ツェルマットの村は名峰マッターホルンと共に世界的にも有名な観光地です。しかし、そのマッターの谷から一つ西の、アニヴィエの谷は皆様も馴染みが薄いのではないでしょうか? 今回は秘境とも呼ばれる、そのアニヴィエの谷に点在する3つの村とモアリー湖をご紹介します。
一つ目の村はヴァルコラン村。シエールの街よりポストバスで約40分。谷の北部に位置する小さな村です。
標高1300mの村からロープウェイにて森林限界を超え、 2330mの展望台クレ・デュ・ミディへ上がれば、ワイン畑の広がるローヌ谷の美しい眺めを楽しみ、村へゆったりと下りのハイキングを楽しむ事が出来ます。
この村のオススメはロッジ泊。各ロッジにより内装のテーマが違っており、それぞれがすっきりとした居心地の良い環境に仕上がっています。中でも目を引くのが16世紀からの農家小屋を改装して作ったロッジ。500年の歴史を持つ木造小屋の中にはモダンなベッドやバスタブが置かれており、思い出に残るユニークな宿泊体験になる事は間違ありません。部屋数と宿泊客も少ない為、オーナーさんがしっかりとそれぞれのお客さんのケアをしてくれ、オススメのレストランや散策、ハイキングのアドバイス等もしてくれます。
二つ目の村はサン・リュック。
シエールの街よりポストバスで約50分。谷の中心に位置する標高1650m、人口280人ほどの村です。 標高2186mに位置するティニューザ展望台へは 村からケーブルカーが走っています。 天気の良い日には 彼方にマッターホルンや、ダンブランシュなどの名峰を眺めながらのハイキングを楽しみましょう!
かつて裕福な英国人旅行者向けに建てられたホテル・ベラ・トーラは2009年に150周年を迎えた伝統のある4ツ星ホテルです。 お部屋の内装は、時代を感じさせつつも清潔で気品があり、のんびりと静かに秘境の谷を楽しむにはうってつけの宿です。アニヴィエの谷に何日間か滞在する場合、サン・リュックは便利な拠点となります。
三つ目の村はグリメンツ。
アニヴィエの谷、最奥にある村。ディープなスイスアルプスの文化が今日まで機能しています。例えば古くからこの村に住む人々はブルジョワジーという共同体を組み、そのブルジョワジーに属する村人たちは今もなお、村の有力者が多いのです。
グリメンツの村に古くから伝わる氷河ワインも非常に珍しく、1番古い樽はなんと1886年から存在します。ワインの樽は年代によっていくつも並べられており、古い順に新しい樽に移しながら常に一定の量を保ちます。120年前の氷河ワインを一口味わって見たい方は、毎週月曜日の17:00に村役場の前に集合し、英語ガイド付きの村内散策と氷河ワイン試飲のツアーに参加すると良いでしょう。なんと無料です!
昔、アルプスの農家は夏の放牧シーズンが終わり、牛を山から降ろすと、その年に作ったチーズを暖炉の直火焼きラクレットで食べ、収穫を祝いました。ホテルモアリーのレストランでは、最近では珍しく伝統的に暖炉の炎から焼いたラクレットを出してくれます。近頃はオーブンで焼きあげるラクレットが多い中、直火焼きのラクレットはスモーキーな風味が最高です!ただし、夏場は暖炉に火を灯していない日もありますので、「絶対に食べたい!」という方は予めホテルに連絡をして確認すると良いでしょう。オーナーさんは優しいおばちゃんなので、笑顔でお願いすれば暖炉に火をいれてくれるかもしれませんよ♪
最後にご紹介したいのが、モアリー湖です。グリメンツからポストバスで約20分。巨大なダムの上に出ると美しいコバルトの氷河湖が見えます。モアリー湖の奥にはその源となる氷河とベッソン山が望め、観光客もあまり来ない中でゆったりと大自然を独り占めできます。
モアリー湖を一周するハイキングコースもおすすめです。(標高差2240m→2320m→2240m 約4時間)
山口 ヘルテル 信
1981年の日本生まれ。スイス人の父と日本人の母親を持つ。1997年にスイスへ移住。高校卒業後、兵役に就く。その後、旅を続けながら様々な職種を経験。2002年よりの現地旅行会社に務め、スイスをメインにヨーロッパ旅行の企画、手配を行う。またハイキングガイドとしてもスイス中の山々を歩き、2014年には日本へ帰国。仲間4人と共に旅行手配会社を設立。現在もスイスにてハイキングや街のガイドをしながら旅行の企画や手配を行っている。スイス政府観光局認定スイススペシャリストの資格を持つ。