秋から連載している大邱紀行ですが、今回は、韓国を代表するベルベットの複合空間をご紹介します。たぶんそう言われても、「いったい、どんな場所なの?」と思う方がほとんどかと思いますが・・・。
かくいう私も、「えっ?ベルベットですか?」と、大邱取材のリストに入っていた『ベルベットギャラリー』の文字を見て、思わず、大邱市観光課の丸山さんに、「ここって重要な観光地なのでしょうか?」と、失礼なことを言ってしまったのです。
もともと大邱は「繊維の町」として有名ですが、ベルベット専門メーカーがあるとはこのときが初耳。伺ってみると、創業は1960年。50年以上の歴史をもつ会社で、韓国で初めて韓国製のベルベットを開発した老舗なのだそうです。
ベルベットと言われて、なぜか興味が湧かなかったのは、ベルベットという素材が、クラシカルでちょっとよそいきなイメージだったからかもしれませんが、
実際に訪れてみると、目からうろこ!特に目をひいたのが、多くのドラマに協賛している衣装やインテリア、小物などが展示されたコーナーでした。
大ヒットドラマ『トンイ』の撮影で使われた、見覚えのある屏風の前には、撮影スポットも設けられていますので、特に時間制限なく、自由に韓服撮影ができるのも魅力です。
私は毎年秋に歴史ドラマツアーを企画していることもあり、特に『トンイ』ファンがメンバーに多いため、「ここに皆さんをお連れしたら喜んでいただけるだろうな〜」と、話を聞きながら、早くも来年に大邱へ来たいと考え始めていました。
というのも、『トンイ』の撮影時には、衣装だけでなく、小物や屏風、棚など、インテリアにいたるまで、ここのベルベットが使われたのだそうです。
イ・ビョンフン監督自ら「この女優さんはこの色が似あうから、こういったイメー
ジのデザインや色でお願いしますね」という、細かいご指定もあったとか。2016年のイ・ビョンフン最新作でも、衣装をすでに打診されているそうですので、最新作の衣装にもぜひご注目ください!
もちろん『トンイ』だけでなく、たくさんの歴史ドラマや現代ドラマで、ここのベルベットが使われており、知っているドラマがズラリ!館内には、これまでに協賛してきたドラマのベルベット製ポスターがたくさん貼られていました。
ところでなぜ、ドラマの衣装にベルベットが好まれるのでしょうか?夏の撮影にはちょっと暑いかもしれませんが、普通の服や韓服よりも上質感があるのに加え、冬の撮影でもシルクより温かく、水洗いもできるため、汚れにも強いのだとか。
最大の長所は、シルクと比べて撮影時に反射がないこと。独特の光沢感はあるものの、周囲の反射や映り込みがないため、撮影に向く生地なのだそうです。
韓服を着て撮影したり、ギャラリー内をいろいろ見ていると、あっというまに2時間近くがたっていましたが、特に何かを買わなくてはならないわけではなく、自由に見学をしたり、韓服撮影も楽しめるので、その点も好感度高し!なぜ、大邱の観光スポットに入れられているのかも、十分ナットクできました。
1階に戻ると、スカーフやバッグ、テディベア、帽子、傘など、ファッション小物を販売しているショップと、カフェがあります。カフェに置かれているソファーや椅子、机はもちろんベルベット製。館内のエレベーターやトイレまでもベルベット製だったのには驚きました。
仕事柄、面白いところには嗅覚が効く私ですが、ほとんど興味がなかったベルベットギャラリーへの印象が、訪れた後にガラリと違ってしまい、自分でもビックリしています。最初の思い込みで行くのをやめなくて、本当に良かったです!
展示品は、時々変わるので、いつ訪れてもまた新しい発見があると思います。ぜひ大邱観光の際には、時間をとって訪れてみてください。
★ヨンドダウム ベルベットギャラリー 영도다움 벨벳갤러리
最寄り駅:2号線慶大病院駅1番出口から徒歩5分
住所:中区公平路4キル39(중구 공평로4길 39)
電話:053-710-3700
営業時間:10:00〜20:00 年中無休
URL: www.youngdoliving.com
木谷 朋子
『留学ジャーナル』の編集者を経て1989年より2年間イギリスへ留学。帰国後はイギリスを始め、ヨーロッパ各地やアジア、オーストラリアなど、世界各地を取材。海外の旅文化や最新の旅行情報、語学、留学をテーマに幅広い分野で執筆活動を続ける。韓国関連の著作:『Live from Seoul』(ジャパンタイムズ)、『人気韓国ドラマロケ地めぐり』(学研)ほか、『るるぶ韓国』、『るるぶソウル』(JTBパブリッシング)では『韓流ブック』を担当。