日本の国土には1万を超える一級河川が流れています。川を渡ると文化や習慣が変化する地域もありますが、向こう岸が異国ということはありえません。ところが、陸続きで国境を接する大陸では川が国境線となっているところが数多くあります。東南アジア最大の大河メコンは、チベット高原を源流として、約4425キロの大地を潤し南シナ海に注ぎ込みます。上流から下流に向かって大きく幅を広げる流れの中に、ミャンマーとラオス、タイとラオス、カンボジアとベトナムの国境線となっている地域があります。タイの東北端ではノンカイの北部をメコンが流れています。川の流れの先に見える国土は隣国のラオスです。異国の姿が間近に見えるのです。人と車の往来を遮るメコンですが、タイとラオスの国境には4本の友好橋が架けられています。その内の1本がノンカイとヴィエンチャンを繋いでおり、陸路で国境を超えることができます。
2014年8月現在で7時30分から18時までの日中に6便のバスが、ノンカイとヴィエンチャンを往復しています。ノンカイからのバスのチケットは55Bですから、日本円換算すると200円前後の格安料金で、タイからの海外旅行ができるというわけです。ノンカイのバスターミナルを発車して10分前後でメコンに架かる橋の袂のタイの出国ゲートに到着します。バスを下車し窓口でパスポートを提示するだけで簡単に出国手続きが終わります。バスに再び乗車すれば国境に架かる橋を一直線に前進します。
タイ・ラオス友好橋は、1994年4月8日に両国を陸路で繋ぐ最初の橋として建設されました。21世紀に入ると、これに続いて3本の橋がメコンに設けられ、文字通り友好のかけ橋となったのです。全長約1170メートルの橋は車であれば1分前後で渡り終えてしまいます。国境越えの感動に浸っている余裕などありません。
メコンの流れを背にするやいなや、バスはラオスの入国審査ゲートに吸い込まれていきます。ラオスの入国審査では2013年2月からスマートパス・システムが導入されています。バスを下車し、窓口でパスポートを提示して5Bの入国税を支払えば、すぐにスマートパスを受取ることができます。次に入国カードを提出し、パスポート・チェックを受けます。僅か30分前後の時間でタイ出国からラオス入国まで手続きが完了してしまうのです。
そして再度、バスに乗車すればヴィエンチャンの市街地に向かって走り始めます。国境からの道の両側には、のどかな田園風景が広がります。コンクリート建築などどこにもなく、民家も人の姿もまばらなため、静かな旅路となります。国境から30分前後で、ヴィエンチャンの中心、タラサート前のバスターミナルに到着です。