まずはじめに、このお祭りは絶対目で見て、肌で感じ、響き渡る音を聞き、体感するべきです!!本当に神聖で美しいお祭りです。
来年2016年は12月5日、月曜日20時15分から始まります。
ルッチェルンから電車で20分、リギ山の麓のキュスナハト・アム・リギのクラウスヤーゲン(Klausjagen)は何百年も前から続いている街の伝統的なお祭りです。クラウスは「聖ニコラウス」、ヤーゲン「追う」という意味で、聖ニコラウスはサンタクロースと同じ意味になります。
日本でいうサンタクロースは、トナカイに乗って煙突からクリスマスイヴに子供達にプレゼントを配るイメージが一般的ですが、各国によってそれぞれ言い伝えがあり、ここキュスナハト・アム・リギの地元の方の話では、遠い昔、雨が降らず凶作が続き、食べる物が思う様に得られず、村の男達が食べ物を探しに海に出て行きました。その間に海賊が村にやって来て、海に出た男性達を村に入れないように船を停泊し、食べ物、お金の代わりに子供達をさらって行こうとしました。その時、村にいた聖ニコラウスが自分の持ってるもの、教会のもの全てを海賊に渡し村の子供達を救ったという言い伝えと、地元の悪霊を追い払うお祭りが重なり、このクラウスヤーゲンは始まったそうです。
12月6日は聖ニコラウスの命日。その前日の5日にお祭りをしますが、土曜日は絶対にやってはいけない決まりなので、その前日の金曜日に行われました。
このお祭りに参加できるのは男性のみという決まりで、今年は会議で女性の参加を認めるか話し合われましたが、残念ながら今年も認められなかったそうです。でもウワサでは髪を短く切り、男性のように見せて参加する女性がいるとかいないとか…。それほどまでして参加したいほど伝統と誇りのあるお祭りなのです。
当日は約2000人の街の男性参加者と2万人の観光客で身動きがとれない程でした。20時15分になると街の明かりが一斉に消え、お祭りが始まります。レストランで食事をしていても突然真っ暗に!!部屋の中も絶対に明かりを付けてはいけない決まりなのです。しばらく暗闇で目を凝らしていると、ガイゼル(die Geisel)という鞭をならす人達、イッフェレ(Iffele)という美しい装飾を頭に乗せて踊りながら進む一行、ブラスバンド、角笛隊、そして、全身黒で身を隠したお供のシュムッツリ(Schmutzli)を連れた 聖ニコラウス、彼を追うように何百という口にタバコをはさみカウベルをならしながら歩く一行が練り歩きます。
聖ニコラウスとシュムッツリ以外は全員が白いヒルテンヘムド(das Hirten hemd)を着る決まりで、頭に載せる飾り付けは片面はニコラウスの絵柄、もう片面はJHSという文字が必ず入っています。
イッフェレを頭にのせた男性達が暗闇なかで踊りながら動く姿、何百というカウベルの響く音、音楽は背筋がゾッとするぐらい神聖で美しい光景でした。
今年の厄が一気にとれた感じです。
一行は一晩中何回も街の中を練り歩き、朝の8時まで続きます。
もちろんバーやレストランは夜通し開店し、次の日はお祭りに参加した男性達が夕方まで飲み歩きます。お祭りの次の日の街中は白い服を着た男性しか見かけません(笑)。
何よりも、私はいまこの街に住んでいて、1ヶ月程前からはじまる彼らの練習風景を見てきました。このお祭りにかける情熱は信じがたいものがあり、街全体が彼らをサポートしています。
練習風景では想像つかなかったのですが、当日観た時はお祭りを愛し、この街を愛する情熱がひしひしと感じられ、観客の人達を唸らせます。
余談ですが、街の中心部、お祭りのメイン会場にある家は詩人ゲーテが昔5年程住んでいたアパートだそうです。ちょっと早めに到着して、歴史的建造物やピラテュス山が聳え立つルッチェルン湖を観ながらホットワインを飲んでお祭りが始まるまで楽しむのもおすすめです!!
このお祭りに会わせて今からスイスへの予定を組んでみてはいかがでしょうか!?
【データ】
クラウスヤーゲン
ルツェルン駅から:ブルンネン行きの電車で約20分
キュスナハト・アム・リギ駅下車
チューリッヒ駅から:ロートクロイツ駅下車/53番のバスでキュスナハト・アム・リギ駅下車
駅からメイン広場まで徒歩約10分
URL:http://www.klausjagen.ch/brauchtum_video.en.html