元々は、サレルノの君主であったロベルト・サンセヴェリーノのために、1470年に建てられた宮殿でした。その後、政治のトラブルで没収され、イエズス会が買い取り、建築家ジュゼッペ・ヴァレリアーノが宮殿から教会に再建築しました。しかしながら、イエズス会はナポリから一時期追放され、教会はフランシスコ会に変わりましたが、数十年後再びイエズス会に返されました。外観は当初の宮殿のオリジナルを残しましたので、とても教会には見えませんが、内装はさすがにバロックやゴシック様式を取り入れた教会になっています。また、建物の正面のデザインは、一つ一つ石のピラミットの形をしたのものになっています。質素で簡素なイメージのイエズス会(ジェズ・イーティ)ですが、豪華な大理石や、金、彫像、モザイク、フレスコ画がたくさんあります。
サン・ジュゼッペ・モスカーティは、べネヴェント生まれ、ナポリ大学医学部を卒業し、医学研究や貧しいナポリの人達のために往診を無償で行いました。最後には自分の財産も売りながら、貧しい人達に薬を与えたり彼らの生活を支えていました。ジェズ広場にある建物の一角に自宅兼診察室があり、よくジェズ・ヌオーヴォ教会へミサに来ていたそうです。化学生理学教授に任命され、ヨーロッパ中に名声が広がりましたが、結局教授にはならずに、キリスト教信仰を誓い、医者の任務に力を入れました。その後、病気で46歳の若さで死去しましたが、1987年当時のローマ法王、ジョヴァンニ・パオロ・セコンドから列聖されました。ジェス・ヌオヴォ教会内にはお墓もあり、当時の診察室やベットルームがそのまま残っています。
数年後、イタリア国営テレビライ1で、モスカーティの人生が特別ドラマになり、主役のモスカーティ役には、俳優ベッペ・フィオレッロが演じ、高視聴率を上げ、イタリア中が感動したことは言うまでもありませんでした。
どうしてこの教会をご紹介したかったかといいますと、実は、ナポリに住んでいたころ、2006年から2010年の5年間、幸運にもこの教会の専属ソプラノソロ歌手でした。クリスマスのミサはもちろんのこと、復活祭のミサ、結婚式、お葬式など、様々なミサをしました。この教会で歌えることが、名誉であり誇りでとても幸せでした。教会のミサ中に歌うということは、ただ祈るだけよりも倍の効果があると言われています。だからでしょうか、私は、ナポリに住んでいた時には、スリ、ひったくり、事故など、何に一つ起こりませんでした。私のような、カトリック信者でもなんでもないものが教会のミサで歌うことができたということは今でも大変光栄に思っています。
【データ】
ジェズ・ヌオーヴォ教会(Chiesa del Gesù Nuovo)
住所:ジェズ広場1 (Piazza del Gesù, 1Napoli, Italia)
Tel:081-5578151
拝観時間:7:00〜13:00、16:00〜20:00(ミサ終了まで)
平日ミサ: 7.30,9.00,10.30,12.00,18.30
休日ミサ: 8.30,10.00,11.30,13.00,18.30,20.00
www.gesunuovo.it
ケイコ
大学卒業後、中学教員を経てイタリアミラノへ渡伊。フィレンツェ、ローマ、ナポリにも在住。昨年7月よりラスペツィアに移住。ローマ国立アカデミアサンタチェチーリア、イタリア国立音楽院修了。愛の妙薬でイタリアオペラデビュー。イタリアと日本で音楽活動を行う。趣味はF1観戦、ハーブティーを毎日飲む、メルカート(青空市場)で掘り出し物探し。ヨガ、ドッグシッター。兵庫県出身