むと、左手にスリ・マハ・マリアマン寺院が見えてきます。インド人街に入って回り込むと正面入り口のところに出られます。1883年に建てられたヒンズー教の寺院で、入口上部の塔には様々な神様の姿が見られます。
スリ・マハ・マリアマン寺院の内部です。正面の祠に本尊が祀られています。内部は見学自由で、本尊以外は撮影も可能です。土足厳禁ですので、必ず入口で靴を脱ぎましょう。写真の左側には、上半身が象の神様、ガネーシャが見えます。
ハーモニーストリートをはさんで、スリ・マハ・マリアマン寺院のはす向かいにあるのが、イスラム教のモスク、カピタン・クリン・モスクです。1801年にイスラム教の商人、カウダー・モフディンによって建てられました。カピタン・クリンとは、このモフディンの尊称です。
敷地内には美しい白亜のミナレット(塔)も建っています。この中にインフォメーションセンターがあり、ガイドツアーの受付を行っています。
ハーモニーストリートは、アルメニアストリートとの交差点からキャノンストリートと名前を変え、その突き当りに見えるのがアチェ・ストリート・モスクです。1801年に、インドネシアのアチェ州から移り住んだアラブの胡椒商人が建てたモスクです。
ここまでご紹介した通り、ジョージタウンでは、キリスト教の教会、仏教寺院、ヒンズー教寺院、イスラム教寺院が1本の通りに沿って点在しています。異なる宗教を信仰する人々が、お互いを尊重しながら共存してきた歴史を肌で感じることができます。ハーモニーストリートという、この通りの愛称はこういった事実に由来しています。小さな街に、これだけ様々な宗教や文化が混在することは世界でもあまり類を見ません。このことは、ジョージタウンが世界文化遺産に指定される大きな要因のひとつとなりました。
ハーモニーストリートからは少し外れますが、ジョージタウンのシンボルとも言える歴史的建造物を、最後に2つご紹介します。
パンタイストリートとライトストリートの交差点のロータリー内にある、ヴィクトリ・メモリアル時計台です。1897年に、英国ヴィクトリア女王の時代から60周年を記念して建てられた60フィートの時計台です。横にあるのは、ペナンの語源でもある、ビンロウジュの葉をモチーフにしたオブジェです。
海岸沿いのコタ・マラ公園の横にある白亜のコロニアル調建築がシティーホールです。1903年に英国東インド会社の拠点として建てられました。その後、ペナン市役所として使用され、現在は市議会場となっています。
世界遺産ジョージタウンの代表的な歴史的建造物をご紹介してまいりました。是非、地図を片手に街歩きをしてみてください。
内部が見学可能な建物のみ、見学可能な時間帯をご案内します。
特別なイベントや年中行事がある場合は、この時間帯でも見学できない場合もあります。入場料は、いずれの建物も無料です。
セントジョージ教会
(月-木)10:00-12:00, 14:00-16:00 (金)14:00-16:00
ローマカトリック大聖堂
(月-土)11:00-19:00
観音寺
(毎日)09:00-18:00
スリ・マハ・マリアマン寺院
(毎日)06:00-10:00, 16:00-21:00
*2016年4月まで工事中のため見学不可。外観もシートに覆われて見られません。
カピタン・クリンモスク
(日-木・土)13:00-17:00 (金)15:00-17:00
アチェ・ストリート・モスク
(日-木・土)11:00-17:00
阿部 吾郎
24年間旅行会社に勤務した後、2013年に独立し「トラベルガイド株式会社」を設立。「人がそこに行きたくなる写真」をテーマに国内外で写真撮影を行っている。同社が運営するマレーシアの旅行情報サイト、トラベルガイド・マレーシアにも自身で撮影した写真が多数使われている。その他、旅行写真素材の販売、旅行記事の執筆、旅行会社へのコンサルティングなどを手掛る。最近はマレーシアに年4~5回程度渡航。その他、旅行会社時代の経験も含め得意な方面は、台湾、香港、マカオ、シンガポール、アイスランドなど。