スイス人シェフ、クラウディオ・サンドリ(Claudio Sandri)シェフが生み出す
メニューを気軽に楽しめるのが、リバーバレーエリア、日系ショッピングモール、リャンコートからもほど近い、モハメッド・スルタンロードに位置する、スパース・パブリック・ハウス(Spathe Public House)。エグゼクティブシェフを務めるクラウディオシェフは、実は名だたるミシュラン星付きレストランで修業を積んだ、ファインダイニング育ち。その料理が手ごろな価格で楽しめると、人気を呼んでいます。
そんなクラウディオシェフに、あえて、カジュアルなレストランを手掛ける理由を聞いてみると、「ミシュランの星がつくレストランはそれはそれで素晴らしいと思う。でも、ミシュランを取ると、店賃は上がるし、細かなデコレーションをするためにスタッフを増員したりと、それだけコストがかかってしまい、料理の代金を上げざるを得ない。星を取ったからという理由で来てくれるお客さんもいるし、そういったお客さんは、高い金額も払ってくれるだろう。だけれども、もっと、料理のおいしさってシンプルなものだと思うんだ。例えば、僕が一番ほっとできるのは、ジューシーなハンバーガーやステーキ。完璧な焼き加減の肉のおいしさ、っていうのは、星付きのレストランと比べればつつましやかな料理かもしれないけれど、それでも、いつも心から食べたくなるんだよね。来た人には、そんな風に食事を楽しんでほしいんだ」。
そんなクラウディオシェフの思いが詰まった、まるで家のように居心地の良い、カジュアルなアメリカ風のダイナー。
まずは、クラウディオシェフが生み出したオリジナル、シグネチャー・ブラックバン・ロブスターバーガー(Signature Black Bun Lobster Burger、S$35)。イカスミのバンズの間には、なんと1尾丸ごとのロブスター、そしてその下にはハッシュドブラウンが入っています。ソースは、ドライパプリカにクミンやコリアンダーなどのスパイスを効かせたややスパイスの効いたもの。このスパイシーさが、ロブスターの甘みをよく引き立てます。甘めのハニービネガーのドレッシングがかかった新鮮なサラダの付け合わせ。
そして、この スパースで面白いのは、大皿で出てくる料理を気取らずに取り分けてほしいと、園芸用と同じデザインの「スコップ」を使うこと。丸ごとのロブスターの甘みと食感を、ワイルドに、手づかみでダイレクトに感じてほしい。そんな思いがこもっています。
そして、もうひとつのシグネチャーのグリルド・リブアイ(Grilled Rib-eye、250g、S$38)。シンプルなグリルだけに、肉の品質の目利きが大切。その時々でベストの肉を見分けて仕入れているそうですが、この日はオーストラリア産のグラスフェッド(牧草を食べて育った)牛肉。表面をカリッと、そして内側はしっとりと。かむと肉のうまみが広がり、脂っこくないのにとてもジューシーで柔らか。横に添えられているボーンマローも、表面はごく薄いカリッとした層、内側はトロリととろけ、キャラメルのような香ばしさで、牛肉と一緒に食べると濃厚な味が広がります。素材の見極めは、クラウディオシェフのメンターの一人だという、ミシュラン2ツ星に輝いたジョエル・アントゥネス(Joel Antunes)シェフに、様々な農場などに連れていかれて学んだとか。
付け合わせのジャガイモも、カリッと、キャラメリゼ感のあるローストで、シンプルな中にも、星付きレストランでのキャリアがうかがえる完成度の高さです。サイドにはさらに、牛肉の付け合わせとして人気の南米のスパイス、チミチュリに、トマトやオリーブなどを混ぜてアレンジした、酸味のあるサルサとグリーンサラダ。
デザートは、タルト・タタンをリンゴではなく、バナナに変えて作った、バナナ・タルトタタン(Banana Tart Tartin、S$16)表面をカリッと焼き上げたバナナと、オリジナルレシピの手作りアイスクリームの温度の対比も楽しめます。トリプルチョコレートのアイスクリームはとても濃厚で満足度の高いデザートです。
そして、デザートトーストが人気のシンガポール、もう一つはニューヨークスタイル・ヨーハッラ・フレンチトースト(NY Style Yo Halla French Toast、S$16)。ブリオッシュのような柔らかいパンをフレンチトーストに仕上げ、バニラアイスクリームとローストしたバナナ、マスカルポーネチーズと生クリームの軽やかな組み合わせ。ブルーベリーの酸味がアクセントになっています。
リバーバレーからモハメッドスルタンロードに少し入っただけの立地、しかも平日も通し営業なのでランチタイムを逃してしまったときや、時間を気にせず、ゆっくりと友達と食事を楽しみたいときにもぴったり。
【データ】
店名:スパース・パブリック・ハウス(Spathe Public House)
営業時間:12:00〜23:00(平日)、10:00〜23:00(週末/無休)
住所:8 Mohamed Sultan Road, #01-01 Singapore 238958
Tel: +65 6735 1035
アクセス:MRTクラークキー駅から徒歩15分ほど(タクシー利用がおすすめ)
仲山 今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川アナウンサー。現在はフリーアナウンサー、ディレクター、ライターとしてお仕事を受けています。シンガポールのテレビ局J Food & Culture TV 勤務、All Aboutシンガポールガイド。ブログ。趣味は海外秘境旅行&食べ歩き、現在約40カ国更新中。