前回の旅コラムでご紹介した、デザイナーズホテル「ザ・サウス・ビーチ (The South Beach)」 (関連記事参照)。昨年9月にオープンした同ホテルは、サンテックシティーという大型ショッピングモールや、ラッフルズホテルのすぐ近くにあり、地下鉄MRTの駅にも直結していて旅行者には好立地。今回は、2歳の娘と女性専用階「レディースフロア」の部屋に宿泊した時の体験を中心にご紹介します。
フランス人デザイナーのフィリップ・スタルク氏が手掛けた同ホテル。派手な映像アートの正面玄関を通り、ロビーでチェックインした後、エレベーターに乗ると。。。なんと、エレベーター内の照明が赤や青、緑にどんどん変わっていくではありませんか。それだけではありません。その色の変化で、壁に映し出される絵まで変わるのです。これには娘だけでなく、筆者もワクワク。
そんなカラフルな体験をした後エレベーターを降りると、今度は落ち着いた雰囲気の宿泊フロアへ。実は、これもすべて計算されている工夫だそうです。ザ・サウス・ビーチでは、ホテルに入った瞬間からが「旅 (journey) 」というコンセプト。派手な映像スクリーンからカラフルなエレベーター、そして平穏なフロアに移り、最後はリラックスする部屋へ到着する旅をイメージしているそうです。
レディースフロアは女性しか入れない階で、対応するスタッフも女性のみ。女性の一人旅でも100%安心して過ごせる、そんなフロアです。スタッフによると、もし娘ではなく息子だったら、この階には一緒に泊まれなかったというほどの徹底ぶり。レディースフロアの部屋は「ショーケース・ハー (Showcase Her) 」と呼ばれ、予約をする際にベッドの数や部屋の大きさ・レベルなども選べます。
レディースフロアの部屋でしか楽しめないアメニティーも豊富です。面白いのは「ボーイフレンドシャツ」と呼ばれる男性のワイシャツのような部屋着。そしてフェイシャルスチーマー、ペディキュアなどが楽しめるネイル・サンダルセット (マニキュアは要持参) や、自分で作品を作り旅の思い出にする「クラフトキット」なども。置いてあるガウンやハンガーなどはピンク色で、スリッパもレディースフロア専用のデザインです。普通、ホテルのシャンプーだと髪の毛がパサついてしまうことが多いですが、同ホテルのレディースフロアでは、女性スタッフが実際使用して選りすぐった、イタリア発のダヴィネス (Davines) のシャンプーやローションを提供しています。
またデザイナーズホテルだけあって、家具や照明器具、鏡をふんだんに使ったインテリアなど、部屋の隅々までスタルク氏のこだわりが見え隠れしています。ベッドが宙に浮いたように見える鏡のトリックもお見逃しなく。また嬉しいことに、冷蔵庫のソフトドリンクやスナックはすべて無料。そして置いてあるティーバッグは、日本人観光客にも人気のシンガポール発紅茶専門店「ティーダブリュージー (TWG)」のものでした。
同ホテルのバスルームは、白のモダンデザインが気持ちよく、広々としています。また、ゲストに密かに人気なのは、シンガポールではまだほとんど見かけないウォシュレット付きトイレだそうです。そして、お風呂あがりなどでスタッフに会いたくない時や、外出中にスタッフに部屋を見られたくない時に利用したいのが「バトラードア (Butler Door) 」。これは部屋の入口横に設置されているドア付のキャビネットなのですが、大きな郵便ポストのような感じで、ミネラルウオーターやタオルの追加等をそこに届けてくれるようお願いすれば、スタッフが廊下からバトラードアを開けてキャビネット内に置いておいてくれる仕組み。部屋側のキャビネットのドアは普段は閉まっているので、スタッフとは顔を合わす必要がありません。バトラードアは、レディースフロア以外の部屋にもあります。
ラグジュアリークラスのホテルであるだけに設備も最新です。テレビのチャンネル変換画面も見やすく使いやすいほか、提供されているチャンネルが気に入らなければ、自分の好きな番組や映像をスマートフォンからテレビに転送して観ることもできるそうです。旅行先に変換プラグを持っていくのは面倒と感じている方も多いと思いますが、同ホテルではUSBケーブルを差し込むだけで簡単に携帯電話などを充電できるようになってます。
夕食は、娘がまだ小さいのでホテルのレストラン「ADHD (All Day Hotel Dining)」で食べることに。入ったらすぐベビーチェアを持ってきてくれて、子供用の食器も用意してくれました。スタッフが本当に優しくて、高級ホテルにいるのにホッとします。
まずは娘が食べられるように、生パスタの中からリングイーネを選びカルボナーラ(Carbonara with Italian Ham and Air-Dried Pancetta) をトライ。パスタだけでなく上にのっていた生ハムやチーズも絶品で、娘にあげるのがもったいないほど美味しかったです。東南アジアではお馴染みの炒飯「ナシゴレン」と焼き鳥のような串焼き「サテ」のセット (Nasi Goreng Kampung and Chicken Satay) もオススメです。
18階には、市街地が一望できるプールや、最新のジム、ビリヤードや卓球が楽しめるコーナーがあります。子供専用プールはありませんが、プールの一部が深さ50センチになっているので小さな子供でも安心です。今回は風が強く寒そうだったのでプールは断念しましたが、娘は卓球の真似をして遊び、夕食後は18階からの夜景も楽しみ満足。同階にはのんびりできるソファーが沢山設置されていて、部屋からソフトドリンクを持ってきてくつろぐこともできますし、同階にあるバーでドリンクを注文して楽しむこともできます。
朝食ブッフェは夕食を食べたレストラン「ADHD」で。洋食がメインでしたが種類は豊富。コーヒー紅茶はもちろん、カフェラテなども言えば追加料金なしで作ってくれて、さりげなく受け皿にオレンジピールが添えてあったりと、ちょっとしたところまでオシャレでした。
レディースフロア独特のサービス、そしてスタルク氏のデザインやこだわりを楽しむことができるザ・サウス・ビーチ。もちろん男性ゲストも歓迎され、家族や友人と泊まれる部屋や、ゴージャスなスイートルームもあります。今回は子供連れだったので、周りに迷惑をかけないかドキドキしましたが、同ホテルではスタッフが娘に常に笑顔で話しかけてくれたりと、ストレスなく過ごせました。現在はソフトオープニング期間中ですが、同敷地内の商業施設も2016年前半にオープン予定。これから更なる発展が期待できそうです。
【データ】
ザ・サウス・ビーチ (The South Beach)
住所:30 Beach Road, Singapore 189763
Tel:(+65)-6818-1888
URL:http://thesouthbeach.com.sg/
【備考】
地下鉄アクセス:Esplanade MRT Station (直結)、City Hall MRT Station (徒歩5分)、Bugis MRT Station (徒歩5分)
その他:チャンギ空港まで車で15分、オーチャード通りまで車で10分
北野 洋子
2010年末よりシンガポール在住。元ロイター通信記者。
旅先では現地の人の生活を見るのが好きで、シンガポールでもホーカーセンターやローカル店での小さな発見を日々楽しむ。年間パスで何度も通うほどシンガポール動物園がお気に入り。